Reial Club de Tennis Barcelona
本来、クレーコートシーズンにアップする予定だった昨年の記事です。夏本番直前になりましたので、遅ればせながら掲載させていただきます。
バルセロナ・オープン・バンコ・サバデルの会場となる Reial Club de Tennis Barcelona(R.C.T Barcelona)は、1899年に設立されたスペインを代表する最高の名門テニスクラブです。スペインを代表する多くの選手もメンバーに名を連ねており、あのナダルもメンバーの一人です。入会には厳重な審査があり、約3000名のメンバーはテニスだけでなく、フイットネスやスイミング、時には”学習室”で勉強をしたり、ダンスホールでパーティーを楽しんだりもしています。
休日ともなると、この歴史あるクラブを誇りに思う人々がバルセロナだけでなく、スペイン全土や世界から集います。テニスをプレイしないメンバーも来場し、レストランやプールで1日を過ごすというのですから、ヨーロッパのテニス文化の優雅さに驚きます。
クラブハウスの内は、改装を繰り返していますが、100年以上の歴史を感じさせる重厚さが、いたる所に見られます。
前日、サグダラ・ファミリアを観光してきた私は、「この雄大な時間の中で歴史を受け継いでいくことを大切にする事が、スペイン人なのかなあ。その辺りは日本人に似てるなのかも」。などと、とりとめのないことを考えていました。
クラブ内を見学していると、案内役を買って出てくれたティムさんが「どうだい、せっかくだからプレイしないか?」と誘ってくれます。
光栄なことに、No1コートでプレイさせていただくことになりました。
赤茶色の渇いた細かい砂の粒が、スピードを殺し、青く澄み渡った空に、高く高くボールを跳ね上げます。コートの端に残る白い石壁に黄色いボールが美しいコントラストを描きます。
ーーーーーーーなどと、異国の美しさと歴史を満喫していたのもつかの間。本場のレッドクレーのストロークはシニアにはこたえます。
私は高校時代は高校のホームコートがアンツーカだったこともあり、クレーコートは得意なつもりでいました。
“そんなふうに考えていた時期が俺にもありました”
打っても打っても決まらない。抜けない。無理にネットに出れば、パッシングとロブを見送る繰り返し。気がつけばベースラインの上で、ハーフボレーのように力ないボールを返球するのが精いっぱい。
このクラブのセンターコートの名にもなったナダルがベースラインから5m以上下がったポジションからネットまでを縦横無尽に舞う事が、いかに超人的なことか思い知ります。
私はあえなく、20分程度のラリーでダウン。
そんな私にティムさんは問いかけます。
「そろそろ、アップはいいかい?1set にする? 3setにする?」
冗談ではありません。20分間に、1,2本しかミスショットをしないティムさんと、3set プレイするなんてバツゲームです。
これは海外のクラブに行くたびに感じることですが、彼らはシングルスをプレーするのを好みます。
私のようなシニアになると、日本人はダブルスを好む傾向にありますが、海外の方々の多くは年齢にかかわらず、シングルスをゲーム感覚で楽しみます。
この時、相手をしていただいたティムさんは50歳。45歳以上のバルセロナチャンピオンの経歴も持つのですから、上手いはずです。
テニスのプレイ後に、クラブ内にあるレストランでティムさんの奥さんが ensaladilla rusa(ロシア風ポテトサラダ)を「これがバルセロナの名物なのよ!!」と薦めてくれます。
ロシア風なのにスペイン名物? との疑問は湧きましたが、皆が頷いているので、たぶん本当なのでしょう。
パエリアとハモンセーラノと冷えた白ワインと楽しみにしていたのですが、郷に入りては郷にしたがって、次々に出てくる料理に舌鼓を打ちます。
食事の最後に、アルコール度数42%のお酒で乾杯した頃には、だいぶ日も傾きかけていました。
別れ際、ティムさんは爽やかに微笑んで固く握手をし、颯爽とベスパに跨り去って走り去ります。
食事中に奥さんが「うちの旦那はグラスコート、ウインブルドン・クレイジーなのよ」と笑っていたことが、ティムさんが走り去った後にふと頭に浮かびました。
そして、もう一つ。頭に浮かんだこと。
飲酒運転。。。。。
ダメ絶対。
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