ズベレフがフェデラーを倒して決勝進出、ジョコビッチは全勝優勝に王手 [Nitto ATPファイナルズ]

 トップ8によるエリート大会「Nitto ATPファイナルズ」(イギリス・ロンドン/11月11~18日/賞金総額850万ドル/室内ハードコート)のシングルス準決勝で、第3シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が第2シードのロジャー・フェデラー(スイス)を7-5 7-6(5)で倒して決勝進出を果たした。

 キャリア最大の勝利のひとつを挙げてフェデラーのキャリア100勝目となるタイトル獲得を阻んだズベレフは、彼が犯したわけではないアンフォーストエラーについてお詫びを言うことになった。

 第2セットのタイブレークでフェデラーが4-3とリードした場面でのラリーの途中、コートの後方でボールボーイがボールを落としてしまった。ズベレフのサービスから始まったそのラリーでフェデラーは優位に立っていたが、ズベレフがすぐにプレーを止めるようサインを送り、主審はリプレーを命じた。

 そのやり直しのポイントでズベレフはサービスエースを決め、その少しあとに試合を終わらせた。

「タイブレークでの状況について、謝りたい」とズベレフは言った。彼はオンコートインタビューの最中に、一部の観客からブーイングを受けた。

「ボールボーイがボールを落としたから、ポイントをやり直さなくてはいけないというのがルールなんだ。僕はこのような終わり方を望んでいた訳ではなかったから、この状況には少し動揺しているよ」

 21歳のズベレフは、2009年以降のATPファイナルズで最年少の決勝進出者であり、1996年以来のドイツ人ファイナリストだ。彼は決勝で、優勝歴5回で現世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦する。第1シードのジョコビッチはナイトセッションで行われた準決勝で第4シードのケビン・アンダーソン(南アフリカ)を6-2 6-2で下し、同大会の準決勝での総合成績を7勝1敗とした。

 37歳のフェデラーは、実現していれば記録更新となった7度目の優勝を目指していたが、ズベレフのパワーと正確さによって生み出されるプレッシャーに対処しきることができなかった。

「彼(ズベレフ)は、試合後の握手をするときに謝ってきたんだ」とフェデラーは明かした。

「僕は、『おい、何を言っているんだ。ここで君が僕に謝る必要はないよ。素晴らしい試合だったし、ここまで見事な進撃だったじゃないか。おめでとう。決勝での幸運を祈る』という感じのことを返したんだ。もう、先に進もうよ」

 一連の目の覚めるようなショットで、ズベレフは第12ゲームにこの試合最初のブレークポイントを手に入れ、フェデラーがフォアハンドをサイドに外して第1セットが終了した。

 第2セットに入るとフェデラーが先にブレークして2-1のリードを奪ってみせたが、ズベレフはすぐに落ち着きを取り戻して次のゲームで直ちにブレークバックした。

 ズベレフはタイブレークで、前述のハプニングを克服して5-4とリードし、フェデラーは非常に簡単なフォアボレーをネットにかけてしまい、マッチポイントを握られた。

 フェデラーは最初のマッチポイントを凌いだが、ズベレフが堂々とバックハンドのドライブボレーを打ち込んで、キャリア最大のタイトルに挑む権利を勝ち取った。

 節目となる100回目のツアー優勝を来シーズンまで待たなければいけないことになったフェデラーは、それでも、「総じて言えば、僕は今季の内容をうれしく思っている」とコメントした。彼は1月のオーストラリアン・オープンで、グランドスラム通算20勝目を挙げていた。

「多くのポジティブな点がある。だから、来シーズンに向けてワクワクしているよ」

 今シーズンのズベレフは、たった1度グランドスラム準々決勝に至っただけではあったが、ジョコビッチ、フェデラー、ラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マレー(イギリス)によって構成される“ビッグ4”以外で、3度マスターズで優勝したのことのある唯一の現役選手だ。しかし、このツアーでもっとも重要な大会での勝利は、それらの成果を超えるものになるはずだ。

「今現在のノバクは、世界最高のプレーヤーだ」とズベレフは言った。彼はラウンドロビン(グループ内総当たり戦)の試合で、ジョコビッチに敗れていた。

「勝つチャンスを少しでも手にするためには、自分の最高のテニスをしなければならない。明日、そうできるよう願っているよ」

 今回が初出場だったアンダーソンをストレートで退けたジョコビッチは、この大会で一度もセットやサービスゲームを落としていていないという記録を存続させるとともに、フェデラーと並ぶ6度目の栄冠に王手をかけた。

「グループステージでサーシャ(ズベレフ)と対戦したとき、僕はとてもいいプレーをした」とジョコビッチは言った。「でもあのときの彼が、ベストに近かったとは思わない」。

 27回あった相手のセカンドサーブから20ポイントを取ったジョコビッチは、アンダーソンのサービスゲームを各セットで2度づつブレークすることに成功した。

「今週プレーしたなかで最高の試合だった」とジョコビッチは満足げに振り返った。

 ウインブルドン決勝でアンダーソンを倒し、グランドスラムのタイトルから見放されていた不毛の2年間に終止符を打ったジョコビッチは、続くUSオープンで通算14度目のグランドスラム制覇を果たし、すでに年末ランキング1位となることを確定させている。

 この日の勝利で、ウインブルドンがスタートしてからのジョコビッチの戦績は35勝2敗となった。右肘の故障からの復帰途上にあったジョコビッチはシーズン前半に思うような結果を残せず、世界ランクを21位まで落としてウインブルドンを迎えていたのだ。

「ウインブルドン以降に彼がやったことは、注目に値する」とアンダーソンは言った。

「彼は間違いなく元に戻り、ふたたび彼のキャリアで最高のテニスをプレーしているよ」(C)AP(テニスマガジン)

※写真は試合後のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/右)とロジャー・フェデラー(スイス/左)
LONDON, ENGLAND - NOVEMBER 17: Alexander Zverev of Germany and Roger Federer of Switzerland embrace after their semi finals singles match during Day Seven of the Nitto ATP Finals at The O2 Arena on November 17, 2018 in London, England. (Photo by Julian Finney/Getty Images)

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