西岡良仁×船水颯人(ソフトテニス)次世代エース対談 vol.1

垣根を超えたスペシャル対談が、ついに実現! 硬式テニスからは西岡良仁、ソフトテニスからは船水颯人。日本のテニス界を牽引する同世代のふたりがテニスに関する熱いトークを繰り広げてくれた。今回は7月21日発売の9月号に掲載された「硬軟織り交ぜたテニス論」を含む、大盛り上がりのトーク全文を3回にわけて公開。まずはvol.1を紹介しよう。

身長が同じ170cmだから思うこと、感じること

――まず西岡選手にはソフトテニスの印象を教えていただけますか。

西岡 実際にやったことは1回ぐらいですが、出身の三重県は軟式が盛んな土地柄で、どちらかというと友人は軟式をしていました。子供たちはまず軟式を始めて、その後、高校で硬式に行く人がいるという感じですね。父も軟式から始めて、高校か大学から硬式に転向してプロを目指した人です。身近に軟式をしている人がたくさんいます。

――船水選手は硬式を参考にされている点もあると聞きますが、それはどういうところですか。

船水 もちろん、ネットの高さ、ボールの硬さも違います。特に、硬式のネットは中央が下がっているので、そこを通すことで角度がつけられる。軟式ではできないですが、できないなりにそこに寄せていこうと考えていますし、そういうチャレンジはしてきました。あとは、身体の使い方も参考にしています。

西岡 4年前にアジア競技大会に出場した時、会場が同じだったので、ソフトテニスの日本代表の試合を見に行きました。その時の印象はボールの回転数が多くて、ボールを曲げてゆさぶる。1ポイントがすごく長かった。なかなか決まらない分、テクニックをすごく使う。タフな競技だと思いました。

船水 シングルスだと長くて1時間ぐらいですね。

西岡 確か4ゲーム先取?

船水 そうです。でも、1日に多くて6試合とかすることもあるので。

西岡 トータルしたら軟式の方が長い。

船水 早ければ10分の時もありますが。

――お互いに身長が170cmと同じで、背が低いからこうしているということもありますか。

船水 楽天ジャパン・オープンは毎年見に行っていて、あとは映像で見た印象からですが、外国人は大きいですよね。

西岡 そうですね。180cm後半で普通です。

船水 失礼な言い方かもしれませんが、よく170cmで普通に戦えるなと。かなり振り回されますよね。そこは気持ちが分かるというか。

西岡 170cmはもう一人アルゼンチンのディエゴ・シュワルツマンだけで、身長差はつらいと言えばつらい。ボールが跳ねるので、今年のフレンチ・オープンのフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)戦はずっとジャンプしていました(笑)。肉体的疲労はこちらの方に来ますね。その分、スピードとテクニックで補っていこうとしていますが簡単にはいかない。ソフトテニスの場合はどうなのですか。自分のイメージでは硬式ほどボールが跳ねないのと、スライスを多く使う。そこまで身長が高すぎるとヒザを曲げるのがつらいのでは。

船水 サーフェスにもよりますね。ハードコートではボールがめちゃくちゃ止まります。だからラリーもほとんど決まらない。逆にクレーだとすべり、ボールが速いので大きな選手が有利に。韓国の選手は皆大きい。キム・ドンフンという韓国の選手が世界で一番強いのですが、彼だけは自分よりも少し大きいくらいなんです。今、その選手からテクニックなどを見て学んでいます。硬式は横の動きしかないというイメージがありますが、自分たちはボールが跳ねない上に前後の動きが多いので、運動量はこちらの方が多いのかなとも思っています。

西岡 そこまで前後に動かすことはないですが、左右はあります。選手によって、動く人、そうでない人も。走らなくても勝てる人も出てきます。1本エースを打てばいいという一発勝負の選手もいます。そうなれば、タイミングなども変わってきますね。ただ、今の時代はまず動けないとだめですね。フットワークを最優先して、そこからどうやってつないでいくか。軟式の試合をフルで見てみたいですね。面白そう。少し前、カットサービスがなくなるという話がありましたよね。あれはどうなったのですか?

