「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月27日~9月9日/ハードコート)の大会2日目(DAY2)の火曜日、男子シングルス1回戦。

 その頬は赤く、髪は汗に濡れてもつれていた。湿度の高い、その日の午後、エンドチェンジのため重い足取りで歩くノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、へとへとになっているように見えた。その日は、気分が悪くなり吐き気をもよおしたときのために、バケツを用意しておいたほうがいいのでは、と誰かが示唆したほど、厳しい気候が大会を襲っていた。

 ジョコビッチは座ってシャツを脱ぎ、プラスチックのボトルから水をむさぼるように飲んだ。彼は冷やしたタオルを首に巻き、もう1本を膝にかけ、3本目を裸の背中にかけた。

 彼は2年ぶりのフラッシングメドウで、まだ1時間半もプレーしていなかった。そして彼が最終的にマートン・フクソービッチ(ハンガリー)を6-3 3-6 6-4 6-0で倒すまでの過程は、ちょっとした苦難の道だった。

「サバイバル・モードだ」とジョコビッチはそれを呼んだ。

 気温が33度に、湿気が50%に至り、このコンビネーションが体感温度を40度にまで上らせたため、このUSオープンの2日目(DAY2)には、プレーしたすべての選手にとって、あらゆることが苦闘となった。あまりにそうだったので6人が途中棄権し、そのうち5人はケイレンや熱射病を訴えていた。

 日中の試合が開始して2時間もした頃、全米テニス協会(USTA)は、この大会でかつて一度も前例のないことを実施した。男子プレーヤーに、第4セット突入前に10分の休憩をとる機会を与えたのだ。

 これらの出来事はいくつかの物議を醸した。

 男女とも同じルールを持つべきではないのか? 

 USオープンは選手だけでなく観客のためにも、日中のもっとも暑い時間帯に試合をやるのを避けるべきではないのか?

 男子もグランドスラム大会でベストオブ5セットマッチの代わりに、ベストオブ3セット・マッチをプレーすべきではないのか?

 こういった状況では、今回グランドスラム大会デビューを遂げた25秒のサーブ・クロック(1ポイントが終わってから次のサーブを打つまでの時間を計る時計)を止め、選手がポイント間に回復するための時間を、より多く与えるべきではないのか?

「結局のところ、ATPやスーパーバイザーたちは、エアコンのきいた涼しいオフィスにいる。僕らは外にいるんだ。彼らは問題ないと言うが、プレーしているのは彼らじゃない」と第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)言った。彼は、気温が落ちてずっと過ごしやすくなった夕方の試合で、ストレートの勝利をおさめた。

「間違いなく、ルールはより厳密であるべきだ。プレーすべきではない、ある温度、あるコンディションというのを定めるべきなんだ」

 火曜日の最悪のときには、コンディションはどんなものだったのだろうか?

「ものすごく暑かったわ」とジョハナ・コンタ(イギリス)は言った。彼女は第6シードのカロリーヌ・ガルシア(フランス)に2-6 2-6で敗れた。

「過酷だった」と2014年USオープン優勝者のマリン・チリッチ(クロアチア)は言った。彼は対戦相手のマリウス・コピル(ルーマニア)が第3セットの途中で棄権したおかげで、早めに勝ち上がりを決めていた。

「容易じゃなかったわ」とグランドスラム大会優勝歴3回のアンジェリック・ケルバー(ドイツ)は言った。彼女はマルガリータ・ガスパリアン(ロシア)を7-6(5) 6-3で倒した。

「本当にひどい。外はすさまじい状況だよ」と言ったのは、テニス・サングレン(アメリカ)だ。ストレートセットで勝った彼は、次の2回戦でジョコビッチと対戦する。

「他の選手たちがどうやって踏ん張っているのかわからない。第3セットで、僕は『本当にひどい暑さになってきている。あとどのくらい長くプレーしなければならないのか』と考えた。思うに、皆が同じような感じを覚えていたはずだ」

