「今が人生最高の瞬間」ゴファンを倒してベスト8進出のチェッキナート [フレンチ・オープン]

「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月27日~6月10日/クレーコート)の男子シングルス4回戦で、第8シードのダビド・ゴファン(ベルギー)を7-5 4-6 6-0 6-3で破ったマルコ・チェッキナート(イタリア)が人々の関心を集めている。

 チェッキナートが準々決勝で対戦するのは、12度目となる全仏ベスト8となったノバク・ジョコビッチ(セルビア)だ。この相手に比べると、彼はまだ世界的にはあまり知られていないが、ジョコビッチは以前からよく知っている男だ。

 ノーシードから勝ち上がり、大きな話題になっているチェッキナートはシチリア島出身の25歳。八百長疑惑で出場停止処分を受けたこともあるが、その後無実であるとの主張が認められ、処分が解除されている。昨年までの通算ツアー成績は4勝23敗。今大会を迎える前のグランドスラムでの戦績は、0勝4敗だった。

 今年4月の時点で、ここまで勝ち上がれると思っていたかと問われると「ノー」と一言。そこに満面の笑みがこぼれた。「僕にとって今が人生最高の瞬間なんだ」と続けた。

 火曜日に対戦するチェッキナートとジョコビッチは、よくモンテカルロで顔を合わせている。そこにジョコビッチの住まいがあり、チェッキナートはモンテカルロのアカデミーで練習しているからだ。

「何年も前から彼のことを知っているよ。よく練習もいっしょにしたし、プレースタイルはよくわかっている。彼は間違いなく、今キャリアの中で最高のプレーを見せている」とジョコビッチは、第30シードのフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)を6-3 6-4 6-2で下したあと、チェッキナートについて問われたときに語った。

 2月に手術を受けるなど、長期に渡り右肘の負傷に悩まされていたジョコビッチにとって9度目のパリでの準々決勝は大きな喜び、成果でもある。この2人以外には、第2シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が3試合連続でフルセットを戦い抜き、自身初のグランドスラム準々決勝進出を果たしている。その相手となるのは第7シードのドミニク・ティーム(オーストリア)だ。

 しかし、チェッキナートがここまで歩んできた道のりは、トップを争う彼らとはまったく異なるものだった。

 2016年7月、チェッキナートは八百長疑惑でイタリア・テニス連盟により出場停止処分を科された3選手のうちのひとりだ。2015年にモロッコで開催されたチャレンジャー大会で、わざと負けたために18ヵ月の出場停止と4万ユーロ(約512万円)の罰金を科された。その後、処分を不服としたチェッキナートが抗議した結果、イタリア・オリンピック委員会は2016年12月にすべての処分の解除を発表した。

 当時のことについて、「実際は何が起きたのか話してもらえないか?」と問われたチェッキナートは「今は、この瞬間を楽しみたいと思っている。あのときは本当に苦しかった。だからこそ、今に集中したいんだ。大会後になれば、詳しく話そうか。今は自分が生きている最高のときを思う存分楽しみたい。それで十分なんだ」とチェッキナートはイタリア語で語った。

 チェッキナートは今大会1回戦でパリをあとにすると思われた。ランキング94位のマリウス・コピル(ルーマニア)に対して最初の2セットを落とし、あと2ポイントで敗戦という絶体絶命に陥っていたからだ。だが、そこから持ち直して2セットを奪い返し、最終セットを10-8でものにする大逆転勝利を挙げた。

 そこが、今大会の壮大な旅の始まりだった。

 2回戦は190位のマルコ・トゥルンヘリッティ(アルゼンチン)にストレート勝利。一度バルセロナに帰ったあと、ラッキールーザーで本戦に出られると連絡を受け、10時間のドライブを経てパリに戻ってきたことで知られる男だ。

 3回戦では第10シードのパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)、4回戦ではゴファンを次々に撃破し、大番狂わせを演じた。

「彼に走らされているとき、完全にラリーを支配されていた。だから自分から攻めるのが難しかった」と試合中にトレーナーを呼び、右肘の治療を受けていたゴファンは試合を振り返った。

 チェッキナートは、スザンヌ・ランラン・コートでのすべての瞬間を楽しんでいたようだ。エンドチェンジの際も、自分に語りかけていた。「独り言を言うのが好きなんだ」というチェッキナートは、見事な片手打ちバックハンドのウィナーで勝利を決めた瞬間、コートに倒れ込んで喜びを噛みしめた。

 なんて美しい片手打ちバックハンドだ! 

 そのバックハンドについて「グスタボ・クエルテン(ブラジル)やスタン・ワウリンカ(スイス)のような過去の王者たちを手本にしたのか」というリポーターの問いかけに対し、「正直に言うと、自分はチェッキナートのようになりたい」と言いきった。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はマルコ・チェッキナート(イタリア)
Marco Cecchinato of Italy during Day 8 of the French Open 2018 on June 3, 2018 in Paris, France. (Photo by Dave Winter/Icon Sport via Getty Images)

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