インディアンウェルズ延期に、「皆が健康で安全でありますように」とナダル

今週、カリフォルニアの砂漠地帯で始まる予定だったグランドスラム大会に次ぐ格付けのテニストーナメント「BNPパリバ・オ―プン」(男女共催)は、コーチェラ・バレーでコロナウイルス感染者が出たことが確認されたあと、日程変更を余儀なくされた。

 これはここまでのところ、コロナウイルス拡散についての懸念を理由に中止されたもっとも大きなアメリカのスポーツイベントだ。金曜日にはテキサス州オースティンでの有名な音楽・映画祭、サウス・バイ・サウスウエストもキャンセルされた。

 この発表は、すでに多くのプレーヤーが会場にやって来て練習を行っていた日曜日の夜になされた。予選は月曜日に、女子本戦は水曜日に、男子本戦は木曜日に始まる予定だった。

「我々はもうここに来ており、次に何が起こるか判断しかねている」と世界ランク2位のラファエル・ナダル(スペイン)はツイートした。「この状況の中、世界中でこのようなことが起きているのは非常に悲しいことだ。早く当局からの解決策がもたらされるよう願っている。皆が健康で安全でありますように」。

 ロサンゼルスの110マイル東の砂漠地帯の町々は公衆衛生上の緊急事態にあるとリバーサイド郡公衆衛生局は布告し、この中にはATPツアーとWTAツアーが2週間の大会を開催するインディアンウェルズも含まれていた。

 ギャビン・ニューサム州知事は非常事態宣言を発した。カリフォルニア州でのウイルス感染件数は、114件に及ぶと報告されている。

「大勢の人々が集まるこのサイズのイベントを開催することには、リバーサイド郡の公衆衛生にとってあまりに大きなリスクがあります」と南カリフォルニア大学の医学・医用生体工学の教授であるデビッド・アガス博士は危険を訴えた。「大会が強行されることは、ファン、選手、近隣の住民たちのためになりません。我々は皆、手を取り合ってコロナウイルス勃発から地域を守るため尽力しなければなりません」。

 例年45万人もの観客が大会を訪れる。インディアンウェルズは、選手間での人気、ステイタス、獲得できるランキングポイントの高さ、4つのグランドスラム大会の次の格付けとなる1700万ドルという高い賞金額ゆえ、『第5のグランドスラム大会』と異名をとるほど大規模な大会だ。今年の大会には、世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ナダル、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、大坂なおみ(日清食品)、コリ・ガウフ(アメリカ)らが出場を予定していた。また、元世界1位のキム・クライシュテルス(ベルギー)は、この大会でカムバックの過程を続ける予定だった。

「BNPパリバ・オープンが延期されるというニュースを聞いて、すごく悲しんでいる」とガウフはツイッター上でコメントした。「インディアンウェルズでデビューすることをすごく楽しみにしていたの。でも保安は常に優先事項の最上位にくる。安全を祈っている」。

 トーナメントディレクターで元選手のトミー・ハース(ドイツ)は、大会主催者には違う日程で大会を行う準備があり、これから選択肢を模索することになると語った。しかしながらプロテニスの日程は隙間なく組まれており、この砂漠地帯の夏季は暑すぎることで悪名が高い。

「大会を予定通り開催できなくなったことに非常にがっかりしているが、地元の人々、ファン、プレーヤーたち、ボランティア、スポンサー、雇用者、店の販売スタッフ、大会に関わるすべての人々の健康と安全はもっとも重要なことだ」とハースは声明文の中で述べた。

 ウイルスによってもっとも大きなダメージを受けた2ヵ国である中国とイタリアで、より小さないくつかの大会がすでに影響を受けている。今月の後半にインディアンウェルズに続いて、フロリダ州マイアミで行われる「マイアミ・オープン」(男女共催/3月24日〜4月5日)が危険にさらされる可能性もある。その町の非常に大きな音楽祭は、すでにキャンセルされた。今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」は、5月18日から6月7日までフランス・パリで開催される予定になっている。

