セレナが大坂に続き、パリに早めのさよならを [フレンチ・オープン]

今年ふたつ目のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月26日~6月9日/クレーコート)の女子シングルス3回戦。

 セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が凝視していたのは、フレンチ・オープン3回戦で直面した厳しい劣勢だったのかもしれないし、あるいは20歳のソフィア・ケニン(アメリカ)がラインジャッジを疑ったそのやり方だったのかもしれない。

 いずれにせよ、セレナが3本のサービスエースを決めて挽回劇をスタートさせようとしていたとき、彼女はそれらのビッグサーブのあとにかなりの激しさで相手を睨みつけていた。

 自分を駆り立てるためか、ケニンを威嚇するためかは定かではない。いずれにせよ、それは機能しなかった。

 初めから終りまで押され気味だった第10シードのセレナは世界ランク35位のケニンに2-6 5-7で敗れ、ここ5年のグランドスラム大会でもっとも早期の敗退を喫して24勝目となるグランドスラム・タイトルへの挑戦を早くも終わらせてしまった。

「特に第1セット、彼女は本当にラインぎりぎりにボールを打ってきた。もう長いこと、こんな相手とはプレーしていなかったわ」と37歳のセレナは試合後に語った。

「今日の私はただ、信じられないようなプレーをしている選手を目にしたのよ」

 これはわずか1時間ほどの間に起きた、この日2つ目の大きな驚きだった。その少し前に、世界1位の大坂なおみ(日清食品)が同42位のカテリーナ・シニアコバ(チェコ)に4-6 2-6で敗れていたのだ。

 この敗戦で、大坂のグランドスラム大会での連勝は「16」で終止符が打たれた。彼女は決勝でセレナを倒した9月のUSオープンと、1月のオーストラリアン・オープンで優勝していたのである。

 今大会での大坂は、グランドスラム大会での3連続優勝に挑戦中だった。最後にそれをやってのけたのは、2014年から15年にかけて4大会連続優勝したセレナだ。奇妙なことに、この驚きの疾走はフレンチ・オープンでの2回戦負け、ウインブルドンで3回戦負けに続いて起きていた。

 この彼女にしては早すぎる敗退以降、セレナは出場したグランドスラム14大会のうち6つで優勝し、今ではグランドスラム大会シングルス優勝回数「22」というシュテフィ・グラフ(ドイツ)の記録を追い抜いている。

 現在優勝回数「23」のセレナは、マーガレット・コート(オーストラリア)の持つ全時代を通しての史上最多優勝回数まで、あと1勝と迫っているのだ。コートは、アマ時代とオープン化以降の双方でプレーしていた。

「セレナは本当にタフな選手だわ。私はまだ、さっき起きたことをはっきりと飲み込めないでいる」ケニンは試合を勝利で終えて両手で顔を覆った1時間後にこう言った。

「彼女は真のチャンピオンであり、インスピレーションよ」

 モスクワで生まれたケニンは、流暢にロシア語を話す。彼女の家族は、彼女がまだ赤ん坊のときにニューヨークに移り住んだ。そして彼女は今、フロリダに拠点を置いている。

「アメリカ人であることを誇りに思うわ」とケニンはいう。彼女は記者会見に、青いフェドカップのアメリカ代表チームの帽子をかぶって現れた。

「私にとってよりよい生活を得るため、私たち一家はアメリカに移民した。それは素晴らしいことだったと思う」

 20歳にして、彼女はキャリア9度目のグランドスラム大会をプレーしているところだ。そして彼女は今、初のグランドスラム大会4回戦に駒を進めた。彼女はそこで、第8シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)と対戦する。

 そのほかの試合では、ディフェンディング・チャンピオンで第3シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)、第14シードのマディソン・キーズ(アメリカ)、アマンダ・アニシモワ(アメリカ)、イガ・シフィオンテク(ポーランド)、予選勝者のアリョーナ・ボルソバ(スペイン)が16強入りを決めた。

 4回戦では、ハレプが前日に18歳の誕生日を迎えたばかりのシフィオンテクと、キーズがシニアコバと、17歳のアニシモワはボルソバと対戦する。

 妊娠・出産のため2017年から2018年にかけて4つのグランドスラム大会を欠場したセレナは、昨年のフレンチ・オープンでカムバックしたが、胸の筋肉の故障のため4回戦を前に棄権を余儀なくされた。そのあとの彼女は、ウインブルドンとUSオープンで決勝に進出し、今年1月のオーストラリアン・オープンでは準々決勝でマッチポイントを無駄にした末に敗れていた。

 それ以降のセレナは、パリに来る前に4試合しかこなしていなかった。左膝の故障や体調不全のため、2大会で出場を取り消していたのだ。そして、フレンチ・オープン出場を断念することも考えていたのだという。

「結局のところ、来てよかったと思っている」と彼女はコメントした。

「でも今年はここまで、私にとって本当に辛いシーズンだったわ」

 今大会での3回戦進出は満足がいくものかと聞かれたセレナは、当然のごとく満足ではないと答えた。

「3回戦にしか行けないなどと、予想してはいなかったわ」

 彼女のコーチであるパトリック・ムラトグルーは、「わかっているのは、彼女に万全の準備ができていなかったということだ。それは明らかなことだ」と語った。

 セレナはショットをコントロールすることができず、34本ものアンフォーストエラーをおかした。これはケニンの17本のちょうど2倍に当たる。もうひとつのカギとなる統計は、ケニンが10度あったセレナのサービスゲームのうち4つをブレークしたということだった。

 加えてケニンは落ち着きを保ち、コールが正しいか確かめるために繰り返しボールの跡を調べる彼女にブーイングや野次を飛ばすフィリップ・シャトリエ・コートの観客にも、睨むセレナにも、動揺させられることはなかった。

「あのとき、そういうことは気にならなかったわ」とケニンは振り返った。

「私はただ、ボールの跡を調べようという感じだった」

 第2セットでのセレナは1-3ダウンから4-3へと挽回する反撃を見せたが、ケニンはそこで踏ん張り返した。ケニンは5-5から時速164kmのサービスに対してフォアハンドのリターンエースを決め、必要としていた最後のブレークを果たした。

 それから、最後のターニングポイントがあった。サービング・フォー・ザ・マッチのゲームで、ケニンはブレークポイントに直面した。しかしセレナは、自らのミスでそのチャンスを逃してしまう。そして、最後のセレナのミス――バックハンドのアウトだった――が試合に終止符を打ったのだった。

 ケニンは、これまで一度もセレナと対戦したことはなかった。とはいえムラトグルーにテキストメッセージを送り、シーズンオフに練習セッションを組もうとしようとしたことはあったのだという。しかし、それは実現しなかった。

「ええ、彼女とボールを打つ機会を設けたいと思ったの。実現しなかったのだけれど、でも練習で打つより、この勝利のほうがいいわ」とケニンは微笑んだ。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)
PARIS, FRANCE - JUNE 01: Serena Williams of The United States reacts during her ladies singles third round match against Sofia Kenin of The United States during Day seven of the 2019 French Open at Roland Garros on June 01, 2019 in Paris, France. (Photo by Clive Brunskill/Getty Images)

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