今年ふたつ目のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月26日~6月9日/クレーコート)の男子シングルス準決勝。

 ロジャー・フェデラー(スイス)にとって――正直、それはラケットを持つ誰にとってもそうだと言えるが――フレンチ・オープンのレッドクレーにおけるラファエル・ナダル(スペイン)の断固とした優秀さに対処するのは、それだけでも十分難しいことだ。

 強い風にあおられ、これまで他の誰に対しても、他のどこでも、あれほど長くあれほど素晴らしかった第3シードのフェデラーが滅多にいいところを見せられない選手に変身してしまった。そして、そのわずかなよかったプレーも、この金曜日にはまったくもって十分ではなかった。

 時速20kmの風の逆巻くコンディションの中、ナダルはライバルを6-3 6-4 6-2で退けるという形で2011年以来のロラン・ギャロスでのフェデラーとの対戦を素早く片付けた。この勝利により、12度目の優勝を目指すナダルは12回目の決勝へと駒を進めた。

 これはフェデラーにとって、2008年フレンチ・オープン決勝で4ゲームしか取れずにナダルに敗れた試合に次ぎ、グランドスラムで経験したもっとも一方的なスコアでの敗戦だった。

「彼はそのディフェンスの仕方、クレーコートでのプレーの仕方ゆえ、相手を非常に心地の悪い状態に追いやるんだ。彼に近いプレーをする者さえ、ひとりもいはしない」とフェデラーは語った。彼は2015年から今年まで、フレンチ・オープンに出場していなかった。

「彼のようなプレーをする者と練習するために、誰を探しにいけばいいのかもわからない。僕は試合中に、そう考えていたんだ」

 ナダルはこれまで一度もフレンチ・オープンの準決勝で負けたことも、決勝で負けたこともない。そのことを指摘されたとき、彼は「へえ」とでもいうような何気ない様子でこう答えた。

「正直、信じられないことだね」

 彼は一度もロラン・ギャロスでフェデラーに負けたことはなく、ここでの対戦成績を6勝0敗とした。総合の対戦成績でも、ナダルは24勝15敗でリードしている。フェデラーはここ最近の5対戦で勝っていたが、それはすべてハードコートでのことだった。

 ナダルとクレーコートで、ことにフレンチ・オープンで対戦するという任務はまったくの別物だ。彼はそのキャリアを通し、ロラン・ギャロスで92勝2敗の戦績を誇っているのだから。

 日曜日の決勝で第2シードのナダルは、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)と第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)の勝者と対戦する。金曜日のフィリップ・シャトリエ・コートの第2試合だった彼らの試合は、第3セットの途中で雨のために順延となった。

 プレーが中断されたときには、ティームが6-2 3-6 3-1でリードしていた。そしてその45分後に大会オフィシャルは、試合は土曜日に再開されると発表した。これはつまり、どちらが勝つにしろ、その選手は4日連続の試合を強いられることを意味する。そして決勝で、しっかり休んだナダルと対戦することになるのだ。

 ロラン・ギャロスの男子シングルスでトップ4シードが準決勝に進出したのは、2011年以来のことだった。

 第8シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)がノーシードから勝ち上がってきた19歳のマルケタ・ボンドルソバ(チェコ)と対戦する女子決勝では、双方のプレーヤーがグランドスラム大会での初タイトルをかけてぶつかり合うことになる。

 反対にナダルは、グランドスラム大会での18勝目となるタイトルを目指しており、彼より多くのタイトルを獲っているのは、「20」の優勝杯を保持するフェデラーだけだ。

 これ以前の対戦同様、フェデラーを苦しめたのはナダルの左利きの腕から繰り出される重いトップスピン、絶え間なくボールを追い続ける能力だった。通常はストイックなフェデラーさえが、第3セットでブレークされ1-2とされたときには苛立ちのあまりボールを客席に向け打ち込んだほどだったのである。そして勝負は、間もなく終わった。

「彼が深い位置からどのようにプレーし、それからどのようにして跳ね返るようにベースラインから前後に動くことができるかは驚くべきだ」とフェデラーはライバルを称賛した。

