今や世界1位の大坂は、ジャック・ロックの曲『WIN』に乗ってグランドスラムを制覇 [オーストラリアン・オープン]

 今年最初のグランドスラム「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月14~27日/ハードコート)の大会13日目、女子シングルス決勝。

 いかにも21歳の若者らしく、大坂なおみ(日清食品)はトーナメントで最後の試合を戦うためロッド・レーバー・アリーナに足を踏み入れたとき、携帯電話を右手に持ち、両方の耳で音楽を聴いていた。

 彼女がつけていたヘッドフォンは、渦巻く金管楽器の音色、跳ね返るビート、ジェイ・ロックの『WIN』の自信に満ちた歌詞を運んでいた。それは彼女が今大会を通し、そして昨年のUSオープンでもずっと聴いていた、試合前のお決まりの音楽だった。

「君はスコアをキープしたいのかもしれない。勝つ、勝つ、勝つ、勝つ(ラップの歌詞)」

 今現在、それがテニス界でもっとも重要な大会における、大坂の流儀だ。ペトラ・クビトバ(チェコ)に対する7-6(2) 5-7 6-4の勝利を通してのメルボルンパークでの優勝は、大坂に2大会連続となるグランドスラム優勝杯をもたらした。

 そのほんの数時間後に大坂は、彼女の次のゴールは何なのか――答えは、来るハードコートのビッグトーナメントであるインディアンウェルズとマイアミに勝つというものだった――そして4つ連続でグランドスラム大会優勝を果たすための中間地点にいるなどを考えるには、時期尚早であるか否かというようなことについて話していた。

「テニスの世界の今の構造の中では、常に次の大会、次のグランドスラム大会がある。そして私たちは皆、厳しいトレーニングを積み続け、もっともっと勝ち続けたいと思っている」と日本生まれで3歳のときにアメリカに移住した大坂はコメントした。

「だから、自分が満足したかどうかについては確信が持てないわ」

 これほど短い期間にすでにこれほど多くを達成した者にとって、それは性急な話しだ。1年前、大坂は世界ランク72位に過ぎなかったのだから。

 彼女は昨年のUSオープンまで、出場した8つのグランドスラム大会うち7つで3回戦までの段階で敗れていた。唯一の例外は、2018年1月のオーストラリアン・オープンにおける4回戦進出だ。そこまでのところ、それが彼女の最高成績だった。

 そのため、大坂は少し焦り始めていた。

 ところが、今の彼女を見てみるといい。

 彼女は、2014年から2015年にかけて4つのグランドスラムを連続で制したセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)――大坂が昨年9月のUSオープン決勝で倒した選手だ――以来の、2つのグランドスラム大会に連続で勝った女子プレーヤーとなったのである。

 大坂はまたその優勝により、月曜日にWTAランキングが更新される際に、初めて世界1位に浮上することを確実にした。これで彼女は、2010年に20歳でナンバーワンの座に登ったカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)以降でもっとも若い世界1位となる。

 すべては本当にあっという間に起きた、と感じられているのだろうか?

「私にとっては、違うわ。外から見ていれば、あなたたちの観点からいえば、そうなんだろうと思うけど」と大坂は答えた。

「私にとっては、すべての練習、プレーしたすべての試合で、その1年は短いと同時に長いと感じられる。私は、自分がつぎ込んだ努力のすべてを自覚しているわ」

「すべての選手たちが、このレベルにとどまるためにやっている多くの努力と犠牲を知っている。私には、あっという間に起きたとは感じられなかった。ある意味、長く感じられたわ」

 おそらくそうなのだろう。しかし、選手としても競技者としても、彼女の成長は非常に急激なものだった。

 彼女はメルボルンで、3つの3セットマッチに勝った。彼女は3人のトップ10プレーヤーを破った。

 それから、決勝の第2セットで5-3からの3つのマッチポイントをものにし損ねたあとに、彼女がいかにして素早く切り替え、速やかに態勢を立て直すことに成功したかを思い出してほしい。

 それはUSオープンでのセレナに対する決勝で、周囲に渦巻いていたカオスを無視し、試合に集中して見せたのと同じような見事さだった。

「全体的に見れば、この大会は私にとって目を開かされるような、驚くべき発見のあるものだった」と土曜日から日曜日に日付が変わろうとしていたメルボルンパークで大坂は語った。

「私は多くの非常にタフな試合をくぐり抜けた。それらの試合のいくつかで、私は劣勢に立たされていた。それを切り抜けたという事実は、ただ意思の力だけで、私は劣勢を覆して勝つことができるのだということを自分自身に示して見せたのだと思う」(C)AP(テニスマガジン)

※写真は大坂なおみ(日清食品)
MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 26: Naomi Osaka of Japan poses for a photo with the Daphne Akhurst Memorial Cup following victory in her Women's Singles Final match against Petra Kvitova of the Czech Republic during day 13 of the 2019 Australian Open at Melbourne Park on January 26, 2019 in Melbourne, Australia. (Photo by Mark Kolbe/Getty Images)

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