ジョコビッチが、フェデラーを倒したミルマンを押さえ準決勝へ [USオープン]

「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月27日~9月9日/ハードコート)の男子シングルス準々決勝。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、すべてを脇に押しやった。彼の対戦相手がやった、セットの途中で汗だくのシャツとシューズを変えるという前代未聞の行為から、サーブクロックがタイムアウトとなったためのタイム・バイオレーション、彼自身が浪費した「16」のブレークポイントまで。

 本当に重要なのは、ジョコビッチが二夜前にロジャー・フェデラー(スイス)がやってのけられなかったことーーつまりUSオープンで、世界55位のジョン・ミルマン(オーストラリア)を倒したということだった。

 ジョコビッチはミルマンを6-3 6-4 6-4で下し、出場したUSオープンでは11回連続となる準決勝進出を決めることにより、フラッシングメドウでの3度目の優勝、14度目のグランドスラム・タイトル獲得に、また一歩近づいた。彼は右肘の故障のため、昨年の同大会を欠場していた。

 6月にウインブルドンで優勝した第6シードのジョコビッチは、準々決勝でフェデラーと当たるはずのドローを引き当てていた。しかし、フェデラーがエネルギーを搾り取られ、息ができなかったと言った、暑く湿度の高いその4回戦の夜、ミルマンは4セットの末に、20度グランドスラム大会を制した男に対して驚きの番狂わせを演じ、皆が待ちわびた大一番を台無しにした。

「ほかの人々同様、僕もフェデラーと対戦することを予想していた」とジョコビッチは言った。

 この夜は、気温が20度台前半まで落ちたが、湿度が80%以上あったため、汗だくだくになったミルマンは第2セット2-2のときにシャツを変える許可を求めた。プレーヤーがセットのあとでなく、最中に着替えを許されるのを目にするだけでも十分に奇妙だったが、それが奇数ゲームのエンドチェンジのときでなく、偶数ゲームのあとに起きるというのは、いっそう珍しいことだった。

「僕は四苦八苦し、彼も四苦八苦していた。僕らは汗びっしょりだった。Tシャツやショーツを大いに着替えたよ」とジョコビッチは言った。彼は準決勝で、2014年USオープン準優勝者の錦織圭(日清食品)と対戦する。

 ジョコビッチは試合後、「ただ頑張り抜く道を見つけようと努めていた」とコメントした。

 ミルマンが、その時点でコートを離れることを詫びたとき、ジョコビッチは「少し休憩することに異存はないよ」と答え、それからシャツを身に着けずにサイドラインのベンチに座り、涼をとった。

「ルールがあることも知らなかった」とミルマンは言った。着替えのため短い時間コートを離れるというミルマンのリクエストは、国際テニス連盟(ITF)のガイドラインにある、『装備の調整不全』対策と呼ばれるものをベースに許可された。というのも、ミルマンの汗がコートを滑りやすくしていたのである。

 一方、テニス界最高のリターンの名手の一角として広く知られるジョコビッチは、幾度となくチャンスを作っておきながら、それらをものにし損ねた。彼は、手にした「20」のブレークポイントのうち、4つしかものにすることができなかったのだ。

 また彼にとって、別の問題も起きた。ワンブレークでリードしているとき、彼は審判から、今回グランドスラム・デビューを遂げた25秒のサーブクロックが、ポイント間の規定時間をすべて消費したことを告げられた。その最初の警告のあと、彼はダブルフォールトをおかし、結局サービスをブレークされてしまった。

 しかし、この試合の最後から2ゲーム目でジョコビッチはふたたびブレークし、それからラブゲームでサービスをキープして、勝利を決めた。

「彼は過去に大きな壁を打ち破ってきた男なのだと思う。なぜって、彼はすべてのポイントで相手にハードワークを強い、情け容赦ない」とミルマンは言った。

 水曜日のより早い時間帯の試合では、第21シードの錦織が、4年前の決勝で自分を倒した第7シードのマリン・チリッチ(クロアチア)を2-6 6-4 7-6(5) 4-6 6-4で打ち破った。

 加えて女子では、第20シードの大坂なおみ(日清食品)がノーシードのレシヤ・ツレンコ(ウクライナ)を6-1 6-1で倒したため、錦織と大坂は、同じグランドスラム大会の男子と女子のシングルスに、日本人準決勝進出者を送り出すという、歴史の一章を記すことになった。テニスの歴史上、それが起きたのは初めてのことなのだ。

「素晴らしいこと」と錦織は言った。彼は、グランドスラム大会で3度目の準決勝進出を遂げたーーすべてニューヨークでーーが、まだ初のグランドスラム優勝を追い求めている。

 20歳の大坂にとっては、これはグランドスラム大会で4回戦を越えた初めての経験だった。彼女は、外にはまったく見せていなかったとはいえ、「内心、震えあがっていた」と明かした。

 大坂は木曜日の夜の準決勝で、第14シードのマディソン・キーズ(アメリカ)と対戦する。もうひとつの準決勝では、第17シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が第19シードのアナスタシア・セバストワ(ラトビア)と対戦することになる。

 キーズは1年前、ベスト4に勝ち残った4人のアメリカ人選手の一角で、その際には決勝でスローン・スティーブンス(アメリカ)に敗れて準優勝していた。

 彼女は、昨年の4人組の中で、今年もベスト4に戻ってきた唯一のメンバーだ。初のグランドスラム・タイトルを目指しているキーズは、第30シードのカルラ・スアレス ナバロ(スペイン)を6-4 6-3で圧倒。サービスとフォアハンドの上に築かれた強打スタイルのテニスを駆使し、過去5回のグランドスラム大会で、3度目となる準決勝に駒を進めた。

 キーズは、直面した2度のブレークポイントをセーブして、10回あった自分のサービスゲームをすべてをキープした。ブレークポイントのうちの一つは、キープすれば勝利という最後のゲームで訪れたが、彼女はフォアハンドのウィナーで堂々とこれをセーブ。キーズはウィナー数で22対10と、スアレス ナバロを大きく上回った。

 23歳のキーズは、いまや自分が重要な舞台で重要な瞬間にうまく対処するための器量を、これまでになく備えるようになったと感じている。

「この段階にきたときに、自分の感情をよりよく管理できるようになった。(いまや)おそらく、より感情が高まるだろうとわかっている」と彼女は言った。

「そういう感情に尻込みすることなく、それをまっすぐに受け止め、それについて話すこともできるようになったわ」(C)AP(テニスマガジン)

※写真は試合中、暑さと湿気により、屈んでしまったノバク・ジョコビッチ(セルビア)(撮影◎毛受亮介)

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