「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月27日~9月9日/ハードコート)の大会7日目。

 そのポイントは、スローン・スティーブンス(アメリカ)の〈多面的なテニス〉のすぐれた部分を見せるものとなった。

 ある記者は、彼女が日曜日の夜に勝って女子シングルス準々決勝に駒を進めたとき、彼女に何が起きたかを詳しく話し始めたが、彼女は彼の話を遮った。彼女は、その語りが事実をうまく表現しているとは思わなかったのだ。

「あなたはそのポイントをうまく表現していないわ。でも、あなたが何について話しているのかはわかる」とスティーブンスは言った。それから、順を追って彼女自身がプレーの詳細を描写し始めた。

「彼女はドロップショットを打った。私はそのドロップショットを返した。そして彼女はそれを私のフォア側にロブで返した。私はベースラインに駆け戻って、フォアハンド・クロスを打ち、観客が大歓声を上げた」と彼女は言った。

「あなたはこんなふうに描写していなかったわね。あなたはそこで道に迷っていたわ。あれは素晴らしいポイントだったと思う」

 間違いなくそうだった。ボールを追って戻り、体を翻し、引っかけるようにして打ったパッシングのウィナーは、世界3位で前年度覇者のスティーブンスが、15位のエリース・メルテンス(ベルギー)を6-3 6-3で下した4回戦の試合で繰り返しやったように、いかにして守備から攻撃に華やかに移行しうるかを垣間見せたショットだった。

 この25歳のアメリカ人が見せた、似たようないいショットはほかにもあった。とはいえ彼女はトレーニングで、そのような類の“即興的ショット”を練習しているわけではない。

「決して、決してしないわ。私は、練習でボールが私の頭上を越えたら、何でもいいわ、みたいに対処するタイプなの。練習なんかしたら不自然になってしまう。トリックショットを練習したら、そういうことを過剰にやろうとするようになってしまうでしょう。キリオスや、そんな感じの選手たちがどんなふうにやっているのかは知らないけど」とスティーブンスは言った。

「いつも言っていることよ。ただラケットを当てればいい。ボールを返し、対戦相手に1本余計にプレーさせるようにすればいい。私にとっては、それがもっとも重要なことなの」と彼女は続けた。

「ときどき、それは最高のショットでなくてもいいのよ。ただ相手に1本余計にショットを打たせることで、またもうひとつのチャンスを手にするかもしれない。私はその点で非常にハードワークを積んだわ。トリックショットを打ったり、気まぐれで空想的なことをやる代わりにね。ただシンプルなことなのよ。相手にもう1本余計にショットを打たせ、何が起こるか見てみるの」

 それは間違いなく、メルテンスに対して機能した。

 次の試合で、スティーブンスは、第19シードのアナスタシア・セバストワ(ラトビア)に対し、その戦略を利用できるかもしれない。これは昨年のUSオープン準々決勝と同じカードであり、そのときにはスティーブンスが、第3セットのタイブレークを通して勝利をおさめていた。

 セバストワがUSオープンでベスト8に進出するのは、これで3年連続だ。

「もしかしたらパターンがあるのかもしれないわね、なぜって……と彼女は言った。

「なぜって、私はある大会で、いつも決まっていいプレーをするのよ」(C)AP(テニスマガジン)

※写真はスローン・スティーブンス(アメリカ)(撮影◎毛受亮介)

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