ティームにロラン・ギャロス優勝のときがきた? 彼のコーチはそう考える [フレンチ・オープン]
今年ふたつ目のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月26日~6月9日/クレーコート)の男子シングルス3回戦。
ドミニク・ティーム(オーストリア)は今、たったひとつのことを望んでいる。それは、ロラン・ギャロス決勝に至った昨年よりも、一歩先まで進むことだ。
「ドミニクは、間違いなく、いつの日かフレンチ・オープンに優勝する可能性を擁している」と彼のコーチを務めるニコラス・マスー(チリ)はあるインタビューの中で述べた。
「それが今年起こるよう祈っている」
3試合連続で1セットを落としはしたが、第4シードのティームはパブロ・クエバス(ウルグアイ)に対して6-3 4-6 6-2 7-5の勝利を挙げて4回戦に進出する過程で、より華々しく、彼の威圧的クレーコートテニスの輝きを見せた。
「これは、ここまでで最良の試合だった」とティームは試合を振り返った。
「まだ完璧には程遠いが、今大会のここまでではベストだった」
準々決勝への切符をかけ、ティームは第14シードのガエル・モンフィス(フランス)と対戦する。恐らくそこで、対戦相手への一方的な応援に直面することになる。
そのほかの試合では、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)、第5シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、第6シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)、第8シードのフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)、第9シードのファビオ・フォニーニ(イタリア)、第10シードのカレン・ハチャノフ(ロシア)、第24シードのスタン・ワウリンカ(スイス)、ヤン レナード・ストルフ(ドイツ)が16強入りを決めた。
4回戦では、ジョコビッチがストルフと、ズベレフがフォニーニと、チチパスがワウリンカと、デル ポトロはハチャノフと対戦する。
前日には第2シードのナダル、第3シードのフェデラー、第7シードの錦織圭(日清食品)が勝ち上がっており、豪華な対戦が目白押しだ。グランドスラム大会でトップ10シードの全員が4回戦に進出したのは、1970年オーストラリアン・オープン以来のことなのである。
マスーがティームのテニスを見るとき、ちょっとばかり鏡を見ているように感じられるはずだ。マスーは2004年アテネ五輪のシングルスとダブルスの双方で金メダルを獲得したときに、同じようなプレースタイルで戦っていた。
彼らはワイドに逃げていくパワフルなキックサーブ、重いトップスピンを使い、バックハンドを駆使し、コート中を走りまわる。
「ドミニクが現在やっていることの多くを、何年も前に僕もやっていたんだ」とマスーは語った。彼は今年から、ティームのコーチとして働き始めた。
「同じ考えだ。だから彼が何を欲しているかよくわかる」
3月のインディアンウェルズでティームをマスターズ初制覇に導いたマスーは、彼のテニスにすぐさまインパクトを与えた。それまでティームの最良の成績がクレーコートで挙げられていたことを考えると、これは少し驚きでもあった。
2016年と17年にティームはフレンチ・オープン準決勝に進出し、昨年は決勝でラファエル・ナダル(スペイン)に敗れた。彼は、ロラン・ギャロスで11度優勝したクレーの王者ナダルに、他の大会で4度勝っている。
教え子を取り巻く期待を、マスーはよく理解している。
「過去の成績を鑑みれば、人々がドミニクの名を優勝候補の一角に挙げるのは当然のことだ」とマスーはコメントした。
ティーム本人は、2011年にジュニアの部でも決勝に進出していたパリのこの大会で、かなり心地よさを感じるようになってきている。
「8年前にジュニアで決勝に進出したとき、僕はこの大会と恋に落ちたんだ」とティームはクエバスを倒したあとに観客たちに向かってこう言った。
フランス人テニスプレーヤーのクリスティーナ・ムラデノビッチと付き合っているティームは、それからあまりうまく話せないことを詫びながら、フランス語でいくつかの言葉を言ってスザンヌ・ランラン・コートの観客たちを楽しませた。
25歳のティームには、学ぶための時間がまだまだたくさんある。
「25歳ということは、まだキャリアの半分にも至っていない」とマスーは言った。
「よいことは、ドミニクにはまだ時間があるってことだ」
すでに世界ランク4位のティ―ムの前にいるのは、32歳のジョコビッチとナダル、そして37歳のロジャー・フェデラー(スイス)だけだ。
「彼は、自分がいつの日か世界ナンバーワンになるチャンスを擁していると知っている」とマスーは教え子について語った。
「いつかはわからない。もしかするともうすぐかもしれないし、もしかするともっとあとかもしれない。でも彼は、そのために努力を積んでいる」
パリでのトロフィが実現すれば、それは頂点に向けての大きな一歩になるだろう。(C)AP(テニスマガジン)
※写真はドミニク・ティーム(オーストリア)
撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU
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