7度に渡り敗戦まで1ポイントと迫ったフェデラーが準決勝進出 [オーストラリアン・オープン]

「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月20日~2月2日/ハードコート)」の大会9日目、男子シングルス準々決勝。
 
 マッチポイントの数がいかにおそろしいものだろうと――彼の対戦相手は7本を手にした――38歳の脚がいかに痛もうと、そのサービスがいかに遅かろうと、彼のグラウンドストロークがいかに的を外していようと、ロジャー・フェデラー(スイス)は決しておとなしく去りはしない。

 フェデラーは変わらずこのような舞台への愛のためにプレーしている。変わらずトロフィーを切望してもいる。自分より10歳若い選手に対し――この日の場合、世界ランク100位のテニス・サングレン(アメリカ)だったが――フェデラーは最後の一息まで戦って“記憶に残る挽回劇”をやってのけ、15回目のオーストラリアン・オープン準決勝進出を決めたのだった。

 試合の大部分でいつもの自分ではないことを示すあらゆるサインを見せていたにも関わらず、フェデラーは非常に長い間、本当にもう終わりであるように見えていたアップダウンの激しいその火曜日の準々決勝で上腕二頭筋をひけらかすハードヒッターのサングレンを6-3 2-6 2-6 7-6(8) 6-3で倒したのである。

「試合が進んでいくにつれ、ふたたび気分がよくなってきてプレッシャーが消え去った」と試合後に20度グランドスラム大会を制した男は明かした。彼は、鼠径部の筋肉の痛みに煩わされていたことにも言及した。「僕はこの試合に勝つに値しなかったかもしれないが、今、ここに立っている。そして言うまでもなく、本当にうれしいよ」。

 彼は次の準決勝で、前年覇者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦する。第2シードのジョコビッチはこの日の相手だった第32シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)と過去9度対戦して全勝しており、圧倒的優位性をもってこの準々決勝に臨み、その下馬評にたがわぬ6-4 6-3 7-6(1)のストレートで相手を圧倒した。

 反対にフェデラー対サングレンは、これ以上は無理というほど劇的だった。

 この試合でのフェデラーは、不敬な言葉について主審と口論をした。第3セットの出だしにメディカル・タイムアウトでコートを離れた彼は、のちにトレーナーを呼んで右脚にマッサージを受けた。そして何より、28歳のサングレンとの緊迫した戦いの中に身を置いていた。

 一度もグランドスラム大会の準決勝に進んだことがないサングレンは、1991年に114位でベスト4に至ったパトリック・マッケンロー(アメリカ/ジョン・マッケンローの弟)以降でもっともランキングの低い準決勝進出者になろうと努めているところだった。

 サングレンは劇的な番狂わせまでどれほど迫っていたことかーーそして長年低いレベルのツアーで苦労を重ねてきた末にフェデラーに対するこの舞台に立ったことに胸躍らせていた男にとって、どれほど辛い敗戦だったかーーは、想像に難くない。

 フェデラーのサービスの平均速度が時速180kmから169kmに落ち、アンフォーストエラーが30本におよぶ中、第2、第3セットを走り抜けたサングレンは、第4セットでも5-4とリードしていた。フェデラーのサービスゲームで、サングレンはそこでことを終わらせキャリア最高の勝利を決める3つのチャンスを手にしたのだ。しかし最初のチャンスで彼はバックハンドをネットにかけ、2度目はフォアハンドをサイドアウトし、3度目のマッチポイントではまたもフォアハンドをネットにかけてしまった。

 勝負はタイブレークにもつれ込み、そこで3-3のエンドチェンジの際に走り抜けようとしたボールボーイがベンチ付近でかがんだサングレンのふくらはぎにぶつかってしまうという奇妙な一件も起きた。しかし続く3ポイントを取ってまたもマッチポイントをつかんだことから見て、これはサングレンを煩わせはしなかったようだ。

 こうしてまたも勝利まで1ポイントと迫ったサングレンだったが、彼は6-3からも、6-4からも、6-5からも、そして7-6からも、ケリをつけることができなかった。

テニス・サングレン(アメリカ)(撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU)

「ときに、運に恵まれることも必要だ」とフェデラーはコメントした。「なぜってあれらの7本のマッチポイントでは、ことをコントロール下に置くことはできない。彼がビッグショットを打ち込んでこないよう祈らなければならなかったよ」。

 そのセットを取って勝負を第5セットにもちこむためのフェデラー自身の2度目のチャンスで、サングレンはベースライン近くに着地するボールを放った。フェデラーはアウトだと思ったようだが――決して出なかったコールを待って、彼は線審のほうに顔を向けた――それでも守備的なやり方でそのボールを軽くはたき返し、次のサングレンのスマッシュはアウトとなった。

 フェデラーは頭の上で右の人差し指を動かし、そこから正しい軌道に乗った。彼は敗戦に向けて落ち込んでいくように見えていたときから約1時間が経った頃、試合を時速191kmのサービスのウィナーで締めくくった。

 オーストラリアン・オープンで6度優勝した実績を持つフェデラーは、ここで54位以下の選手に負けたことは一度もなかった。しかしATPツアーレベルの試合が500に満たないサングレンは素晴らしいプレーをし、サービスエースの数では27本対5本、ウィナー数の合計でも73対44と元王者を凌いだ。彼にはただ、重要な7ポイントを取る力だけが欠けていたのだ。

 彼はそのマッチポイントを例外に必要としていたすべてのポイントを取り、獲得ポイント数では161対160とフェデラーの上を行きさえしていた。

 第1セットと第5セット以外ではフェデラーのフットワークは完璧には程遠く、通常フォアハンドやサービスに力を加える下半身の押しがまったくなかった。

 昨年9月のUSオープンにおいて当時78位だったグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)に対する準々決勝での敗戦で彼を煩わせたのは背中上部と首の問題だったが、今回は鼠径部の筋肉に問題が出た。

 今大会で第3シードのフェデラーは、2回戦で倒した41位のフィリップ・クライノビッチ(セルビア)よりランキングの高い選手に当たっていない。フェデラーは3回戦で47位のジョン・ミルマン(オーストラリア)に敗戦まであと2ポイントというところまで追い込まれてから挽回し、第5セットのタイブレークで勝利をもぎ取った。4回戦では67位のマートン・フクソービッチ(ハンガリー)に対し、第1セットを落としていた。

 水曜日には、残りふたつの準々決勝が行われる。世界1位のラファエル・ナダル(スペイン)対第5シードのドミニク・ティーム(オーストリア)、第7シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)対第15シードのスタン・ワウリンカ(スイス)だ。

(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※トップ写真はロジャー・フェデラー(スイス)(撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU)

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