“アメリカンドリームを生きる”ソフィア・ケニンがグランドスラム初優勝 [オーストラリアン・オープン]
今年最初のグランドスラム「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月20日~2月2日/ハードコート)は大会13日目、女子シングルス決勝。
1987年、オーストラリアン・オープンのチャンピオンとなるソフィア・ケニン(アメリカ)が生まれる11年前、彼女の両親はモスクワを離れてアメリカ・ニューヨークへと渡った。彼らは父のアレックスによれば「世界を見たい。子供のためによりよい未来が欲しかった」がために、ソビエト連邦から脱出してアメリカに住むことを切望していた。
アレックスは当時、英語の授業を受けながらコンピューターの学校に通っていた。彼は夜間に、ラジオによる操車係の指示を理解するのに苦労しながらもカーサービスの運転手として働いた。
「非常に厳しかった」と彼は当時を振り返る。「でも、生き延びる必要があるときに人がやることというのは驚くべきものだ」。
ソフィアが生まれる少し前、家族は祖母と他の親戚が赤ん坊の世話を助けられるようにと短い間ロシアに帰った。数ヵ月後、ケニン一家はニューヨークに戻り、最終的にフロリダのペンブロークパインズに身を落ち着けた。彼が3歳半のソフィアが呼んでいるの見つけたのも、そのフロリダの自宅の私設車道においてだった。
「私は他のおもちゃにはあまり興味を持っていなかった。私はいつも、ボールとラケットで遊んでいたの。だから父は『じゃあプレーしてみようか』と言ったわ。明らかに、私は優れたハンド・アイ・コーディネーションを擁していた。自分が他のプレーヤーとは違うことが見て取れたわ」。
彼女はメルボルン・パークで土曜日の夜が日曜日に変わろうというときに少人数のレポーターたちに囲まれ、積まれたシャンパングラスのすぐ横でこう言った。
「そして人々は、『彼女は本当に特別だわ。彼女には何かがある』と言った。…そして今、私がどこにいるか見てちょうだい」
まったくだ。彼女が誰でどこにいるか、見てみるといい。彼女はグランドスラム優勝杯の持ち主となり、月曜日にWTAランキングが更新されるときには、世界ランク7位――現在アメリカ人女性の中では最高位だ――になることが決まっている。
もっとも重要な瞬間にガッツ溢れるプレーを見せたケニンは、メルボルン・パークでの決勝で最後の4ゲームを連取してグランドスラム大会優勝歴2回のガルビネ・ムグルッサ(スペイン)を4-6 6-2 6-2で破った。
あるカギとなる一連のプレーが、結果を決めた。
第3セット2-2からの自分のサービスゲームで0-40という劣勢に立たされたケニンは、3つのブレークポイントを握られた。そこで彼女はその危機を、見事なやり方で切り抜けた。彼女は続く5ポイントを、すべてウイナーによって連取したのだ。
3ポイント連続で決めたクリーンなグラウンドストロークによるダウン・ザ・ラインで追いついたあとサービスエースを決め、最後はフォアハンドでパスを抜いた。ラリーになったポイントは、いずれも11ショット以上の応酬だった。
「彼女は信じられないような何かをあそこで引き出してきた」とコーチでもある父のアレックスは振り返った。彼は娘のことを、“ソーニャ”と呼んでいる。ソーニャは、ソフィアのロシア語のニックネームだ。
総じて6回あったブレークポイントのうち5つをものにしたケニンは、ムグルッサが手にした12のブレークポイントのうち10本をセーブした。
「特に重要な瞬間に、彼女はウィナーを打ち込んできた」とムグルッサは舌を巻いた。
ムグルッサはケニンが初のグランドスラム大会決勝での感情にうまく対処していたと考えており、ナーバスになっているように見えなかったと話した。しかしながら父アレックスによれば、試合前の娘はナーバスになっていたという。なぜなら「目に涙を浮かべている」のを見たし、「それを抑えようとしていた」からだとのちに明かしていた。
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