 ジョコビッチは間違いなくそう考えていた。

「すべてが沸騰している。体の中も、脳みそも、すべてが」とジョコビッチは言った。彼はこれまでに獲った「13」のグランドスラム・タイトルのうち2つをここニューヨークで獲っていたが、右肘の故障のため、昨年のUSオープンは欠場していた。

 今回の彼は、7月にウインブルドンで優勝し、8月にハードコートのマスターズ、シンシナティ決勝でロジャー・フェデラー(スイス)を倒していることもあり、かなり有力な優勝候補とみなされている。

 フェデラーは、火曜日にナイターをプレーした幸運な選手の一角であり、そこで日本の西岡良仁(ミキハウス)を6-2 6-2 6-4で下した。フェデラーの3回戦の相手は、気まぐれだが華やかなニック・キリオス(オーストラリア)になる可能性がある。第30シードのキリオスは、ラドゥ・アルボット(モルドバ)を7-5 2-6 6-4 6-2で下す過程で25本のサービスエースを決め、14本のダブルフォールトをおかした。

 ちなみに2回戦でフェデラーはブノワ・ペール(フランス)と、キリオスはピエール ユーグ・エルベール(フランス)と木曜日に対戦する。

 アーサー・アッシュ・スタジアムの最後の試合では、2017年準優勝のマディソン・キーズ(アメリカ)が世界ランク71位のポリーヌ・パルモンティエ(フランス)を6-4 6-4で倒し、2回戦に駒を進めた。

 DAY2の最後の試合はルイ・アームストロング・スタジアムで、グランドスラム大会優勝歴5回のマリア・シャラポワ(ロシア)が39歳のパティ・シュニーダー(スイス)を6-2 7-6(6)で倒した。シュニーダーは2011年に引退したがツアーに復帰、今や予選を勝ち抜いてグランドスラム大会本戦出場を果たした最年長女子プレーヤーとなった。

 ジョコビッチは、第3セットのあとに回復するための時間を与えられたことに感謝していた。彼は休憩の間、1分間ほどアイスバス(冷水の風呂)に浸かりさえしたのだという。そして対戦相手のフクソービッチも、傍で同じようにした。

「ふたりで並んで、裸でアイスバスに浸かったってわけだ」とジョコビッチは言った。「かなり素晴らしいフィーリングだったよ」。

 試合は11時に始まっていて、USTAが男子のためのヒートルールを適用したのが13時だったため、より早い時間帯にプレーした選手たちは、その種の休憩を得られなかった。

 その不運な輩の中には、ステファノ・トラバグリア(イタリア)もいる。彼は目まいとケイレンに苦しめられ、第4セットの途中で棄権した。後に彼は、歩くのもやっとだったと明かしている。

「頭の中がぐるぐる回っていた。まったくエネルギーがなかった。スイングしたとき、ボールが4つに見えたよ。本当にひどい気分で、もうコートの上にとどまることはできなかった」と彼は言った。

「続けることに意味はなかった。続けていたら、おそらくどんどんひどくなって、体を壊していたはずだ」

 トラバグリアはまた、男子に10分の休憩を与えるUSTAの決断が下されるのが、彼にとって遅すぎたことはフェアではないと考えていた。

「このスポーツでは、皆が同じルールの下でプレーすべきだ。不幸なことに、彼らは選手たちに何も尋ねない。ただ彼らが決めるんだ」と彼は言った。

「彼らが休憩を与えようと決めるなら、午前中、その日の試合が始まる前にそう言うべきだ。血圧が落ちすぎたせいで、僕がほとんど気絶しそうになったあとではなくね!」(C)AP(テニスマガジン)

※トップ写真は、猛烈な暑さとなった28日(最高気温33度)のニューヨークで男子シングルス1回戦を戦ったノバク・ジョコビッチ(セルビア/右)とマートン・フクソービッチ(ハンガリー)。エンドチェンジでは、ともに首にアイスタオルをかけて体を冷やした(写真◎Getty Images)

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