デル ポトロの完全復活なるか、フェデラーを破って次はナダル [USオープンDAY10]
「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月28日~9月10日/ハードコート)は第10日、男女シングルスのトップハーフの準々決勝が行われた。
前日の結果と合わせてベスト4が出揃った。まずは第1シードのラファエル・ナダル(スペイン)がノーシードの19歳アンドレイ・ルブレフ(ロシア)を6-1 6-2 6-2で一蹴し、全米4年ぶりのベスト4に進出。
ラファエル・ナダル(スペイン)
しかし、第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)は第24シードのファン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に敗れ、全米オープンでのナダル対フェデラーの対決は実現しなかった。スコアは7-5 3-6 7-6(8) 6-4。デル ポトロとフェデラーの全米での対決はデル ポトロが優勝した2009年以来、そしてデルポトロの全米ベスト4入りもあの年以来である。
ロジャ・フェデラー(スイス/左)とファン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン/右)
◇ ◇ ◇
ナダルが勝った。あとはフェデラーが勝ちさえすれば〈その機会〉は訪れるのだと、ファンのエネルギーはすべてそこに注がれていた。今年、華麗な復活を遂げたフェデラーとナダルという両雄の対決である。
これまで37回も対戦しているライバル対決の実現を、なぜニューヨークはそれほどまでに熱望し、興奮したのか。それは、37回も対戦しているにもかかわらず、この全米オープンのセンターコート—-グランドスラムの中でも最大の規模を誇るアーサー・アッシュ・スタジアムでは一度も対戦したことがないからである。長く苦しい手首のケガからの復活に誰もがエールを送っているはずのデル ポトロも、このシチュエーションでは“アウェー”に身を置かざるをえなかった。
カギは、両者セットを一つずつ分けたあとの第3セット、タイブレークだった。1ポイント目でミニブレークしたフェデラーは常にポイントを先行し、6-4でダブル・セットポイントを握る。しかも自分のサービスだ。
しかしここはデルポトロのリターン力がまさった。フェデラーのファーストサービスに対するフォアハンドの強烈なリターンはベースラインの上に乗って、フェデラーのラケットを弾いた。
サービスはデル ポトロに移り、サービス・ウィナーで6-6。このあとデル ポトロがダブルフォールトという手痛いミスをおかしたが、この3本目のセットポイントもフェデラーはバックハンドのミスで失った。
8-7で4本目のセットポイントを握ったものの、そこからデル ポトロがサービスポイントを2本連続でキープし、逆にデル ポトロにセットポイント。サービスはフェデラーだったが、ここでもデル ポトロが長いリーチを生かしたリターン力を発揮し、それに対するフェデラーのボレーがロング。
あとでフェデラーは、「自分がそんなに間違ったことをしたとは思わない。でも自分がやるべきことをやっても、相手も同様にそうすることがある。今日は、僕がサーブで彼がリターンのときに、どうも僕の思うようにはいかなかった」と淡々と振り返った。
第4セットは第5ゲームでデル ポトロがブレーク。第10ゲームのサービング・フォー・ザ・マッチでドラマの気配があった。30-0からフェデラーが2本返して30-30。続いてデル ポトロのセカンドサービスからのラリーで、バックハンドのアプローチからネットについたフェデラーの“守備範囲”にデル ポトロのショットが返ってきた。
フェデラーだって手元がくるうことがある。フォアのボレーは大きくワイドに逸れた。しかしそれはデル ポトロから受け続けていたプレッシャーと無関係ではないだろう。フェデラーは試合を完全にひっくり返せたかもしれない最後のチャンスを逃し、一つ目のマッチポイントを握ったデル ポトロがフォアハンドのウィナーをストレートに文句なく決めた。
デル ポトロは2日前のドミニク・ティーム(オーストリア)に対する大逆転勝利のときと同じように両手を広げて天を仰いだ。祝福ムードは縮小されたが、こういう反応に耐えることはフェデラーとナダルの二強時代以降に出現した強者たちの宿命といってもいい。
オンコート・インタビューで、「ロジャーにとってのホームの中で戦った気分は?」と尋ねられたデル ポトロは、「僕にとってもホームだった」と返した。スタンドに残る同郷のファンをやさしい目で見上げながら。
次の相手はナダルだ。2009年は、ナダル、フェデラーの順で倒して栄冠を戴いた。ミラクルの予感が深まる。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)
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