マイケル・チャン(アメリカ)がフレンチ・オープン史上もっとも有名なアンダーサーブを打った30年後、ある者たちに眉をひそめさせるその戦略がテニス界に戻ってきた。

 今年ふたつ目のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月26日~6月9日/クレーコート)の男子シングルス2回戦で、前年の準優勝者で第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)がアレクサンダー・ブブリク(カザフスタン)を6-3 6-7(6) 6-3 7-5で下して3回戦に駒を進めた。

 この試合でブブリクはティームに対して3度このサーブを使い、そのうち2ポイントを奪った。

 今年2月のメキシコ・アカプルコで、ニック・キリオス(オーストラリア)がこの戦術を使うことでラファエル・ナダル(スペイン)を煩わせ、多くの注目を引き付けることに成功していた。

 そしてここに、ティームとナダルの共通点がある。ふたりともがサービスをリターンする際に、ベースラインよりかなり後ろに立つ傾向があるのだ。このことが、事実上ドロップショットであるソフトなアンダーサーブに対して彼らを特別に無防備にしているのである。

 ナダルはこれをやられたとき、かなり気分を害して怒っていたが、ティームは戦略の有効性を認めていた。

「正直言って、ベースラインよりずっと後ろに立つ我々のような選手達に対してはよい選択肢だよ」とティームは4セットでブブリクを倒したあとにこう言っていた。

「別に悪いことでもなんでもない。僕には、それに対処する準備ができていた」

 ショットの多彩さで知られるブブリクは、第1セットで1-4と劣勢に立たされていたときに最初のアンダーサーブを試みた。

 あるファーストサーブをミスしたあと、彼はティームがベースラインの後方、ほとんど後ろの壁の近くまで下がっていることに気付いた。ブブリクは、いつも通りボールを2度バウンドさせた。それから普通のサービスを打つときのように上空にトスアップする代わりに、ただ素早くボールを手から落とし、それをセンター付近へと柔らかに打った。

 ボールはラインの上に落ち、非常にソフトに打たれていたため、バウンドしてすぐに土の上に向かった。ティームはそれを何とかして拾うために前方に向けダッシュしなければならなかった。おかげでコートに大きなオープンスペースができて、ブブリクはバックハンドでクロスのパッシングショットを決めたのである。

 それは1989年、脚にケイレンをおこした17歳のチャンがテニス史上もっとも若いグランドスラム・チャンピオンになる過程で、イワン・レンドル(アメリカ)に対する4回戦の最終セットでやってのけたのと似通った結果だった。

 世界ランク91位のブブリクは、ティーム対する試合の終盤にもう1本のアンダーサーブでもう1ポイントを奪った。しかし、ブブリクが3度目のトライをしたときにはティームがすぐに気付き、完璧なドロップショットのウィナーでそれに応えた。

「少なくとも、彼はサービスエースは奪えなかったよ」とティームは試合後にコメントした。

「ある選手は、それをかなりうまくやってのける。彼(ブブリク)、キリオス…こういった選手たちに対する際には、ときどきリターンするときに前方にダッシュする準備ができていないといけない」

 チャンの決死の試みが受けたほど騒々しい喝采はなかったものの、フィリップ・シャトリエ・コートの観客たちはブブリクのショットの選択にそこそこの拍手を送った。

 ティームは次の3回戦で、パブロ・クエバス(ウルグアイ)と対戦する。クエバスはかつて一度、13度のダブルフォールトを犯し、マッチポイントを凌がなければならなかったときにアンダーサーブを使ったことがあった。

「あれはセカンドサーブだった。僕はまたもダブルフォールトを犯したくなかったんだよ」とクエバスはそのときのことを振り返った。

「ポイントを取ることを考えるという以上に、僕は『もうサーブをミスりたくない』と考えていた。だからアンダーサーブを打ったんだ。そして最終的に、その試合に勝つことになったんだよ」

 フレンチ・オープンの3回戦で、ティームに対してまたもアンダーサーブが出るだろうか? 

「あらかじめ発表しない方がいいね」とクエバスは答えた。

「いや、でも僕は普通のサービスがよりよく機能する方がいいよ」(C)AP(テニスマガジン)

※写真はドミニク・ティーム(オーストリア)
PARIS, FRANCE - MAY 30: Dominic Thiem of Austria plays a backhand during his mens singles second round match against Alexander Bublik of Kazakhstan during Day five of the 2019 French Open at Roland Garros on May 30, 2019 in Paris, France. (Photo by Adam Pretty/Getty Images)

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