セレナはウインブルドンに向けて準備万端「どうやってプレーするかはわかっている」

今年3大会目のグランドスラム「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦7月1~14日/グラスコート)。

 セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が来たる2週間に、オールイングランド・クラブで何ができるのかを正確に知るのは難しい。その一方で、部分的には故障した左膝のために今季のセレナには試合数や練習時間が不足しているのは事実だ。それは6月1日、彼女の直近の参加大会だったフレンチ・オープンの3回戦で敗れたときに本人が言及していた要因だった。

 彼女は2019年、ここまでのところツアーレベルで12試合しかプレーしていない。ウインブルドンに出場する他の127人の女性の中で、彼女より試合数が少ない選手は4人だけだ。105人は少なくとも、彼女の2倍の試合数をこなしている。

「よりよい感じを覚えている」とセレナが明かした。コーチのパトリック・ムラトグルーが、セレナは「もう痛みを感じていない」と明言した土曜日にさえ、彼女は「私はいい1週間半を送ったわ」と言ってから、くすくす笑った。

 グランドスラム大会に向け準備を整えようとするのに、これは理想的な練習時間とは言い難い。その一方で、セレナは苦笑を浮かべながら、「どうやってテニスをプレーするかは知っているわ」と自信を垣間見せた。

 そう、もちろん彼女は知っている。

 結局のところセレナは、ウインブルドンのグラスコートで7度優勝し、昨年を含めて3度準優勝した実績を持つ選手なのだ。彼女はまた、グランドスラムで「23」のタイトルを保持している。これはプロ化以降の時代において誰よりも多い優勝数であり、全歴史を通してもマーガレット・コート(オーストラリア)の最多記録にたった1タイトル足りないだけだ。

「彼女は今年、成績という意味で通常やっているようなことを何もやっていなかった。オーストラリアでさえ準々決勝と、彼女にしてはかなり早めに敗れた。ここまでの彼女はまだ、ベストのプレーはしていない」とコーチのムラトグルーは見解を示したが、それから多くを語るあるセリフを口にした。

「でも、彼女はセレナなんだ」

「そして、彼女が持っている武器は、おそらく他のどのサーフェスでよりもグラスコートで効力を発揮する」と彼は言い添えた。

 2014年以降のグランドスラム大会でもっとも早期の敗退となったフレンチ・オープンのあと、セレナは医師に会うためパリに残っていた。

 それから通常通り、彼女はグラスコートでの前哨戦をスキップした。セレナは先週の半ばに練習を始め、初日の30分からスタートして、4日目はプラス数時間のジムワークと、次第に練習時間を増やしていった。

「吉報は彼女が今、もう痛みを感じなくなったことだ。ロラン・ギャロスでの彼女は、かなりの痛みを抱えていた。その理由から、大会の準備が難しかった。我々はグランドスラム大会の準備をする代わりに、より痛みに対処しようと努めていたんだ」とムラトグルーはここまでのことを振り返った。

「ここでは、そうではない。我々はロラン・ギャロスの15日後に痛みを除去し、ついに望んでいたやり方で準備をすることができた。少し期間は短かったが、彼女は日に日によくなってきている。このサーフェスは彼女にとって素晴らしい。彼女はもう痛みを感じていない。天国だよ」

 今大会でのセレナは、ゆっくりと核心に入っていくためのチャンスを手にしているかもしれない。彼女の1回戦の対戦相手は、ウインブルドン本戦に初めて出場する予選勝者のジュリア・ガット モンティコーネ(イタリア)だ。そしてその次のラウンドの相手も、また予選勝者となる可能性がある。

 それからは迅速に、より面白い展開になっていくはずだ。セレナは3回戦で、第18シードのユリア・ゲルゲス(ドイツ)に遭遇する可能性がある。ゲルゲスは昨年、彼女の準決勝の相手だった選手だ。

 そこを抜けると前年度覇者のアンジェリック・ケルバー(ドイツ)が待ち受けている可能性がある。そしてそのテストをパスした場合、次の相手は世界1位のアシュリー・バーティ(オーストラリア)かもしれない。そしてここまできても、まだ準々決勝に過ぎないのである。

 実際このクォーター(ドローの4分の1)は、もっとも骨の折れる一角なのだ。

 元ウインブルドン優勝者のガルビネ・ムグルッサ(スペイン)とマリア・シャラポワ(ロシア)がそこにおり、さらにグラスコートで好成績を挙げている第13シードのベリンダ・ベンチッチ(スイス)、第22シードのドナ・ベキッチ(クロアチア)、アリソン・リスク(アメリカ)もいる。

「皆が『死のクォーター』と呼んでいるから、見てみないといけなかった」とベキッチは組み合わせについて話した。

「間違いなく、ドローの中で特に厳しいブロックだわ」

 ムラトグルーはどう受けとっているか?

「他の選手たちにとって、タフだね。私が選手なら、ドローでセレナのいるブロックにはいたくない」と彼はコメントした。

 かなり長いこと、それがテニス界での思潮だった。1年以上の産休を経て復帰した2018年においてさえ、セレナはふたつのグランドスラム大会で決勝に進出したのだ。

「私にとって、セレナが勝たないほうに賭けるのは難しいわ」とグランドスラム大会を18度制し、現在はESPNの解説者として働くクリス・エバート(アメリカ)は語った。

「カムバックしてからのセレナに見られる違いのひとつは、彼女が“通常より1、2ステップ分遅い”ということ。それは、部分的にはフィットネス・レベルのせいだと思うし、またこなしてきた試合数、ちょっぴり自信の問題でもあると思う。でもグラスコートでは…我々はそれが彼女のベストサーフェスであるということを忘れることはできない。それは、パワーがあり、サービスからフリーポイントを取り得る彼女のテニスがもっとも効力を発揮するサーフェスなのよ。彼女を考慮に入れないということは、決してできないと思うわ」

(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※写真は昨年の大会でのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)
LONDON, ENG - JULY 14: Serena Williams (USA) with the runner up trophy after her loss in the women's singles final to Angelique Kerber (GER) on July 14, 2018 at the Wimbledon Championships, played at the AELTC, London, England. (Photo by Cynthia Lum/Icon Sportswire via Getty Images)

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