 インディアンウェルズを延期する決断は、カリフォルニア州疾病予防管理センター、医療専門家の手引きに基づいて下されたと大会オフィシャルは説明した。

「今回の最優先事項である人々の健康と安全のために下されたこの決断を、我々は理解している」とWTAのCEOスティーブ・サイモン氏はプレスリリース上で述べた。「続くほかの大会で何が起きるかを推測するには、まだ時期尚早だ。我々は状況を密に観察している。いずれにせよ、健康と安全は常にもっとも重要視されることになるだろう」。

 観客たちには今年の大会のチケットの払い戻し、あるいは来年の大会のチケットのためのクレジットが提案されている。リバーサイド郡公衆衛生局の責任者によると、この地域でコロナウイルスに感染した最初のケースである人物は、陽性と判定されてから近隣のランチョ・ミラージュにあるアイゼンハワー医療センターで治療を受けているとのことだ。その人物が誰であるかは、秘密保持の規則のため明かされていない。

 また衛生局のオフィシャルは現在、感染の可能性のある周囲の人々の検査を行っており、その人物がどのようにウイルスに感染したのかを調べる調査も進行中だという。

 リバーサイド郡でコロナウイルス感染者が見つかったのは、これが2件目だ。ごく最近、リバーサイド郡出身者がクルーズ船でCOVID-19(コロナウイルス)に感染していると診断された。その人物は現在、北カリフォルニアの医療施設で治療を受けて回復の過程にある。その人物は大型豪華客船ダイヤモンド・プリンセスから下船して以来、まだ家に戻っていなかった。

「こういうことはあり得るということは常に知っていました」とリバーサイド郡公衆衛生局の責任者のひとりであるキャメロン・カイザー博士は言う。「我々は数週間に渡ってプランを立てており、我が郡の地元住民の健康を守るために必要なステップを踏む準備ができています」。

 インディアンウェルズ・テニスガーデンで火曜日の夜にナダルの出演で行われる予定だったチャリティ・イベントはキャンセルされたと大会スポークスマンのマット・バン トゥイネン氏は明かした。ナダルは、BNPパリバ・オープン前年度覇者のドミニク・ティーム(オーストリア)、ダニール・メドベージェフ(ロシア)、マッテオ・ベレッティーニ(イタリア)、スタン・ワウリンカ(スイス)、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、テイラー・フリッツ(アメリカ)とともに、優勝賞金15万ドルのアイゼンハワー・カップに出ることになっていた。

 先週の金曜日に大会オフィシャルは、選手、ファン、スタッフを感染から守るため、大会で行ういくつかの措置を発表していた。ボールパーソンは手袋着用を義務付けられ、コート上で選手のタオルを触ってはいけないことになっていた。また、選手と観客のふれあいのイベントも制限され、ボールパーソンのほかにも会場で食べ物を売るスタッフや会場入り口でチケットを手渡すボランティアも手袋を着用し、会場中に手を洗浄できる250ヵ所の消毒場所が設けられる予定だった。

 インディアンウェルズ周辺では来月に、ほかの大きなスポーツや娯楽イベントが予定されている。LPGAツアーはランチョ・ミラージュで4月2日から5日まで、今年最初の大きな女子のゴルフトーナメント、ANAインスピレーションを予定している。

 また近隣のインディオでのコーチェラ・バレー音楽・芸術祭は4月10〜12日、17〜19日に組まれている。これはふたつの週末にわたり、通常25万人の観客を動員するフェスティバルだ。またカントリー・ミュージックのステージコーチ・フェスティバルは、同じインディオの会場で4月24〜26日に開催される予定になっている。(APライター◎ベス・ハリス/構成◎テニスマガジン)

※写真は開催延期が決定したBNPパリバ・オープン会場(アメリカ・カリフォルニア州リバーサイド郡インディアンウェルズ)
INDIAN WELLS, CALIFORNIA - MARCH 08: Courtmaster Jeffrey Brooker cleans the center court at the Indian Wells Tennis Garden on March 08, 2020 in Indian Wells, California. The BNP Paribas Open was cancelled by the Riverside County Public Health Department, as county officials declared a public health emergency when a case of coronavirus (COVID-19) was confirmed in the area. (Photo by Al Bello/Getty Images)

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