「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月27日~9月9日/ハードコート)の男子シングルス4回戦。

 ロジャー・フェデラー(スイス)はサービスが入らなかった。ボレーもミスが多かった。セットを取るチャンスをものにできなかった。そして4回戦で早くも大会を去った。その輝かしいキャリアの中で、今大会で初めてトップ50圏外の選手に敗れた。

 汗が止まらない高温多湿のアーサー・アッシュ・スタジアムで、第2シードのフェデラーは動きが重く、疲れているように見えた。10本もダブルフォールトをおかし、3度あったセットポイントのチャンスを生かせず、6-3 5-7 6-7(7) 6-7(3)でジョン・ミルマン(オーストラリア)に敗れた。試合が終わったとき、時計の針は火曜日の午前1時近くを指していた。

 フェデラーにとって、大きな問題は蒸し暑さだった。気温は27℃程度だったが、湿度は75%と高く、本来の動きを見せられなかった。

「たまにあることだけど、今夜はあまり気持ちよく空気を吸えなかった。まったくいい流れではなかった。理由はわからないけど、今夜のコンディションの中で苦しみ、すごく心地悪かった。試合が進むにつれて、汗がどんどん、どんどんあふれ出てきた。すると、エネルギーを失うものだ。ジョンは僕よりこの状況にうまく対応できたと思う」と37歳のフェデラーは語った。

 USオープンに14度出場して、準々決勝を前に敗退するのはフェデラーにとって2度目のことだった。男子史上最多の「20」あるグランドスラム・タイトルのうち、5つを獲得した大会だった。

画像: フェデラーから大金星を挙げたミルマン(写真◎Getty Images)

フェデラーから大金星を挙げたミルマン(写真◎Getty Images)

「正直言って、ロジャーは僕のヒーローだ。彼のことを尊敬している。今日、彼はすごく調子が悪かったから、ちょっと罪悪感もあった。コンディションが悪いのは誰の目にも明らかだった。でも、彼を倒すチャンスは今日のように絶不調のときで、自分の調子がいいときしかないんだ」と29歳のミルマンは言った。

画像: ソウザにストレート勝利で準々決勝進出のジョコビッチ(写真◎Getty Images)

ソウザにストレート勝利で準々決勝進出のジョコビッチ(写真◎Getty Images)

 フェデラーと、13度のグランドスラム優勝を誇るノバク・ジョコビッチ(セルビア)との準々決勝は誰もが期待していた最高のカードだ。しかし、その代わりにジョコビッチと戦うことになったのは、大会前までグランドスラムの3回戦を突破したことがなく、世界ランク55位のミルマンとなった。

 この数時間前、ジョコビッチはメディカルタイムアウトをとって、コートを去っていた。厳しい暑さの中で、ドクターの治療を受けるのは今大会2度目のことだった。それでも、ジョアン・ソウザ(ポルトガル)に対し、6-3 6-4 6-3のストレート勝ちをおさめた。

「僕は21歳ではない。それはもう10年も前のことだ。年老いたと感じることもないけど、残念ながら確実に体内時計は時を刻んでいる。時に生き残らなければならないときがあるんだ」とジョコビッチは試合後に言った。

 これでジョコビッチは11年連続でUSオープンの準々決勝に勝ち進んだ。そして3度目の優勝、14個目のグランドスラム・タイトルを狙っている。

 ボトムハーフの準々決勝のひとつは、2014年大会決勝の再現でもある、マリン・チリッチ(クロアチア)と錦織圭(日清食品)の対戦になった。

画像: エンドチェンジで扇風機の風に当たるフェデラー。高温多湿の中で本来の力を発揮できず(写真◎Getty Images)

エンドチェンジで扇風機の風に当たるフェデラー。高温多湿の中で本来の力を発揮できず(写真◎Getty Images)

 ミルマンは自分のことなどフェデラーの眼中にないだろうと思っていたこともあり、数ヵ月前のグラスコート・シーズン前に一緒に練習したこともあった。

「彼の激しさはすごく気に入っている」とフェデラーは言う。

 それでも、これは衝撃的な試合だった。ただフェデラーが負けたからではない。この試合までに、彼はATPランクの50位以下に対して、USオープンでは28勝0敗、グランドスラム全体でも127勝1敗の成績を残していたのだ。では、なぜ負けたのか? まずスコアから分析しよう。

 フェデラーは第2セット5-4から40-15として、2つのセットポイントがあったにもかかわらず、ものにできなかった。ミルマンはそこがターニングポイントだったという。

「序盤はあまり調子がよくなかった。でも、試合が進むにつれて徐々にいい感触を得たよ」と、最初は汗が止まらず、ラケットが滑って手におさまらなかったとミルマンは言った。

 そして、第3セットのタイブレークで6-5のセットポイントがあったが、フェデラーはそれを生かせなかった。

 第4セットにフェデラーがブレークして4-2とし、「カモン!」と叫んだ。“RFマーク”を身につけた多くのファンも盛り上がり、チェアアンパイアが何度も「静かに!」と静粛を求めなければならなかった。だがその直後、フェデラーは“らしくない”プレーで簡単なミスをおかしてブレークを許してしまった。

 もうひとつのポイントはサービスの不調。ファーストサービスの確率はわずか49%で、第2セットに限定すると、31%という信じられない数字だった。技術とパワーを備え、誰よりも素晴らしいストロークを放つ男とは思えない状態だった。

 最終セットのタイブレークでは、2連続でダブルフォールトをおかした。ただし、フェデラーの様子がおかしいというシグナルは、第2セットの第2ゲームですでに見えていた。

 15分におよんだロングゲームで、フェデラーは20本のファーストサービスのうち、18本もミスしてしまったのだ。そして、そのゲームをキープするのに、7度のブレークポイントをしのがなければならなかった。フェデラーが本調子でないのは、明らかだった。

 ミルマンが時折大きくコート外へ放つミスショットも、フェデラーの状況を好転させなかった。このような試合、状況に初めて直面する経験のなさも助けにはならなかった。

 ミルマンはトップ10選手を倒したこともなかったが、誰よりも長くトップの座に座り続けた男を倒したのだ。

 アンフォーストエラーの数は大差がついた。フェデラーの77本に対してミルマンは28本。この試合を、フェデラーの妻ミルカは見るに絶えず、スタンドで頭を抱える姿が何度も見られた。

 フェデラーはエンドチェンジの際に頭を垂れると、小さな黒人のファンが彼の顔を指差した。それでもフェデラーは、本来の姿に戻らなかった。

「そんな気分のときは、どうすることもできないんだ」とフェデラーは肩を落とした。(C)AP(テニスマガジン)

※トップ写真は4回戦で敗退したロジャー・フェデラー(スイス)
NEW YORK, NY - SEPTEMBER 03: Roger Federer of Switzerland during the men's singles fourth round match against John Milman of Australia on Day Eight of the 2018 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on September 3, 2018 in the Flushing neighborhood of the Queens borough of New York City. (Photo by Julian Finney/Getty Images)

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