昨年準優勝の秋田史帆が、現役引退の江口実沙に47分の圧勝 [第93回三菱全日本テニス選手権]

「三菱 全日本テニス選手権 93rd」(賞金総額2850万円/本戦10月27日~11月4日/大阪府大阪市・ITC靱テニスセンター/ハードコート)は本戦5日目が終了し、女子は単複のベスト8が出揃った。

 0-6 1-6という完敗スコアで、26歳の江口実沙(橋本総業ホールディングス)の現役生活は幕を下ろした。

「もうちょっとできるかと思ったんですけど、相手がよかったかなって思いますね。パワーに押されちゃいました」

 試合後の第一声は、悔しさをにじませてというよりは実にさばさばしたようすで、明瞭な口調だった。

「相手」というのは昨年の準優勝者で第7シードの秋田史帆(橋本総業ホールディングス)。身長156cmの小柄な体から繰り出すショットのパワーは、173cmの江口の長いリーチを何度もかわし、ウィナーを連発した。 

 立ち上がりのゲームこそ2度のデュースにもつれたが、第2ゲーム以降はわずか3ポイントしか許さなかった秋田がセットを先取。第2セットも秋田の勢いは止まらず、江口がようやくサービスをキープして1ゲームを返したのは第3ゲーム…トータルでは9ゲーム目のことだった。しかし、この1ヵ月半の間、試合はもとより練習も満足にできていなかったという江口にとってはそれが精一杯で、その後はまた秋田が4ゲームを重ね、江口の最後の全日本は終わった。

江口実沙(橋本総業ホールディングス)

 秋田は、自分が勝てばこれが江口のラストマッチになるという状況に、決して平静ではいられなかったという。

「そういう意味では、今年一番タフな試合だったと思います」

 しかし、その中でも、攻めるべきところを攻め、我慢すべきところを我慢して、自分が取り組んでいるテニスに徹した結果が、試合時間わずか47分の圧勝だった。

 秋田の次の相手は、ここまで唯一ノーシードで勝ち残っている松田美咲(亜細亜大学)。2回戦で第3シードの加治遥(島津製作所)を破り、この日の3回戦では第14シードの田中優季(安藤証券)に5-7 6-1 6-4の逆転勝利をあげた。最終セットは0-3から3-3に追いつき、第9ゲームでブレークに成功。「危ないところは何度もあったけど、最後まで前向きな気持ちでいられたのが勝因」と振り返った。

 女子シングルスでは大学生ただひとりの生き残りでもある。

松田美咲(亜細亜大)

「不思議な感じはするけど、この中でも勝ちきりたいという気持ちが1回戦のときよりも強くなってきた。テニスと学業の両立はやっぱり無理って言われないように、逆に学生はどこか違うねって思われるくらいのプレーをしたい」

 立ち居振る舞いは決して威風堂々というわけではないが、こうした言葉からは大学生プレーヤーとしての強い信念がうかがえる。第1シードの清水綾乃(Club MASA)や第2シードの小堀桃子(橋本総業ホールディングス)と同じ20歳。小堀がすでに敗れたボトムハーフに、意外な20歳が潜んでいたものだ。

(ライター◎山口奈緒美)

※トップ写真は秋田史帆(橋本総業ホールディングス)(撮影◎宮原和也)

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