「勝利の方程式などない」2度目のメジャータイトルまであと1勝のスティーブンス [フレンチ・オープン]

 フランス・パリで開催されている「フレンチ・オープン」(5月27日~6月10日/クレーコート)の女子シングルス決勝に勝ち進んだスローン・スティーブンス(アメリカ)に、昨年のUSオープンに続く2度目のグランドスラム優勝のチャンスが巡ってきた。

 1年前にフレンチ・オープン決勝が行われたとき、スティーブンスはロラン・ギャロスのどこにもいなかった。負傷した足の手術を受けて11ヵ月の離脱からのカムバックを目指し、シカゴでコーチのカマウ・マレーとトレーニングに励んでいるところだった。

「インドアのハードコートで芝のシーズンに向けての準備をしなければならない時期だったが、ほとんど歩けなかった。しかも、5歳くらいの子供が遊んでいる隣のコートでプレー。そんな状態から1年でここまでこられたのは、とてつもないことだ。たいへんな時期だった」とマレーは回想した。

 今はよい時期を迎えている。スティーブンスは友人でもあるマディソン・キーズ(アメリカ)との、2002年以来となる準決勝でのアメリカ人対決を6-4 6-4で制し、2つ目のグランドスラム・タイトルまであと1勝に迫った。2人は昨年9月のUSオープン決勝でも顔を会わせており、そのときもスティーブンスが勝っていた。

「同国の、しかも仲のよい選手と対戦するのはいつでも難しいもの。だからこそ、いいテニスをして、勝ち抜けたのは本当にうれしい」とスティーブンスは笑顔を見せた。

 第10シードのスティーブンスが土曜日の決勝で対戦するのは、第1シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)となる。力強いテニスで、2016年優勝のガルビネ・ムグルッサ(スペイン)を6-1 6-4で倒した相手だ。

 ハレプはこの勝利によって世界ナンバーワンの座を確保し、グランドスラムを獲得する4度目のチャンスを手にした。

 ロラン・ギャロスではすでに2度決勝で敗れている。2014年はマリア・シャラポワ(ロシア)、2017年はエレナ・オスタペンコ(ラトビア)の前に屈した。今年1月のオーストラリアン・オープン決勝ではカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)に敗れて準優勝だった。

「3度負けたけど、誰かが死んだわけじゃないから、大丈夫!」とハレプは冗談交じりに話した。

 ムグルッサは今大会一度もセットを落とさずに準決勝に進出。準々決勝ではシャラポワを6-2 6-1の一方的な試合で下した。

 だが、ハレプ戦では相手の粘り強い返球に対して自分のペースをつかむまでに時間を要した。“シモナ!”と大声で叫ぶファンの後押しを受けながら、ハレプはウィナーたった1本という内容ながら、3-0とリード。最初に獲得した14ポイントのうち13本はムグルッサのエラーで、9つがアンフォースト、4つがフォーストエラーだった。

 0-5からムグルッサはようやく1ゲームを奪取。第2セットは4-4からのゲームが勝負を分けた。ムグルッサは3つのブレークチャンスがあったものの、ひとつも生かせずに13分に及んだロングゲームを相手にキープされてしまう。キープしたハレプは5-4からラブゲームでブレークし、試合を終わらせた。

 ハレプが大一番でことごとく敗れているのに対し、スティーブンスはツアーの決勝で6勝0敗と完璧な成績を残している。

「勝利の方程式なんてない。そんなものは信じないし、記録を狙っているわけでもない。たまたまそうなっただけ。私は大会に入ると、喜ばしいことにすごく安定したプレーができる。それを続けようとしているだけ」とスティーブンスは連勝記録について語った。

 パリのレッドクレーでは、4回戦を突破したことがなかった。3回戦のカミラ・ジョルジ(イタリア)戦ではあと2ポイントで敗戦まで追い詰められたが、そこから持ち直して逆転した。

「あのような試合を乗り越えると、少し自信を積み上げられるものだ」とコーチのマレーは語る。

 ハレプのように、スティーブンスもとてつもない才能に恵まれたディフェンシブな選手。キーズ戦でも粘り強くラリーを続けて相手のミスを引き出した。この試合でキーズは41個のアンフォーストエラーを記録。スティーブンスより30個も多い数字だった。

「彼女からウィナーを奪うのは本当に難しい。今日は特に、こちらが攻めても彼女がうまくラリーをニュートラルに戻してきた。そして深く、重いボールを打ち続けるから、苦しかった」とスティーブンスに対して0勝3敗となったキーズは語った。

「彼女は1cm単位の正確なコントロールでボールを打ち続け、私はそれに耐えられずにミスを繰り返した。今日のような日は、彼女には勝てないわ」とキーズは脱帽した。

 しかし、スティーブンスは昨年のUSオープン優勝のあと、グランドスラムで勝ち進むことはもう二度とないのではないかと思われた。ニューヨークのあと、2017年残りのツアーは0勝6敗。2018年もオーストラリアン・オープンの1回戦負けを含む2連敗スタートだった。

「USオープンのあと、時間があっという間に過ぎていった」とスティーブンスは当時を回顧する。父親のジョンはアメフトの元プロ選手で、1988年のニューイングランド・ペイトリオッツ在籍時にはオフェンシブ・ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。

 彼女は少し道を外れた時期もあったが、何とか正しい道のりに戻ってきた。3月のマイアミ・オープンでは4人のグランドスラム優勝者を連続で倒して優勝。今度はハレプのグランドスラム初優勝を阻み、自身2度目のグランドスラム獲得のために決勝のコートに立つ。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はスローン・スティーブンス(アメリカ)
PARIS, FRANCE - JUNE 7: Sloane Stephens of USA celebrates winning her semi-final during Day 12 of the 2018 French Open at Roland Garros stadium on June 7, 2018 in Paris, France. (Photo by Jean Catuffe/Getty Images)

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