ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が、子供時代のアイドルであるピート・サンプラス(アメリカ)と同じ数のグランドスラム・タイトルを手に入れた今、彼にとって自分の前にいる、たったふたりの男、ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)を追うことについて考え始めるのは、現実的なことだろう。

 たとえジョコビッチが、現在のグランドスラム・タイトル数「14」から、ナダルの「17」やフェデラーの「20」に行くという考えを公の場で口にすることに気乗りしない様子であるとしても、彼のコーチはそうではない。

「『14』だ、驚くべき数字だ、『14』だ!」

 先週の日曜日の夜、ジョコビッチがフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)を6-3 7-6(4) 6-3で倒したあと、ジョコビッチのコーチであるマリアン・バイダは目を大きく見開き、ほくそ笑みながら言った。

「1年前だったら、ラファとロジャーは彼から遠く離れすぎていると言ったことだろう。グランドスラムのタイトル数では、ふたりは彼の先をいきすぎていると。でも今、私は、ノバクが彼らに追いつきつつあるという感じを覚えている」とバイダは、強調するために左手の手の平で右手の甲を叩きながら続けた。

「彼はいまや、すごく近づいた。ラファとは『3』、ロジャーからは――わかっている、『6』はまだ遠いが――ロジャーとは『6』の差だ」

 彼が言った「驚くべきだ」は、この3人にぴったりの言葉だろう。彼らは今、最新ランキングでナダルが1位、フェデラーが2位、ジョコビッチが3位と、3年半ぶりに世界ランキングのトップに揃って並んだ。彼らは、2005年フレンチ・オープン以降の「55」のグランドスラム大会のうち47大会を、3人の間で分け合っていたのだ。これは85%に当たる。

 この傾向は、ここ8つのグランドスラム大会で8人の違った優勝者を生み出している女子テニスの現状とは、かなり対照的だ。

 そして今? 彼の時代からまだ16年しか経っていない今、サンプラスは3人の選手たちに追いつかれ、あるいは追い越された。サンプラスに追いついたことは、テニスに関する子供時代のもっとも鮮明な思い出が、テレビで放送していたウインブルドンでサンプラスを見たことだというジョコビッチにとって意味深いことだった。

「グランドスラム・タイトル数でサンプラスと並んだということは、僕にとって大きな意味を持つ。考えてみると、本当に信じられないようなことだ。僕は、彼がウインブルドンに優勝した初期の頃の試合のひとつを見た。僕は、いつの日か、彼がやったことを自分もできるだろうかと考えながらプレーし、育ってきた」とジョコビッチは言った。

「実際にここにたどり着くなんて、まさに夢の実現だ」

 8つのグランドスラム・タイトルを獲ったアンドレ・アガシ(アメリカ)、そしてサンプラスは、かつて、お互いの存在がお互いをよりすぐれた選手にしてきたのだと言っていた。

 同じことは今日のビッグ3にも言える(アンディ・マレーに敬意を払った上でいうが、3つのグランドスラム・タイトルと2つの五輪金メダルを獲った彼は、厳密な意味でビッグ4ではない)。

「たぶん10年前だったら、僕はナダル、フェデラーと同じ時代にいることをうれしいとは言わなかったかもしれない。でも今日の僕は、そのことをうれしく思っている、本気でね。僕は、これらの選手たちとのライバル関係、フェデラーやナダルとの試合が、僕を今日のプレーヤーにしたのだと感じている。それが僕を、今日の僕という選手に形成してくれたのだと」とジョコビッチはUSオープンの銀色に輝くトロフィを横において、こう言った。

「僕は、彼らがコート上で成し遂げたことに対し、最上級の敬意を抱いている。そしてまた、彼らはコート外でもチャンピオンであり、お手本だ。僕らは互いに対戦するたび、互いを限界まで追い立て合ってきたと思う。僕にとって、それは常に究極のチャレンジだった。それが、どの大会であれ、ナダル、フェデラーとプレーすることは」とジョコビッチは続けた。

「キャリアの初期に、彼らに対するグランドスラム大会での試合のほとんどに負けていたとき、僕は彼らに挑戦し、もっとも重要なときに彼らに勝ち始めることができるようにするには、僕のテニスのどこを発達させ、実際にどのような上達を遂げることが必要なのかを割り出さなければならなかった。それは僕の人生、僕のテニスキャリア、上達において、もっとも重要な時期、瞬間だったと思う。その点で彼らには恩義があるんだ」

 そのことから実りを得たほかの者は、テニスのファンたちだった。

 今、この競い合いの次の段階を見ることになった世界の人々は、こういぶかっている。

 USオープンで4回戦負けを喫した37歳のフェデラーは、あといくつグランドスラム・タイトルを獲れるのだろうか? そして何年にもわたり繰り返し再発している右膝の痛みのせいでUSオープンの準決勝で棄権を強いられた、32歳のナダルについてはどうだろうか?

 31歳のジョコビッチは、2月に手術を必要とした肘の故障に妨げられ、自分が2年以上グランドスラム・タイトルを獲れないでいた間に、彼らが自分との差を広げるのを目にしたあと、今、自分のテニスを取り戻した。彼は、3度目のUSオープン優勝に至る過程で、最後の16セットを連取しつつ、持ち前のすぐれたコートカバリング能力、相手を苛立たせる守備から攻撃にすばやく転じるスキルを披露した。

 バイダが言った通り、ジョコビッチは「彼のベストに戻った」のだ。だから、ふたたび追いかけ始めようではないか。

(APライター◎ハワード・フェンドリック)(テニスマガジン)

※写真はUSオープンでグランドスラム14度目の優勝を飾った翌日、ニューヨークの街を歩くノバク・ジョコビッチ(セルビア)
NEW YORK, NY - SEPTEMBER 10: US Open champion Novak Djokovic of Serbia walks the streets of NYC on September 10, 2018 in New York City. (Photo by Julian Finney/Getty Images)

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