○10阿部宏美(筑波大学)[WC] 6-2 6-3 ●15森崎可南子(橋本総業ホールディングス)[Q]
 
「いまいち集中してなかったし、高く上がったボールもドライブボレーに行かなかったし、自分から攻めずに相手がミスしてくれるの待ってただけだし……」
 
 試合を振りかえる言葉や表情は、どう見ても敗者のそれ。ともすると、ふて腐れているようにすら見えるこの19歳が、今しがた6-2 6-3の勝利を手にしたばかりとは、にわかに信じがたいだろう。
 
 確かに阿部宏美(筑波大学)が言うとおり、この日の彼女のプレーはリスクを負わず、結果として守備に追われる場面が多かった。厳重に巻かれたテーピングが示す通り、肩に痛みを抱えていたことも、思うように攻められたかった理由の一端だろう。先週、大学の日本一決定戦で連日単複2試合を戦い、筑波大学に初の日本一をもたらした代償は、決して小さくはなかったようだ。

 この日の勝利に対する阿部の自己評価が極端なまでに低いのは、彼女が大学に進んで以来感じてきた、自身の弱点や課題にも起因している。

 高校でも日本の頂点に立った阿部だが、大学での戦いではここまで、似たパターンで負けることが多いという。それは、相手に緩いボールを打ち続けられ、決めきれないうちに巧みにポイントを奪われる展開。

「やれることが少ないので、前に入りたくてもできない。一緒にラリーしてつきあって……という感じになる」

 この半年間、抱えてきた課題ともどかしさ――。それを改めて突きつけられた一戦だったからこそ、スコア上は快勝だったにも関わらず、阿部の顔に笑みは無かった。

 プロも出場する国際大会でのベスト4は、これが初。その先で対戦するのは、今大会のナンバー1シードで、世界95位のパウラ・バドーサ(スペイン)。既にグランドスラムにも出場する、文字通りのワールドクラスのトップ選手だ。

 「一瞬で終わりますよ」と、来たる一戦の結果をシニカルに予測する阿部だが、常に、言葉とは裏腹の心踊る試合を見せてきた彼女なだけに、期待を抱かずにもいられない。

 「とりあえず走る。いや、走ってもダメかな? やりたいことをやる。それが何かまだ分からないけれど……やってみながら決めます」

 試合の中で彼女が見いだす「やりたいこと」。それこそが、いつも辛い自己採点を、大きく上げる鍵になる。

※写真は阿部宏美(筑波大学)
写真提供◎浜松ウイメンズオープン実行委員会
撮影◎てらおよしのぶ

著者◎内田暁:浜松ウイメンズオープンオフィシャルライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)などがある。


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