「昼食について考えていた」マッチポイントを凌いだズベレフが初の16強 [フレンチ・オープン]

「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月27日~6月10日/クレーコート)の男子シングルス3回戦で、第2シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が第26シードのダミアー・ジュムホール(ボスニア・ヘルツェゴビナ)を6-2 3-6 4-6 7-6(3) 7-5で倒し、ベスト16進出を決めた。

 ズベレフがいかに才能恵まれていようと、大きな成功を約束されていようと、金曜日のメイン・スタジアムで彼は、3回戦負けと、またものグランドスラム大会での失望まであと一歩、という危機に瀕していた。

 ここでもし敗けていたら、第2シードのズベレフのグランドスラム大会におけるトップ50の選手に対する戦績は、8戦全敗となるはずだった。またそれは、世界3位の彼のグランドスラム大会における最良の戦績を4回戦にとどめ、ロラン・ギャロスではその段階にすら至れていない状態が据え置きとなるはずだった。

 第4セットで、彼の対戦相手だったジュムホールは、自分のサービスをキープすれば勝利、というゲームを迎えた。第5セットではより差し迫った状況となり、ズベレフはマッチポイントに直面した。

 その双方の状況で、彼はジュムホールよりも落ち着きを保ち、揺るがず、より屈強であることを証明した。ジュムホールは世界29位で、第26シードだった。そしてズベレフは最終的に、3時間54分の戦いを勝利で終わらせたのだった。

 21歳のズベレフはこれで、2試合連続で5セットマッチに勝ったことになる。彼はそのそれぞれで、セットカウント1-2という劣勢に立たされていた。

 この事実は、恐らく他人以上にズベレフ本人にとって重要なことだろう。彼がこのような状況に対処する力を身に着け、セットと時間が嵩んだときに必要とされることをやってのけられること、そしておそらく、ついに、グランドスラム大会で最後の方まで勝ち上がる準備ができたということを、示しているのかもしれない。

 彼は、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、アンディ・マレー(イギリス)によって構成される『ビッグ4』以外で3つのマスターズ・タイトルを獲っている唯一の現役選手だ。しかし、グランドスラム大会での成功は、彼の手からすべり落ち続けてきた。

 この金曜日に、ズベレフの頭の中で、どのような内的闘いが起きていたのだろうか?

「何もないよ」とズベレフは言った。「僕は主に、昼食に何を食べようかと考えていたんだ」。

 なるほど。

 彼は、連続して2度5セットマッチに勝つことができたことから、ある程度の自信を引き出したと認めた。

「好きなだけ長く踏みこたえるに十分な、いい体調を擁していると分かっているしね」と彼は言った。

 反対に第4シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)は、2試合連続での5セットの勝利をやってのけることができなかった。グランドスラム大会で2度ベスト4に至ったことのあるディミトロフは、世界ランク35位で第30シードのフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)に6-7(4) 2-6 4-6で敗れ、フレンチ・オープンにおけるトップ50選手との戦績を0勝7敗としてしまった。

「早い段階で、精神的堅固さを失ってしまった」とディミトロフは言った。「彼は、まったく驚くべき試合をやってのけた。何と言ったらいいんだい?」。

 ベルダスコにとっての、ロラン・ギャロスにおける、キャリアで7度目の4回戦――彼は一度もそれに勝ったことがない――は、2016年覇者のジョコビッチに対するものとなる。第20シードのジョコビッチは、第2セットのタイブレークでラケットを破壊したあとに生き返ったように見え、最終的に第13シードのロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)を6-4 6-7(6) 7-6(4) 6-2で倒した。

「ときに、感情は人から最悪のものを引き出す」とジョコビッチは言った。「またあるいは、最高のものを引き出すこともある。何と言ってくれてもいいよ」。

 ジュムホールの場合、彼はグランドスラム大会初のベスト16入りをもう少しで成し遂げようというところで、神経質になってしまった。

 彼は第4セットで、6-5リードから自分のサービスゲームを迎えた。ところが続いて、すべてがバラバラに崩れてしまったのだ。

 フォアハンドのネットミス、フォアハンドのサイドアウト、ドロップショットをネットに引っかけてから、バックハンドでまたもネットミス。こんな具合に、彼はラブゲームでブレークされてしまった。そしてその少しあと、不安定なバックハンドが、タイブレークを終わらせた。

「僕は、第4セットであの試合に勝つ準備が、精神的にできていなかったんだ。あのサービスゲームで、僕はただ、少し性急になってしまっていた」

 まずこう言ってからジュムホールは、ズベレフを称えた。

「あのとき、彼は非常に賢くプレーしていた。彼が、僕にあのようなミスを犯させたんだ」

 第5セットで5-4とリードしているとき、ズベレフのサービスゲームで30-40となり、ジュムホールは勝利まであと1ポイントというところに迫った。しかし198cmと、ジュムホールより20cm背が高いズベレフは、そこで時速190kmのサービスウィナーを打ち込んだ。

 ジュムホールはいくつかの簡単なバックハンドのネットミスを犯し、またもズベレフを助けてしまう。彼はのちに、それらのミスの最初のひとつについて、「あのポイントは、恐らくずっと記憶に残るだろう」と言った。おそらくズベレフにとっても、それは同じだろう。

 たぶんズベレフは、ジュムホールが今年、悪い成績を手に全仏に至ったことを含め、詳細についてあまり騒ぎ立てないだろう。

 ズベレフにとって、重要なのは結果だった。彼が12歳で、父にコーチされていたときには、そうではなかったのだが…。

 彼の父は息子たちを、ジュニアとしてではなく、プロとしての成功に導くため、皆にサーシャと呼ばれるズベレフ、そして土曜日に3回戦をプレーする兄のミーシャ・ズベレフ(ドイツ)に、その年齢では結果よりも過程が重要なのだ、と教えてきた。

 そして今?

「僕は、勝とうと努めている。肝心なのはそれだけだ。どれだけ長くかかろうと構わない。コートの上でどれだけの時間を費やそうと構わない」とズベレフは言った。

「第5セット9-7だろうと、6-1 6-1 6-2だろうと、それは問題じゃない」

 彼はこれまでになく、この前者のケースのための素養を身につけているようだ。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)
PARIS, FRANCE - JUNE 01: Alexander Zverev of Germany celebrates during his mens singles third round match against Damir Dzumhur of Bosnia and Herzegovinia during day six of the 2018 French Open at Roland Garros on June 1, 2018 in Paris, France. (Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

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