イタリア男子が未来に向けて動き出す----ツアーに続くチャレンジャー、フューチャーズの下部大会が地盤

40年にわたる休眠状態のあと、イタリアの男子テニスはついに女子と同じくらい強くなりつつあるという兆しを見せつつある。

 マルコ・チェッキナートが昨年フレンチ・オープンの準決勝に進出し、グランドスラム大会でベスト4入りした1978年以来のイタリア人男子プレーヤーとなり、事を動かし始めた。ファビオ・フォニーニは先月、準決勝でラファエル・ナダル(スペイン)を倒した末にモンテカルロで優勝を遂げ、マスターズ1000で優勝した最初のイタリア人となった。

 また、マッテオ・ベレッティーニやロレンツォ・ソネゴのような選手たちが、今にもブレイクを果たそうとしており、ロレンツォ・ムゼッティとヤニック・ジンナーのような10代の若手たちはこの国の明るい未来を象徴している。

 これらすべての成功は、今週のイタリア国際における記録的なチケット売り上げに表れていた。イタリア人選手たちの何人かは、5月26日から始まるフレンチ・オープンでいい進撃を見せる可能性を手にしている。

「もう40年もの間、男子はこのレベルに至っていなかった。だから人々は、ただナダルやセレナだけを観に来るのでなく、イタリア人選手たちを応援するために来ているのですよ」とイタリア・テニス協会のアンジェロ・ビナーギ会長はコメントした。

「1万人の観客を集めるのと、1万人のファンを獲得するのは、また別のことです」

「この男子テニスのブームは、『スーパーテニス』の開発に続く女子の黄金の時代で始まったプロセスの中の次のステップなのです」とビナーギ会長は大きな成功をおさめている協会のTVチャンネルについて言及しながら語った。

「フォニーニがモンテカルロで優勝した1分後、私はチケットオフィスに電話したのですが、彼らはすでにチケット売り上げ数が跳ね上がったのを目にしていました」

 ビナーギ会長が口にした女子の黄金時代の産物には、イタリアが2006年から2013年の間に、フランチェスカ・スキアボーネ、フラビア・ペンネッタ、ロベルタ・ビンチ、サラ・エラーニのいるチームで勝ち獲った4つのフェドカップ・タイトルも含まれる。

 スキアボーネ(2010年フレンチ・オープン優勝)、ペンネッタ(2015年USオープン優勝)はグランドスラム・タイトルも勝ち獲り、一方、ビンチ(2015年USオープン準優勝)、エラーニ(2012年フレンチ・オープン準優勝)はグランドスラム大会の決勝に進出した。

 コラド・バラズッティは、これらの勝利をおさめたときのフェドカップ代表チーム監督だった人物で、現在はデビスカップ代表チーム監督でもある。彼はまたフォニーニ個人のコーチでもあり、かつ選手としてデビスカップ優勝を遂げた1976年イタリア代表チームの一員だったこともあり、世代をつなげる絆の役割を果たしていた。

「これは我々コーチの質が向上したおかげによるところが大きいと思います」とバラズッティは見解を述べた。

「我々は選手たちとともに成長しています。そして協会は、コーチとプレーヤーを援助することにより、そこで一役を演じているのです」

 ごく最近、ハンガリアン・オープンで優勝し、ミュンヘンのBMWオープンで決勝に進出するという2週連続の好成績をあげたベレッティーニは火曜日、サッカーの試合のように沸き立つ観客の前で第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)をストレートで倒すという番狂わせをやってのけた。

 ベレッティーニ同様23歳のソネゴは、モンテカルロ・オープンで予選から勝ち上がって準々決勝に進出した。

 ムゼッティは16歳にして今年のオーストラリアン・オープン・ジュニア少年の部で優勝した。そして彼は、イタリアでもっとも将来嘱望される選手ですらない。その呼び名は現在世界ランク263位で17歳のジンナーのためのものだ。

 マスターズシリーズ初試合で、ジンナーは29歳のスティーブ・ジョンソン(アメリカ)にフルセットの戦いの末に挽回勝ちした。この勝利でジンナーは30年前のゴラン・イバニセビッチ(クロアチア)以降で、イタリア国際で試合に勝った最年少プレーヤーとなった。

「彼は逸材だ」とジンナーのコーチを務めるリカルド・ピアッティは言う。

「私は多くの選手たちをコーチしてきたが、彼は間違いなく私が目にしてきた中で最高の才能のひとりだ」とAP通信に語ったピアッティは、ジンナーは世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)、彼がコーチしてトップ10に導いたリシャール・ガスケ(フランス)に類似したポテンシャルを持っていると言い添えた。

「しかし、私たちは彼に成長するための時間を与えなければならない」

 ピアッティは、母国選手の成功はイタリアとその周辺で行われているプロツアーの一段下のレベルの大会、チャレンジャーやフューチャーズの大会の増加のおかげであると考えている(※2018年は両カテゴリーを合わせて44大会開催)。

 現在12位のフォニーニは、1979年のバラズッティ以来となるトップ10のイタリア人プレーヤーになるまであと一歩と迫っている。

「ファビオは以前からずっと才能あふれる選手だった。そして、いま彼はもうひとつの構成要素を手に入れた。彼は家族にグランドスラム・チャンピオンを擁しているんだ」

 ピアッティは、フォニーニの妻である ペンネッタを指してこう言った。

「フラビアは彼を理解し、サポートし、励ましている。これは間違いなく実りとなる状況だよ」

 フォニーニとほかのイタリア人選手たちは今、1976年のアドリアーノ・パナッタ以来となるイタリア国際のイタリア人優勝者になることを目指している。

「僕はここに、より大きな自信とともにやって来た。それは過去数年の僕に欠けていたものだ」とフォニーニはコメントした。彼はまた、カッとなりやすく起伏の激しい気性でも知られている。

「僕は以前より少し落ち着きがある。モンテカルロのような大きな大会で優勝したことで、より気持ち的に楽になったよ」

 イタリア人選手の台頭は、また同国にふたつの重要大会が加えられたのと時を同じくして起きた。

 シーズン末に行われる世界最高峰の21歳以下の選手のための大会である「Next Gen ATPファイナルズ」は2017年以来、ミラノで開催されている。そして現在イギリス・ロンドンで行われているシーズン末のトップ8対決「ATPファイナルズ」が2021年から2025年までイタリア・トリノで行われることが決まったのだ。

「これは、イタリアですべてを変えると思いますよ」と高名なコーチであるニック・ボロテリー氏はローマでこう言った。

「3、4人の優秀な若手がいると、そのことがほかの若手にインスピレーションを与え、事が進み続けるんだ」

 トリノが開催大会リストにATPファイナルズを加えたとき、ビナーギ会長は2021年から始まるこの大会に少なくともひとり、イタリア人選手が出場することを期待すると述べた。

「私たちの国には、そこに至り得る位置に立つ選手たちがいます」とバラズッティは後押しした。

「できない理由はどこにもありません」

(APライター◎アンドリュー・ダンプ/編集◎テニスマガジン)

※写真は5月11日から始まったBNLイタリア国際の4日目の会場の様子
ROME, ITALY - MAY 14: A general view of courts three and four with Grandstand court in the background as Frances Tiafoe of the United States plays against Joao Sousa of Portugal in their first round match during day three of the International BNL d'Italia at Foro Italico on May 14, 2019 in Rome, Italy. (Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

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