ジョコビッチが死闘の末にフェデラーを倒して決勝進出 [ロレックス・パリ・マスターズ]

「ロレックス・パリ・マスターズ」(ATP1000/フランス・パリ/10月29日~11月4日/賞金総額544万4985ユーロ/室内ハードコート)のシングルス準決勝で、第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)を7-6(6) 5-7 7-6(3)で下して決勝進出を果たした。この試合は熱狂する観客をひざまづかせた、最後の最後まで結果が読めない攻撃的プレーに満ちた熱戦だった。

 ジョコビッチとフェデラーの47回目の対戦は、彼らの伝説的ライバル関係の歴史の中でも、もっとも厳しく最高の試合のひとつとなった。

 約3時間かかったその試合は、ジョコビッチが第3セットのタイブレークで6-1とリードしたあと、ついに終りを遂げた。フェデラーはふたつのマッチポイントを凌いだが、長いラリーの果てについに先に崩れ、バックハンドのスライスをネットにかけた。

「我々の長いライバル関係を通し、いくつかの名勝負があったが、これは間違いなく最高のもののひとつだ」とジョコビッチは言った。

 この結果でジョコビッチはフェデラーに対して4連勝をマークし、ふたりの間での47回目の対戦で25勝目を挙げた。

 今季5つ目のタイトルに王手をかけたジョコビッチは、次にノーシードから勝ち上がってきたカレン・ハチャノフ(ロシア)と対戦する。第6シードのドミニク・ティーム(オーストリア)を6-4 6-1で破ったハチャノフは、ATPマスターズ1000の大会で初の決勝進出を果たした。

「これは僕の、今季最高の試合だ。それは間違いない」とジョコビッチは、フランス語で観客たちに向かって言った。

「ロジャーに大きな敬意を払いたい」

 フェデラーは変わらず、キャリア100タイトルまであと一歩というところにいる。

「このような競った試合に負けたときには、常に後悔があるものだ」と失望したフェデラーは言った。

「それゆえに僕は、今こんな顔をしているのだと思う」

 現在22連勝中のジョコビッチは、マスターズ33勝目となるタイトルを獲ることができれば、ナダルの記録に並ぶことになる。

「ノバクは明らかに、いい波に乗っているようだ」とフェデラーは言った。「それは、傍から見ていても感じ取れる」。

 もうひとつの準決勝でティームをストレートで下したハチャノフは、先月クレムリン・カップでキャリア3つ目のタイトルを獲った新鋭だ。

 ウインブルドン優勝への道のりでハチャノフを倒しているジョコビッチは、記録更新となるパリ室内での5度目、キャリア73回目の優勝を目指している。

 この日のジョコビッチは、8月のシンシナティ決勝でフェデラーを倒したときよりも、ずっとハードに奮闘することを強いられた。

 ネットで抱擁を交わしたあと、フェデラーは素早くコートから立ち去りながら、声援する観客に向けて親指を上げた。

「人々はライバル関係を楽しんでいる。我々もそうだ」とフェデラーは言った。

「それは、タフで、フェアだ。そうあって然るべきなんだよ」

 ファンたちはこの日、望み得るすべてを手に入れた。合わせて「34」のグランドスラム・タイトル、「59」のマスターズ・タイトル、「533週」の世界ランク1位の座を保持するふたりの選手が、容赦のない、それでいて崇高なまでの激しさで、とことん戦い抜いたのだ。

 フェデラーの見事なランニング片手打ちバックハンドがダウンザラインに突き刺さり、ネットで鋭いアングルボレーが放たれる。一方のジョコビッチはベースラインでボールを拾う際に驚くべき伸縮性を見せ、コーナーにレーザービームのようなフォアハンドを打ち込む。

 この試合でのフェデラーは、17本のサービスエースを決めた。一方のジョコビッチは適切な瞬間にレベルを上げ、奪った8本のサービスエースのうち、試合終盤の3ゲームで5本を決めたのだった。

 一時フェデラーを15-40と追い詰めた第3セットの第9ゲームで、ジョコビッチは一瞬カッとなって我を忘れた。フェデラーはふたつのブレークポイントの双方をセーブし、ジョコビッチはラケットを地面に叩きつけて、この壮大な試合で初となるブーイングを引き起こした。

 観客たちは、素晴らしいテニスを堪能する時間を癇癪によってさえぎられたことに不満を示し、ジョコビッチは、あたかも厳しい観客たちに謝罪するように両手を挙げた。

 5月の22位から、月曜日の新ランキングで1位にまで駆け上り、さらにウインブルドンとUSオープンで優勝したシーズンに、自信に溢れるジョコビッチは、試合を通してプレッシャーをかけ続けた。

 しかしフェデラーは、すべてのブレークポイントセーブし――総じて12本あった――第2セットをもぎ取る過程で、この試合唯一のブレークをやってのけた。

「僕が誰かのサーブをブレークできない、というのは、そう何度も起きたことはなかった。特に12のブレークポイントを手にしていたというなら尚更だ」とジョコビッチは言った。

「ほとんどのブレークポイントで、彼はただいいサーブをし、素晴らしいショットを打ってきた」

 この試合最高のショットは、第1セット第8ゲームでフェデラーによって生み出された。

 ネットに詰めたフェデラーに対してジョコビッチがパワフルなフォアハンドを打ったとき、そのショットがネットに当たってフェデラーの左に飛び、彼の逆をついた。ところが不可能に見えるアングルから、完全にバランスを崩しながらもフェデラーは首の後ろにラケットを出すような形で反射的にボレーをネットの向こうにはたき返し、それがウィナーとなったのである。

 彼は両手を上に上げ、驚嘆した観客たちは立ち上がって拍手喝采を送った。それはフェデラーの非常に高い標準に照らしても、特に際立ったものだった。

「それが、彼が彼たる所以だよ」とジョコビッチは、敬服の念を込めて言った。

 しかし、試合に敗れたあとのフェデラーは、失望に頭を振っていた。彼は、マッチポイントでの長いラリーの最中に、観客席の誰かが2度「アウト!」と叫んだことを、うれしく思っていない様子だった。

「そんなことが起き、最後にポイントを、そして試合を失ってしまったのは、不幸なことだった」とフェデラーは言った。それでも彼は、皮肉のセンスを保ってはいた。

「あのラリーが終わったのはありがたかったよ。もしラリーが続いていたら、5度(「アウト!」と)叫ばれていただろうからね」(C)AP(テニスマガジン)

※写真はノバク・ジョコビッチ(セルビア)
PARIS, FRANCE - NOVEMBER 03: Novak Djokovic of Serbia celebrates winning his Semi Final match against Roger Federer of Switzerland on Day 6 of the Rolex Paris Masters on November 3, 2018 in Paris, France. (Photo by Justin Setterfield/Getty Images)

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