今年ふたつ目のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月26日~6月9日/クレーコート)の女子シングルス2回戦。

  大坂なおみ(日清食品)はある打ちそこないのショットのあと、「オーマイゴッド!」と叫んだ。彼女は何かを口ずさみ、祈っているかのように手を合わせた。多くの深いため息、大げさに目をくるりと回すしぐさもあった。

 フレンチ・オープンでまたもひどいスタートを切った世界ナンバーワンの大坂は、フラストレーションを隠そうとはしなかった。

 しかし終盤近くにちょっとしたへまを犯したときにも、大坂はへこたれなかった。その、最終的にグランドスラム大会における連続16試合目の勝利を決める過程で、彼女は決して自分を負けたままにさせなかったグラウンドストロークとガッツをもって、ふたたび勝者となったのである。

 その木曜日、第1シードの大坂は元世界ランク1位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)に対して第1セットを落とし、第2セットでも先にブレークされて劣勢に立たされていた。

 しかしそこから挽回し、見ごたえある戦いを4-6 7-5 6-3で制することで、彼女は3大会連続となるグランドスラム制覇の可能性を存続させたのである。

「私は“最後までいけば勝てる”という考え方を持っている。もし誰かを倒さなければいけないなら、自分はそうする能力を持っていると感じている」と大坂は語った。

「だから恐らく、最後の瞬間まで待つべきではないのかもしれない」

 恐らく。

 1回戦での大坂はただ最初のセットを奪われただけでなく、0-6というスコアでそれを落とした。

 今回――それはセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が予選勝者の奈良くるみ(安藤証券)を6-3 6-2で問題なく下し、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)もまたストレートで勝った日だったのだが――大坂はアザレンカに対して最初の4ゲームを落とし、この試合最初の7本のアンフォーストエラーを自分ひとりで築いてしまった。

「第1セットで、彼女は技術的に私を叩きのめしていたわ」と大坂は振り返った。

「私はただ、ポジティブな気持ちを保つための方法を見つけようと努め続けていた」

 決してベースラインから離れた位置に立とうとしなかったアザレンカは、大坂のバックハンド側を狙いながら、深く、攻撃的なストロークでポイントの主導権を握ろうとしていた。

「私は、非常に賢明なプレーをしていた。本当に正しいところを突いていたわ」とアザレンカは試合後に語った。

「私はやるべきすべてをきっちりやっていた。そして何よりいい動きをし、彼女を後ろに押しとどめていた」

 アザレンカはテニス界最大の舞台でどのようにパフォーマンスすべきかについて、かなりよく知っている選手だ。彼女はオーストラリアン・オープンで2度優勝し、USオープンでは2度決勝に至り、2013年にウインブルドンとフレンチ・オープンの双方で準決勝に進出していた。

 しかしながら彼女は過去数シーズンにわたり、妊娠、出産と息子の養育権に関わる戦いにとられた時間のため、現在世界43位に位置している。

 そんな訳で、才能と屈強さという意味でグランドスラム大会終盤での名勝負となり得たものは、ときどき小雨の降る肌寒い気候の中、ロラン・ギャロスの1週目に行われることになったのだった。

 15本のラリーを終わらせるフォアハンドクロスのウィナーを放つためダッシュしたとき、アザレンカは77分のプレーのあとに第2セット4-2とリードしていた。ふたりはそこから、さらに1時間半ほどプレーを続けた。アザレンカは間違いなく、より優位に立つチャンスを手にしていた。

 例えば彼女は5-2とリードを広げて自分のサービスゲームを迎えるためのブレークポイントを握ったのだが、次のポイントでフォアハンドをネットにかけてしまった。彼女は3度に渡って5-3リードまであと1ポイントというところまでこぎつけたのだが、このゲーム2度目のダブルフォールトによってブレークを許してしまった。

 終盤に揺らいだのは、アザレンカのサービスだった。また、大坂の一流のリターン力も、11ゲームのうち9ゲームをつかんだカギとなる追い上げの時間帯に大きく貢献していた。

「いうまでもなく、彼女は大いに自信をもっている」とアザレンカはコメントした。

 9月にUSオープンを、1月にはオーストラリアン・オープンを制し、最初の3つのグランドスラム・トロフィーを連続で獲った史上初の女性になることを目指しているのだから、彼女は自信を持ってしかるべきだ。

「彼女はすごくパワフルだわ。爆発力がある」とアザレンカは続けた。

「彼女のショットはかなり重い。両方のサイドから、ほぼ同等にハードヒットすることができる。サービスもパワフルで、安定している。それを考えれば、彼女は今いる場所にいるに値しているのよ」

 それはすべて事実だ。そしてそれゆえにいっそう、試合に臨む姿勢を表現した大坂の言葉は興味をそそった。

「今日、私は自分がチャレンジャーだと感じていたわ」と大坂は明かした。

「彼女が以前、ここでベスト4に進出していることは知っている。だから言うまでもなく、彼女はここで私よりずっと豊かな経験を誇っていることになるわ」

 大坂はこれまで1度もパリで3回戦以上に勝ち進んだことがないのだが、昨年までクレーコートでは9勝11敗だったにも関わらず、2019年にはこの遅いサーフェスで9勝1敗の戦績を挙げている。

「彼女は私はより前にグランドスラム大会で何度も優勝し、ナンバーワンだった選手なのよ。私はまだ、こういったことでは新顔なの」

 新顔かもしれないが、彼女は間違いなく上手くやっている。

(APライター◎ハワード・フェンドリック/編集◎テニスマガジン)

※写真はオンコートインタビューを受ける大坂なおみ(日清食品/左)
撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU

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