船水 変わらなかったです。ソフトテニスの後進国は、カットサービスをされるとリターンができない。それだけで試合が終わることがあったので、国際舞台で問題になりました。切れるというか、ほとんど弾まない。

西岡 リターンはどう対処するのですか。それは上に打つしかないですよね。

船水 それを打ち返す。逆に言えばリターンができれば勝てるんです。

西岡 なるほど。

船水 リターンが浮いてしまうと、そこを叩かれますが、打ち返すことができればこちらのポイントになる。そういう流れですね。

西岡 基本的にカットサービスは全員打てるのですか。

船水 打てますが、コートのサーフェスよって違います。ハードコートだと使いますが、外のコートだとほとんど使いませんね。ボールが滑るのと、風の影響をかなり受けるので。外でロブを打たれるとスマッシュも難しくなるほど。サービスの精度が高くないと不利になります。

いろんな影響を受けるソフトテニスの特質

西岡 台湾の選手とダブルスを組むことが多く、彼らのほとんどが軟式出身です。だから、ボレーも軟式の持ち方(ウエスタン)で、彼らは“身体の近くだと絶対に止められるが、上に打たれたら取れない”と言ってきます。ダブルスでは待っていればいいですが、シングルスでこの(ウエスタン)グリップはどうなのですか。後ろから行くので、下のボールは難しくないですか。

船水 前衛のネットプレーヤーなら前に行く人も多いですが、シングルスで前に行っても決まらない。落とせないので、決まらないことも多い。

西岡 やってみたくなりますね。1回しかやったことがないので、聞くだけではイメージがわかない部分もある。癖でスピンかけたら、フェンスを越えたのを覚えています。硬式をしたことはありますか。

船水 授業とか遊びではあります。フォアは軟式だと“ドフラット”なのでスピードが出ます。

西岡 フォアすごそうですね。

船水 フォアは行けるんじゃないかと。ネットの真ん中が低いので、言い方は悪いですが、どこでも打てそうな感じがします。硬式だとスピンをかけすぎたらというのがないので、狙ったところに打てる。狂いが少ないと思います。うらやましい。ソフトテニスだと打つ自分も分からない時があります。また、ハードコートで硬式の後だと、フェルトが残っています。ソフトテニスのボールは、そういうことにも影響されるほどですから。

西岡 すいません、掃除しておきます。

船水 ソフトテニスはサーフェス、風などいろんなことに影響されるので、打った後にえっ!?とびっくりすることも。そういうことから戦術を立てることもあるほどです。

西岡 硬式はバウンドが早いので、ちょっと風でずれるだけで目が外れます。そうすると入らない。風上、風下で伸びが変わるし、風上からビックサーバーの選手にサービスを打たれたら、それは取れない。あきらめるしかないです。風下から自分がサービスだと相手は思いっきり来る。ブレークされやすい。風上の方がいいのですが、ボールが飛んでいくので、アグレッシブにプレーしすぎるとミスも増える。風下はボールを打てばいいので、風下の方がラリー戦になると強い時もあります。その時に風を上手く使えた方が勝つ感じでしょうか。自分は力を抜いて、ボールが風に影響されるような打ち方をすることもあります。ボールを軽くして、曲げることで、相手も打ちにくい。パワーのない自分のようなタイプは、どれだけ相手に嫌がられるかも重要です。

(※vol.2に続く)

西岡良仁=にしおか・よしひと(左)◎1995年9月27日生まれ、三重県出身。左利き。小学6年生で全国選抜ジュニアU12、全国小学生大会、全日本ジュニアU12を制し、小学生3冠を達成。中学3年の夏から(公財)盛田正明テニスファンドの支援を受け、IMGアカデミーへ留学。2012年のUSオープンジュニアで4強入りし、プロ転向前の2013年には全日本テニス選手権でシングルス準優勝。2014年1月にプロ転向し、同年のUSオープンでグランドスラム本戦デビュー。直後のアジア大会では40年ぶりに金メダルを獲得

船水颯人=ふねみず・はやと◎1997年1月24日生まれ、青森県出身。右利き。東北高に進学。2012年にインターハイ団体を制すると、14年には全日本高校選抜を優勝。現在在学中の早稲田大ではインカレ団体3連覇中(15~17年)。全日本は15、17、18年にシングルスで日本一に輝く。さらに天皇杯では16年に男子ダブルスで初優勝を果たした。同年アジア選手権も国別対抗戦・男子ダブルス・ミックスダブルスの3種目で金メダルを手にするなど、21歳にして日本の男子ソフトテニス界を牽引する

構成◎ソフトテニスマガジン編集部、テニスマガジン編集部
写真◎馬場高志

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