「僕の意見では、僕は最初の2セットでそれほどお粗末なプレーをしていた訳ではなかった。ラファは違いを生み出すために必要な資質を持ち出してこなければならなかったはずで、違いはそこでのパッシングショットや難しいボールの返球だった」

 実際、ナダルの反射神経はもちろん、そのパスや返球能力はこの世のものとは思えなかった。

 彼がダブルスのアレーを超えてコートの右サイドにスライドし、精一杯体を伸ばして返すのが不可能なように見えたボールをバックハンド返球してから今度は左側にダッシュし、あっけにとられるほど正確でフェデラーのリーチの外を飛ぶフォアハンドをライン上に打ち込んだのは1度や2度ではなかった。そしてナダルが、ポイントを取るや握ったこぶしを突き上げ「バモス!」と叫んだのも1度や2度ではなかった。

 風は歯止めが効かないほど強く、ベースラインの後ろのシートを引きはがしたほどだった。それは双方のプレーヤーの目に、コートから舞い上がる土ぼこりを打ち付けた。あまりにそんなだったので、フェデラーが砂場で遊んでいるようだったとジョークを言ったほどだった。また小雨も降り、気温は15度程度しかなかった。

 これは2020年フレンチ・オープンまでには設置されているはずの、開閉式屋根を切望させるに十分な状況だった。

 ナダルでさえが、このコンディションを「本当に大変で、やりくりするのが難しかった」と表現した。

「ただただ、難しかったよ」とフェデラーは言った。

「自分には何がどれくらいできるのか、何ができないのか見定めようと努めていた。よりフラットに打つのか、よりスピンをかけるのか? ボールをコートに入れ続けているか? 何か思い切ってやってみるのか?」

 攻撃的なネットダッシュをするスタイルのフェデラーは、最初の5人の対戦相手に対して総じて4度しかサービスブレークを許さなかった。しかしフェデラーは、この日の天敵に対してより躊躇いがあり、ナダルは13回あったリターンゲームで6度ブレークに成功していた。

 37歳のフェデラーは、彼の名前を呼び続ける観客たちのコーラスに送られながらコートから立ち去った。

 彼は歩きながら、右手を上げて素早く手を振った――もしかすると、これが最後かもしれない。彼は2016年に背中の故障で欠場し、それから続く2年では、グラスコートとハードコートのシーズンに備えるためにクレーコートシーズン全体を丸々スキップしていた。

「これほど最後の方まで勝ち上がれたこと、大会を通してこれだけいいプレーができたことに自分でも驚いた」とフェデラーはコメントした。

「来年? 他の大会同様、分からないよ。まあ何が起こるか見てみよう」

 この試合はナダルにとって、ここ最近の復活劇における最新の非の打ちどころのないパフォーマンスだった。彼は2019年、ひとつもタイトルを獲れないまま5月に至った。それはここ15年で最悪のシーズン序盤だったのだ。

 しかし、33歳のナダルは先月のイタリア国際で調子を取り戻し始め、決勝でジョコビッチを破って優勝していた。そんな訳でパリでは、彼は毎年のスタンダードに戻っていた。

「彼は毎週毎週、プレーの調子を上げているよ」とナダルのコーチを務めるカルロス・モヤ(スペイン)は教え子について語った。モヤは自身、1998年フレンチ・オープン優勝者だった人物だ。

「彼は今現在とてもいいプレーをしており、それが彼のメインゴールなのさ。ロランギャロスがね」

 パリでの12回目のタイトルをつかむまで、残るはあと1勝だ。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は準決勝で対戦したラファエル・ナダル(スペイン/奥)とロジャー・フェデラー(スイス/手前)
PARIS, FRANCE - JUNE 07: Roger Federer of Switzerland plays a backhand during his mens singles semi-final match against Rafael Nadal of Spain during Day thirteen of the 2019 French Open at Roland Garros on June 07, 2019 in Paris, France. (Photo by Julian Finney/Getty Images)

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