○1パウラ・バドーサ(スペイン)[1] 6-2 6-2 ●10阿部宏美(筑波大学)[WC]
 
 今大会の第1シードが、その実力と若い勢いを遺憾なく発揮し、決勝へと駆け上がった。ここまでの4試合すべてでストレート勝利をおさめ、落とした総ゲーム数も僅かに15。長身から打ち下ろすサーブを軸に、スピードと回転を兼備したストロークで、立ちはだかる日本勢を退けてきた。
 
 トップ100の欧州選手が、母国から遠く離れた浜松市のITF2.5万ドル大会に出場するのは、やや異例だとも言える。ただ、「日本食が一番好き」と笑うバルセロナ出身の21歳にとって、それはごく自然な選択だった。テニスのシーズンにおいて秋は、“アジア・シリーズ”の季節である。9月に入ってから、中国と韓国のWTAツアー大会に出場したパウラ・バドーサ(スペイン)は、スペインに帰るよりも、そのままアジアに残りITF大会(ツアーの下部大会郡)に出ることを選んだ。それは、時差やポイント獲得などを考慮した合理的な判断でもあるが、それ以上に「日本に行きたい」との思いが強かったからだった。

 ランキングや実績的には、今大会の出場選手で頭ひとつ抜けている感のある彼女だが、楽な試合など一つも無いという。

「日本の選手たちは、このコート(砂入り人工芝)にも慣れているし、みんな技術はとても高い。ランキングよりも実力のある選手ばかりなので、グランドスラムやツアーで戦うときと同じ集中力で挑んでいる」

 その言葉が社交辞令や謙遜ではないことは、試合中の彼女を見れば一目瞭然だ。準決勝でも、第2セット中盤の第6ゲームで会心のウイナーを決めたとき、裂帛の叫びと気合のガッツポーズが飛び出した。阿部宏美(筑波大学)の緩急を織り交ぜた攻撃と、驚異のフットワークおよびカウンターに、重圧を覚えていたのだろう。だからこそ、このゲームでの彼女は集中力を一段引き上げ、ブレークで主導権を手中におさめる。今大会の台風の目となった大学1年生の阿部だが、トップ100ランカーの本気を引き出すのが精一杯だった。

 かくして阿部を退けたバドーサと、決勝で対戦するのは穂積絵莉(日本住宅ローン)。穂積は正にバドーサが言う、「ランキングよりも実力のある選手」だ。

 上り調子の21歳と、ふたたび上昇気流を掴みつつある25歳。

“世界への登竜門”を謳うにふさわしい、役者揃いの頂上決戦が実現した。

※写真はパウラ・バドーサ(スペイン)
写真提供◎浜松ウイメンズオープン実行委員会
撮影◎てらおよしのぶ

著者◎内田暁:浜松ウイメンズオープンオフィシャルライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)などがある。


This article is a sponsored article by
''.