ジュニア選手の親必見! コリ・ガウフの両親が実践する“ネクストセレナ”の育成方法

13歳でUSオープン・ジュニア準優勝。今年のフレンチ・オープン・ジュニアは14歳5ヵ月で制した。アメリカからとんでもない逸材が登場した。彼女の成長に大きく携わる両親に、その育成方法を聞いた。/『ジュニア選手の親必見! コリ・ガウフの両親が実践する“ネクストセレナ”の育成方法(文◎ポール・ファイン)』【テニスマガジン2018年10月号掲載記事】

久しぶりに登場の予感がする10代チャンピオン

 クリス・エバート、トレーシー・オースチン、ジェニファー・カプリアティなどの早熟の天才少女たちが、70~90年代にかけて私たちを魅了したことは、強烈な印象として頭に残っている。これらの“可愛らしい刺客たち”は、まだ選挙権を与えられない年齢でありながら、グランドスラムやオリンピックの舞台で、年上の選手たちを倒してきた。

 2004年のウインブルドン決勝では、当時17歳のマリア・シャラポワがセレナ・ウイリアムズを倒すサプライズを披露した。その2ヵ月後には、19歳のスベトラーナ・クズネツォワがUSオープンで優勝。だが、それ以降、10代の選手がグランドスラムを制することは現在まで一度もない。

 テニスの専門家たちは、今世紀はもう10代チャンピオンが生まれないと予想している。おそらく、女子テニスはあまりにパワー全盛の時代に突入し、未熟な10代選手がパワフルな“スラッガー”たちを倒すチャンスがなくなっている。エレナ・オスタペンコは、この説が間違っていることを証明しそうになったが、昨年フレンチ・オープンを制したときは、20歳になってから2日が経過していた。

 しかし、新たな才能あふれるジュニア選手が登場した。まるで加速して止められない特急列車のように、2020年にはすべての選手の上を乗り越えていくのではないかと予想される。

 もし、まだ彼女のことを知らないのなら、ここに紹介しよう。14歳5ヵ月のコリ・ガウフは6月に、18歳以下の選手が競うフレンチ・オープン・ジュニアで優勝。“ココ”と呼ばれる少女は、もうひとり将来を嘱望されるアメリカのケイティ・マクナリーとの決勝のチャンピオンシップポイントで驚くべきプレーを見せた。ネット際の攻防で、ココはボールに飛びついてフォアハンドボレーを決め、1-6、6-3、7-6(1)の逆転勝利を飾った。

 7月17日にITFは、ココが2004年に現在のランキングシステムが導入されて以降、14歳4ヵ月での最年少ジュニア世界一になったことを発表した。

2018年フレンチ・オープン・ジュニアを制したコリ・ガウフ

コマーシャルでセレナの子供役を務めた

 ココは6歳でフロリダのデルレイビーチでテニスを初めたときから、セレナとビーナスのウイリアムズ姉妹に憧れてきた。「彼女たちを見て育った。2人の影響で私はテニスを始めたの」と語っている。

 憧れのスターたちと深い親交はないが、セレナとは何度か対面したことがある。4年前、セレナとのCM撮影が初対面だった。そのときココが、セレナの少女時代の役を務めたのだ。もし、36歳になった憧れの選手が引退する前に、プロのツアーで対戦するようなことがあれば、どんなに素晴らしいだろうか! 

 彼女たちには“フランスつながり”もある。パトリック・ムラトグルーはセレナのグランドスラムタイトル23個のうち、10個を獲得した際にコーチを務めていた。彼は3年前、パリ郊外にチャンプ・シード・ファウンデーションのテニスアカデミーを創設。この施設のプログラムは、才能に恵まれた選手を育てるだけでなく、世界の大会に出場できるよう莫大な旅費をまかなうなど、財政面でも選手たちをサポートしている。

 現在、ココはそのアカデミーに属する最年少選手であり、ムラトグルーのお気に入りでもある。「パトリック(・ムラトグルー)が娘に興味があるのか、最初は確信がもてなかった」と振り返るのは、ココの父でコーチでもあるコリーだ。

「彼女はまだ11歳だったから、プロを本気で目指すには若すぎた。それでも彼はココの努力する姿勢や決断力には満足しているようだった。そこから私たちの関係は深いものになっていった。成功するために我々が必要とするものを、すべて手に入るように手配してくれた。彼のおかげで、ココのプレーは格段にレベルアップした。特にクレーコートでの上達は素晴らしいものがある。彼女はもともとハードコートを得意としていたからね」

パトリック・ムラトグルー

13歳の若さでUSオープン・ジュニアを準優勝

 ココは昨年のUSオープン・ジュニアで、ハードコートでの強さを見せつけた。13歳の最年少で出場し、まったく臆することなく戦った。アップセットに次ぐアップセットで年上の選手たちを倒し、USオープン・ジュニアの決勝に進んだ最年少選手となった。だが、より経験が豊富で滑らかなストロークを武器にする16歳のアマンダ・アニシモワ(アメリカ)に、0-6、2-6で敗れた。 

 この大会から翌年のフレンチ・オープン・ジュニアまでの間、ココのプレーで大きく成長した点は、何よりも経験だった。「もっとも大きな違いは、一度メジャー大会で決勝まで勝ち進んだこと」と父コリーは言う。

 13歳という年齢では、2017年3月までITF大会に出場することができなかった。その後はご存じの通り、フレンチ・オープン・ジュニアで優勝するなど、高いレベルでの試合経験を積んだ。それ以前にもプロの大会に出場している。タフな相手との対戦によって成熟し、技術や精神面に加えて、身長も順調に伸びていった。

 今年初めのオーストラリアン・オープン・ジュニアでは1回戦敗退に終わり、落ち込んで怒りを露わにしたが、その敗戦からもしっかり学んでいる。その後はふたたび練習で自分に足りないものを磨き、次の大会ではレベルアップした姿を披露した。

2017年USオープン・ジュニアで優勝を飾ったアマンダ・アニシモワ(左)と準優勝に終わったココ

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