「三菱 全日本テニス選手権 93rd」(賞金総額2850万円/本戦10月27日~11月4日/大阪府大阪市・ITC靱テニスセンター/ハードコート)は本戦4日目、男子はシングルスのベスト16とダブルスのベスト8が出揃った。

 今年は大学生に大きなチャンスがあるーー。

 慶應義塾大の坂井利彰監督は、大会初日からそんな期待を口にしていた。男子のシングルス48ドローの中に大学生プレーヤーは11人。上位シードに名前はないものの、今回のドローの中でツアーレベルの活躍経験があるのは第1シードの伊藤竜馬(北日本物産)だけという状況を見れば、大学生も上位に食い込むチャンスが十分にあると期待するのは当然だろう。

 しかし、まずは前日に行われたトップハーフの2回戦を突破したのは大学2年の今村昌倫(慶應義塾大学)のみ。今年のインカレ・チャンピオンであり高校時代の先輩でもある望月勇希(中央大学)との大学生対決を制してのベスト16入りだった。

 そして、この日のボトムハーフ2回戦。大学生のエリート軍団・早稲田大だけで4人が登場し、ベスト16入りを目指した。ワイルドカード(主催者推薦枠)の島袋将と古田伊蕗、予選から勝ち上がってきた田中優之介と千頭昇平。しかし彼らは全員敗退し、今村に続いたのは早稲田大4年の古田をフルセットで破った慶應義塾大1年の羽澤慎治だった。

 羽澤は昨年の全日本でジュニア選手としてただひとり16強入りし、古田とはその1回戦で対戦。6-2 6-1で快勝していた。しかし、「あのときは古田さんがケガをしていたので、今回が初対戦の気持ちで戦いました」と羽澤。試合はフルセットになったが、「我慢するところをしっかり我慢できて、チャンスがあれば前に出て得意のネットプレーも生かせたと思う」と、最終セットは3-2から3ゲームを連取した。

「将来的にはグランドスラムを目指したいと思っている。全日本で結果を出すことで、そのための環境もよくなっていくと思うので、大事だと思っています」

 目標は世界。全日本はそのための通過点。その位置づけは明確だ。次は第3シードの越智真(江崎グリコ)とベスト8をかけて戦う。

 千頭を相手に苦戦しながらも無事勝利をあげたのは第2シードの徳田廉大(フリー)。「初戦ということもあって緊張しました。それを出さないようにしていたけど、心のゆとりがなかった」と第1セットを1-6で失った。冷静さを取り戻して第2セットは6-4で奪ったものの、最終セットは足にケイレンを起こすピンチに。第1ゲームをブレークされ、そこから4ゲームを連取し、逆転は許さなかったものの、納得のいくプレーではなかったという。

「どんなかたちでも勝てたのがよかった」。ケイレンの原因は肉体的なものではなく、精神的なものだったと自身は考えている。昨年、ジュニア時代からのライバルで同い年の高橋悠介(三菱電機)が優勝したことも、自分への期待とプレッシャーの一因だろう。

「周りからいろんなことを言われる。次は僕の番、みたいな」

 難しい初戦を突破したものの、次も手強い。第15シードの吉備雄也(ノア・インドアステージ)。早稲田大の島袋を6-3 6-3で破って勝ち進んできた32歳だが、全日本は今年が最後と決めている。

 皆それぞれに〈特別な思い〉を持って臨んでいる大会だ。本命・伊藤の対抗を予想するのが難しい今大会、思いの強さはこの先を勝ち進むカギになりそうだ。

(ライター◎山口奈緒美)

※写真は羽澤慎治(慶應義塾大学/左)と古田伊蕗(早稲田大学/右)(撮影◎宮原和也)

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