「USオープン」(8月27日~9月9日/アメリカ・ニューヨーク/ハードコート)の男子シングルス2回戦。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、テニス・サングレン(アメリカ)と騒々しいアーサー・アッシュ・スタジアムに当惑させられ、一時、自分のプレーを見失ってしまった。

 しかし、USオープンにおける彼のもっとも厄介な敵は、彼自身の中にいたのだ。

「別の僕、もうひとりの僕だ」とジョコビッチは笑みを浮かべて言った。「第一の僕は、そいつのことが好きじゃない」。

 ジョコビッチが嫌っている別バージョンの彼は――彼の技術以上に、気持ちの部分が問題となったとき――混乱した第3セットで顔をのぞかせた。31歳のジョコビッチはそのセットで勝利まであと1ポイントと迫りながら、とどめを刺すことができなかったのだ。

「ときには、ただ受け入れなければならないんだ」とジョコビッチは言った。「でも、それが人間なんだと思うよ」。

 それが何であれ、ジョコビッチは舵を正して切り抜け、3度目のUSオープン・タイトルに続く道を歩み続けている。

 USオープンの木曜日の夜の試合で、ジョコビッチはマッチポイントを浪費してしまったが、結局6-1 6-3 6-7(2) 6-2で勝利をつかみ、3回戦に進出した。

 ウインブルドン1回戦で同じサングレンと当たったとき、ジョコビッチはトータルで6ゲームしか落とさず、ずっと簡単に勝利をつかんでいた。

 グランドスラム大会を13度制した男は、フラッシングメドウでも同様の道を歩んでいるように見えていた。彼は第3セット5-4リードからの相手のサービスゲームで30-40と優位に立ち、勝利まであと1ポイントいうところに迫っていた。しかし、サングレンは11本におよぶラリーをフォアハンドのウィナーで終わらせ、それから勝負をタイブレークに持ち込んだ。

 オーストラリアン・オープンで驚きの準々決勝進出を果たしていたサングレンは、第3セットでジョコビッチの調子が落ちたことに気付いていたと言う。

「3セットを通して最初から最後まで高い集中力を保つというのは、骨の折れることだ。ただただ難しいことなんだ」とサングレンは言った。

「誰かにそれができるとしたら、彼はそれができる類いの選手だ。でも、あのときの彼は、間違いなく少しの間、ためらっていた」

 2011年と2015年の優勝者であるジョコビッチは、第4セット序盤に果たしたブレークで優位性を取り戻し、その後は勝利に向かって突き進んだ。

 しかし、それは観客たちにとって楽しい勝利ではなかった。

 ウインブルドンのセンターコートで観客たちにブーイングされたときに、ジョコビッチは愚痴をこぼしていたが、USオープンでも、このナイトセッションをちょっとしたパーティーに変えてしまった観客たちについて、またも苦言を呈した。

 彼は試合後のコート上のインタビューの際に、ポイント間に話すことについて観客を咎め、集中力を失ってしまったと言った。

「2万3000人の人々が皆、静かにすることを期待することはできない」と彼は言った。

「それはUSオープンのナイトセッションの美しさでもある。それは周知のことだよ。ウインブルドンはオール・ホワイトで、それが伝統だ。あそこでは、プレー中になんの音も聞こえない。でも、ここでは違う。だからこそ、これらのグランドスラム大会は、それぞれがそれぞれの形でユニークなのさ」

 彼は、コーチのマリアン・バイダとふたたび手を組み――ふたりは短い期間、袂を分かち、ジョコビッチは少しの間、アンドレ・アガシ(アメリカ)をコーチとしていた――調子を取り戻していった。

 7月のウインブルドンで準決勝でラファエル・ナダル(スペイン)を倒した末に優勝したジョコビッチは、8月にはロジャー・フェデラー(スイス)を破ってシンシナティのタイトルを獲得。バイダとともに、注意を注ぐべきこと、焦点を分析し直したことがカギとなる要素になっていた。

「彼が帰ってきたとき、言うまでもなく我々は、別れていた間の過去12ヵ月に何が起きたのかを分析し、僕の体、僕のテニスの状況を理解しようと努めなければならなかった」とジョコビッチは言う。

 右肘の痛みのために昨年のUSオープンを欠場したジョコビッチは、今年のウインブルドンで13度目のグランドスラム制覇を果たしていた。その数を「14」に伸ばすためには、彼は『もうひとりの自分』が顔を出さないように努めなければならないだろう。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はノバク・ジョコビッチ(セルビア)
NEW YORK, NY - AUGUST 30: Novak Djokovic of Serbia looks dejected during the men's singles second round match against Tennys Sandgren of the United States on Day Four of the 2018 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on August 30, 2018 in the Flushing neighborhood of the Queens borough of New York City. (Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

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