イギリス・ロンドンで開催されている「ウインブルドン」(7月2~15日/グラスコート)の男子シングルス準決勝。

 あるひとつのミスのあとに、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)がラケットで自分の靴を激しく叩き、自分と、それからコーチに向かって叫んだ様子を見れば、彼がどれほど、そのキャリアの非常に険しかった一時期は過ぎ去ったのだと証明したがっているかは、明らかだった。

 前夜から持ち越され、土曜日に終わったその試合で、ジョコビッチはライバルのラファエル・ナダル(スペイン)に6-4 3-6 7-6(9) 3-6 10-8で勝って5度目のウインブルドン決勝に至ることにより、テニスの頂点に戻ってきたという強いシグナルを発した。

「本当に、どちらにも転び得た」とジョコビッチは言った。彼はオールイングランド・クラブで、4度目のウインブルドン優勝、総じて13番目のグランドスラム・タイトルを目指す。

「実のところ、最後のショットまで、自分が勝つのかわからなかった」

 彼は日曜日の決勝で、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)と対戦することになる。アンダーソンは、金曜日の夜に第5セット26-24というスコアで試合を終え、6時間半を要したもうひとつの準決勝で、ジョン・イズナー(アメリカ)を倒した。この試合が長引いたせいで、ジョコビッチ対ナダルの試合開始時間が大幅に遅れることになったのだ。

 2試合目の準決勝は、第3セットが終わったときに23時を過ぎ、近辺の家々の消灯時刻とみなされている時間となったため、翌日に順延となった。雨はまったく降っていなかったにも関わらず、試合はセンターコートの屋根を閉じた状態で始まり、そのままの状態で終わった。

 これにより土曜日のスケジュールは、やや異例のものとなった。通常は、2週間大会の最後の土曜日の唯一のショーケースである女子決勝のスタートを、ナダル対ジョコビッチが終わるまで待つことになったのだ。

 右肘の故障に煩わされていたジョコビッチは、もう2年以上もグランドスラム大会で優勝していない。その故障の痛みがあまりに強かったために、2017年のジョコビッチはウインブルドン準々決勝で途中棄権し、シーズンの残り期間、大会に出場しなかった。彼は今年2月に手術を受けたが、成績は変わらず不安定だった。

 しかしそれも、この日までは、ということだ。この日、彼のディフェンスとリターンはこれまでになくよく、ツアーレベルでのナダルとの52回目の対戦で違いを生み出した。52対戦は、ふたりの選手の間の対戦数として、史上最多のものだ。

「僕の意見では、彼は(この勝利に)値した」とナダルは言った。「そして僕も、勝利に値したと思う」。

 リードを失い、第5セットを強いられてもひるまず、ジョコビッチは、その最終セットで4-4、そして7-7からのゲームでブレークポイントをセーブした末、戦いの終わりにナダルのサービスゲームをラブゲームでブレークした。

「言葉で言い表すのは難しい」とジョコビッチは言った。彼は、ウインブルドンでのここ8回の5セットマッチで勝利をおさめていた。

「僕は今、過去15ヵ月のフラッシュバック、そこで起きたこと、ここに至るために潜り抜けてきたすべてのことを、頭の中で辿り直している」

 センターコートを離れてから約14時間後にそこに戻ったとき、ふたりは、ゆっくりと出力を上げていくようなことはしなかった。

 屋根が閉じていれば、丸天井に反響して、ラケットでボールを叩く音、選手のうなり声、観客の歓声や拍手など、すべての音は増幅する。それは、15分を要することになった18ポイント、6回のデュースのゲームから始まった、出だしから激烈な、ふたりの偉大な選手の間の音量の高い、一か八かの“高品質のテニス”だった。そこには23本のラリーと、少なくとも11ショットの交わし合いがあった。

 17のグランドスラム・タイトルのうち、2つをウインブルドンで獲っているナダルは、2つのブレークポイントをしのいで最終的にサービスをキープすると、拳を突き上げ、1ゲームではなしに、あたかも試合に勝ったかのように叫んだ。

 ナダルが土曜日の第2ゲームでブレークを果たしとき、失望したジョコビッチは、スペアのボールをつかむと、それをベースラインの後ろの壁にラケットで打ちつけた。幸い、彼がいたのは、ケイトと、結婚したばかりのメーガンという、ふたりの公爵夫人が前列に座っていたロイヤル・ボックスからもっとも遠いコートエンドだった。

 自分自身やコーチに向けて叫ぶ傾向があったジョコビッチが、そのような感情の激発を見せたことは、ほかにも何度かあった。彼はそのセットで3-5とふたたびブレークされたとき、左足を上げ、シューズの底のあたりを荒々しくラケットで何度も――1、2、3、4回――打ちつけるというリアクションを見せた。その少しあと、彼は0-40としたが、ナダルは5ポイントを連取してサービスをキープし、第4セットを奪った。

 しかし、トロフィーに値するかのように見えた、この52回目の対戦での見事な競り合いにおいて、終盤にかけて、よりよいプレーをする傾向を見せたのはジョコビッチのほうだったのだ。

 もしかすると本当に、トロフィーに値するかもしれない。

 アンダーソンは、このふたりのどちらと比べても、ずっと成し遂げたことが少ないだけでなくーー彼はまだグランドスラム大会で優勝したことがないーー彼はいくつかの非常に骨の折れる5セットマッチを潜り抜けてきているのだ。そしてその中には、8度ウインブルドンを制した第1シードのロジャー・フェデラー(スイス)に対する準々決勝での第5セット13-11の勝利も含まれている。

 ジョコビッチが土曜日に2時間半近くプレーしなければならず、反対にアンダーソンは休んでリラックスし、回復に努めることができたといえ、決勝ではジョコビッチがダントツで勝利の候補だ。

「ここ数試合、彼(アンダーソン)にとってはローラーコースターのようだっただろう。でも彼は1日休みをとることができ、それには大きな意味がある」とジョコビッチは言った。

「僕も一日休みがあったらよかったのに、と思うよ」(C)AP(テニスマガジン)

※写真は準決勝を戦い終えたあとのノバク・ジョコビッチ(セルビア/左)とラファエル・ナダル(スペイン/右)(撮影◎小山真司)

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