トップ2シードによるハイレベルな戦いだった。今村の力強いショットに対し、羽澤は切れ味鋭いショットで対抗。第1セットは6-3で今村が奪ったが、第2セットは羽澤が7-5で奪い返した。
同じ慶大の先輩と後輩、手の内はお互いに知り尽くしている。探り合い、駆け引き、そんな心理戦もあったに違いないが、ともに持てる力と技を出しきり、闘志を前面に押し出して戦った。

「大会を通じてやりきれた」と今村
最終セットは第1ゲームで今村がブレークに成功。このワンブレークを守りきって今村が優勝を手に入れた。羽澤は第2セットでそうしたように、ブレークのチャンスを伺っていたが、今村が渾身のプレーで逃げきった。
「負けられなかったし、負けたくなかった」と今村が言う。先輩として、主将としての意地がある。第2セットは終盤にリズムを乱して追いつかれたが、最終セットは「序盤がポイントだと思っていた」。ワンブレークを見事に守り通してのVだった。

オールラウンドなプレーで魅せた羽澤
夏のインカレよりも、「今回のほうがうれしい」と言うのは、単複2冠に加え、決勝で羽澤を倒してからの優勝だからだ。「羽澤の存在があるから頑張れる。大きな存在です」と話すその表情は充実感に満ちあふれていた。
準優勝に終わった羽澤。ストローク戦では相手が一枚上、そこを得意のネットプレーを絡めながら揺さぶりたかったが、最終セットは「下げられて攻めきれなかった」と敗因を述べた。

大会のフィナーレを飾るに相応しい男子決勝だった
それでも「自分の力は出せたと思うので悔いはありません」と口にした。課題でもあるサービスとフォアハンドからの攻撃力が増し、プレーの幅が広がっているのは間違いない。今村同様、羽澤にとっても相手の存在は大きい。「そろそろ(今村に)勝ちたいですね」と雪辱を誓った。
慶大の坂井利彰監督は「いい試合だったし、お互いの成長が見られた試合でした」と目を細め、勝敗を分けたのは「勝負どころでのショットの力強さ。そこは今村のほうが上だったと思います」と話した。
※トップ写真は、優勝を決めた瞬間の今村昌倫(慶大3年)
(取材◎牧野 正 写真◎毛受亮介)