アメリカ勢の活躍に沸く全米、 ビーナスはクビトバとの新旧芝女王対決制す [USオープンDAY9]
「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月28日~9月10日/ハードコート)は第9日、男女シングルスのボトムハーフの準々決勝が行われた。
4回戦で注目のマリア・シャラポワ(ロシア)を破った第16シードのアナスタシア・セバストワ(ラトビア)を、ノーシードで勝ち上がってきたスローン・スティーブンス(アメリカ)が6-3 3-6 7-6(4)で破った。
第9シードのビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)、第13シードのペトラ・クビトバ(チェコ)というウィンブルドン女王同士の対決は、ビーナスが制して7年ぶりの全米ベスト4入りを果たした。
アメリカ勢として女子の2人に続きたい第17シードのサム・クエリー(アメリカ)だったが、第28シードのケビン・アンダーソン(南アフリカ)に6-7(5) 7-5(9) 3-6 6-7(7)で敗れた。
◇ ◇ ◇
男子スター選手の欠場が相次いだ上、数々の番狂わせが起こり、注目のシャラポワも消え…‥と、残る顔ぶれが地味になった印象は拭えない今年の全米オープンだが、ここ地元ニューヨークは意外にも大いに盛り上がっている。考えてみればもっともな話で、理由はもちろん地元勢の活躍だ。
この日行われた男女合わせて4試合の準々決勝のうち、アメリカ人の絡むものが3試合。そのうちまず、かつてセレナの妹分とも言われて高く評価されながらケガなどで伸び悩んだスティーブンスが、2013年の全豪オープン以来のグランドスラム・ベスト4入りを果たした。
続いて、ウインブルドンV5(2000、2001、2005、2007、2008)の37歳ビーナスが、同じくウインブルドンで2011年と2014年の2度頂点に立った27歳クビトバとの激戦を制覇。センターコートは沸きに沸いた。8強進出者の中で、グランドスラムの優勝経験者はこのふたりだけだった。
しかも、片や大会女子最年長、片や利き手の大ケガからのカムバックという不屈の精神を持つふたりである。身長185cmのビーナスと182cmのクビトバは、いずれも長いリーチを生かして、角度のあるダイナミックなショットを次々と繰り出し、芝のチャンピオン対決にふさわしい洗練されたゲームを繰り広げた。
試合は、過去5回の対戦のすべてと同じように最終セットに突入。そして、そのうち2対戦がそうだったように、タイブレーク勝負になった。対戦成績はクビトバの4勝1敗だが、今回勝負を分けたわずかの差は、ビーナスの勝利への執念か。
クビトバが暴漢に襲われて利き腕の左手に大ケガを負ったのは昨年12月。再起不能とも言われながら、半年足らずで復帰し、6月に芝のバーミンガム大会を制している。しかし、「まだ自分にプレッシャーをかけるには早いと思っている。一歩ずつ、進みたい。そんな中でここまで勝ち残れたことは驚きだし、それ以上にこうしてみんなの前でプレーすることができて幸せ」と話した。
一方のビーナスは、今年はオーストラリアン・オープンとウインブルドンで決勝に進みながらタイトルに届いていない。今度こそという思いは強いだろう。
第1セットは6-3でビーナス、第2セットは同じスコアでクビトバ。最終セットも第3ゲームでブレークに成功したクビトバは、第4ゲームは0-40のピンチをしのいでキープしたものの、次のサービスゲームでは30-0から4ポイント連取を許し、最後はダブルフォールトでブレークバックを許した。
そのまま両者キープでのタイブレークだったが、ビーナスが一方的にポイントを重ねた。 「特にタイブレークは、賢くプレーすると同時にアグレッシブでないといけない。待つのも願うのも禁物。それが実践できた」
クビトバはダブルフォールトも含めて3つのミニブレークを許し、力尽きた。試合を通してダブルフォールトは9本。考えられる原因として、ビーナスからのリターンのプレッシャーをほのめかした。
「楽なときが少しもなかった。特別な試合だった」とビーナス。準決勝の相手は24歳のスティーブンス。アメリカの世代対決、これもまた特別な一戦になりそうだ。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)
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