彼女のテニスにまつわるもっとも古い思い出は、姉が練習するコートサイドでボールを拾いながら、「わたしもやりたい! わたしもやりたい!」と親にせがんだ記憶だという。両親、さらに姉もテニスを嗜む一家の末っ子にとって、コートが立ちたい場になるのは、ごくごく自然の成りゆきだった。

 3歳の頃からコートでボールを打ちたがったというこの原体験が、その後も、輿石亜佑美(浦和麗明高校)のテニスへの情熱やモチベーションとなっていく。

「練習が好きじゃない……というと語弊が生まれるんですが……」

 いたずらを白状する子供のように、決まりの悪そうな笑みをこぼして輿石が言う。「試合の方が頭が回るというか、考えながらできるんです」。

 そんな彼女の特性や個性を、周囲も早い時点から見いだしていたのだろう。特に、小学6年生時から師事しはじめた山崎(現姓右川)史子コーチは、「亜佑美は試合で強くなるタイプ」だと言い、多くの試合に出ることを推奨したという。亜細亜大学時代にインカレ室内でシングルス2連覇、ダブルスでもインカレで優勝した経歴を誇る山崎コーチの後押しもあり、輿石は中学生の頃から、大人たちと混じって多くの実戦経験を積んできた。

 そのように年長者に混じり揉まれてきた彼女のテニスの武器は、本人も認めるように「頭」と「足」。相手のパワーをいなしながら戦い、ここぞというときは、もっとも自信を持つバックのストレートで自ら勝利への道を切り開く。

「プレッシャーが掛かる状況は嫌いではないです。コーチからは、プレッシャーの掛かるときほど『ポイントを取りたい』ではなく『絶対に取る』という気持ちを持つようにとも言われているので」と明言する口調には、穏やかながら意志の強さが宿る。現在はまだ高校3年生だが、卒業後にはプロ転向を既に決意。その理由も「生活が掛かっている方が、プレッシャーにも強くなれる」と言うのだから頼もしい。

 なお試合が大好きな彼女だが、文字通りの「三つ子の魂百まで」で、球拾いは今でも好きなのだという。ボールパーソンの居ない大会では、ボールを拾いに歩いていくその間に、頭を整理しいろいろと考えているのだそう。

 彼女が、ゆっくりボールを拾いにいくそのとき、既に、次のポイントへの戦いは始まっている――。

レポート◎内田暁(大会オフィシャルライター)

※写真は輿石亜佑美(浦和麗明高校)
写真提供◎浜松ウイメンズオープン実行委員会
撮影◎てらおよしのぶ

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