死闘の末、マレーが初戦敗退「可能な限り全力を尽くすよ」 [オーストラリアン・オープン]

「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月14~27日/ハードコート)の初日、男子シングルス1回戦。

 もしこれが本当に、アンディ・マレー(イギリス)にとって最後のオーストラリアン・オープンだったなら、彼は彼自身と、母と兄を含めた、目が高く騒々しい観客たちに、かなりガッツのある『さよなら』と、彼がそれゆえに知られていた『ネバーギブアップ』のパフォーマンスをプレゼントしたことになる。

 月曜日のオーストラリア・オープンでマレーができなかったことは、感動的な挽回劇を完了させ、キャリア最後の大会となるかもしれないものを延長させることだった。

 ソックスを履くことすらが難儀となるほど痛む、手術で修復したはずの臀部を抱えてプレーしているマレーは、すべての力とストロークを呼び起こして大きな劣勢を覆し、勝負の行方を最終セットに持ち込んだが、最終的に第22シードのロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)に4-6 4-6 7-6(5) 7-6(4) 2-6で屈した。これはマレーにとって、ここ11年で初となるグランドスラム大会での初戦敗退だった。

「もし、これが僕の最後の試合となったなら…僕は文字通り、持てるすべてを捧げた」とマレーは震える声でメルボルン・アリーナを埋め尽くした観客たちに向かって言った。

「今夜は、それでは十分ではなかった」

 手術のため1年プレーしていなかった、まだ31歳のマレーは、オーストラリアン・オープンの前に、2019年に引退すると発表した。最大の問いは、彼が7月のウインブルドンまで続けられるか、ということだ。彼は、イギリス人の77年の不毛の時期に終止符を打った最初のタイトルを含め、獲得した3つのグランドスラム・タイトルのうちの2つをウインブルドンで獲っていた。

 月曜日の試合のあと、マレーは「もしかしたら、また君たちに会うかもしれない。トライするために可能な限り全力を尽くすよ。もしふたたび進みたいなら、僕には大きな手術が必要で、いずれにせよ戻ってこられる保証はないけれど」と言って、自分の決断に少し考慮の余地を残していた。しかし試合前には、今週より先までプレーを続けられないかもしれないという展望に言述していた。

 歩くときに足を引きずっていても、ポイント間に屈んで膝に手を乗せて休む仕草をしても、マレーは試合を4時間を超える熱戦に持ち込む力とショットを呼び起こした。

 そしてファンたちは、彼がバウティスタ アグートを追い抜くことを望んだ。バウティスタ アグートは、これに先立つ対マレーの3試合のすべてでストレート負けを喫していた。

 第3セットを取る過程でマレーがブレークバックして2-2に追いついたとき、観客たちは轟くような歓声を挙げた。ほかの観客たちと並んで立った彼の母ジュディは、大きな笑みを浮かべていた。

 マレーが第4セットを取ったとき、観客たちは彼の名前を大声で繰り返し呼んだ。この感動的な試合が終わったとき、観客たちは総立ちとなった。

「アンディはこの雰囲気に包まれるに値する。アンディは、彼を見に来たこれらすべての人々(の声援を受ける)に値する」とバウティスタ アグートはコメントした。

「彼は厳しい対戦相手だ。最後のポイントまで全力を尽くす。彼がテニスのためにやったすべてについて、彼を讃えたい」

 そのあとにはスタジアムで、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)らのライバルたち、またニック・キリオス(オーストラリア)、カロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)、カロリーナ・プリスコバ(チェコ)、スローン・スティーブンス(アメリカ)、大坂なおみ(日清食品)など、さまざまな選手たちからのマレーへの賛辞の映像を含めたビデオが流された。

「素晴らしいキャリアだ。君に祝福を」とフェデラーは言った。「僕は君の大ファンだよ」。

 フェデラーはロッド・レーバー・アリーナで、オーストラリアン・オープン3連覇、総じて7度目の優勝への挑戦を、デニス・イストミン(ウズベキスタン)に対する6-3 6-4 6-4の勝利で始めた。

 11月に右足首の手術を受けたナダルは、「故障のあとに、ふたたびプレーを始めるというのは非常に難しいものだ」と言った。「僕はそのことをよく知っている」。

 気温が33度にまで上がったこの大会初日に、勝ち進んだほかのグランドスラム大会優勝者の中には、女子の前年度覇者ウォズニアッキ、ハリエット・ダート(イギリス)を6-0 6-0で下したマリア・シャラポワ(ロシア)、アンジェリック・ケルバー(ドイツ)、スティーブンス、ペトラ・クビトバ(チェコ)らがいた。

 この日敗退した中でもっともシードが高かったのは、第9シードのジョン・イズナー(アメリカ)だった。イズナーは47本のエースを決めたが、それでも同国対決の1回戦で、97位のライリー・オペルカ(アメリカ)に6-7(4) 6-7(6) 7-6(4) 6-7(5)で敗れた。

 しかし、この日最大の注目はマレーに注がれていた。彼はコート上での成功だけでなく、コートから離れたところの振る舞いゆえに人気が高かった。

 観客席のあちこちには、イギリスやスコットランドの旗や、彼をサポートするメッセージが書かれたサインが見られた。バウティスタ アグートがコートに入っていったとき、彼は礼儀からくるわずかな拍手で迎えられた。しかしマレーが紹介されたときには、喉から声を振り絞っての歓声が上がり、それに、彼の名前を繰り返し呼ぶコーラスが続いた。

 プレーが始まると、マレーはダッシュしての見事なショットと、トレードマークの俊敏な反応によるリターンで、自分に声援を送り続ける支持者たちを、たびたび喜ばせた。ショットをしくじったり、ボールに届かずポイントを落としたりすると、マレーは、いまや、みなが彼から期待し、また好いてもいる自己叱咤の仕草――口の中でぶつぶつ文句を言い、脚を叩いて自分を責めるおなじみのジェスチャーを見せた。

 マレーが最終的に疲労と、いうまでもなく対戦相手のバウティスタ アグートに屈したとき、アリーナのスピーカーは、「我々は最後まで戦い続けるだろう」という有名なくだりのあるクイーン(イギリスのロックバンド)の歌、『We are the champion』を流した。

 もしこれが本当に終わりだったなら、マレーはまさにそのとおりのことをやったのである。

「僕は構わないさ」とマレーは言った。「あれが僕の最後の試合になったとしても」。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は1回戦を戦い終えたアンディ・マレー(イギリス/左)と対戦相手のロベルト・バウティスタ アグート(スペイン/右)
MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 14: Andy Murray of Great Britain congratulates Roberto Bautista Agut of Spain following their first round match during day one of the 2019 Australian Open at Melbourne Park on January 14, 2019 in Melbourne, Australia. (Photo by Julian Finney/Getty Images)

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