ソアレスが語るコロナウイルスの恐怖と影響

ジェイミー・マレー(イギリス)と組んだダブルスでオーストラリアン・オープンとUSオープンで優勝を遂げ、2016年ATPダブルス世界ランクで1位に至ったブルーノ・ソアレス(ブラジル)が、地元新聞『ナシオン』にテニス界が休止した現在の心境を語った。

「私は現在母国の実家におり、ほとんどの人々はロックダウンを見守っている。ブラジルはこれから最悪の状況に入っていくと言われており、我々はその数を減らすため家に閉じこもっていなければならない。不安や恐怖心がある。そして経済的にも、また別の危機的状況を招くことになるかもしれない」とソアレスはナシオン紙に語った。

「すべてが止まっている。僕の意見では、ウイルスのあと非常に悪いことが起こるのではないかと危惧している。ブラジルやアルゼンチンのような第3世界ではより多くの人が命を落とし、多くの人々が何もない状態で取り残され、人々が食べていく術を失うことによって犯罪率が増加するだろう。悲しいことだ」

 ブラジルはウイルスの影響を受け始めるのが比較的遅かったが、3月31日現在で感染者数は4256人にまで増え、死者は136人が確認されている。

 ソアレスはここ6年間、現在ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が責任者を務めるATPプレーヤー委員会の役員として尽力している。

「別の職業の友人と話したが、彼らは『金を稼げない。食べる必要があり、コロナウイルスで死ななかったとしてもこのままでは飢え死にする』と話していた。それが現在、ウイルスより大きな問題となっているんだ。政治について語りたくないが、健康管理部門と経済部門の人々が手を取り合って働く必要がある」とソアレスは訴えた。

 彼はまたテニスツアーについて、「テニス界のシーズンは滅茶苦茶になっている。まずオーストラリアの大問題(山火事)から始まった。大会は滞りなく開催されたが、あれは深刻な問題だった。そして今、我々は最悪の時期にある。テニスプレーヤーとしての我々は、大きな困難の中に置かれている」と続けた。

「テニスは非常に世界的なスポーツだ。言い換えれば、例えばブラジルやアルゼンチンのサッカーリーグやNBAは自国のウイルスの状態が落ち着けば再開できるだろうが、テニスはそうではない。世界はテニスのためにウイルスをコントロールすることはない。それが問題のひとつなんだ。テニスは、通常の活動に戻るのがもっとも遅れるスポーツだろう。テニス界で働く我々にとって、状況は非常に不安を誘うものだ」

 プレーヤー委員会は最近ビデオ会議を開いたが、現時点で話し合えることはなく、今はただ待つしかないとスアレスは述べた。

「ツアーが休止となっている今、ランキング、大会日程、記録など、対処しなければいけない問題はいくつもある。しかし現在言われているように6月8日に再開するならまだしも、7月あるいは8月にツアーを再開できるかも不透明だ。いつ再開できるのか知れないのだから、実質的に何が起こるか分からない」

「選手の大部分が、毎月稼ぐことを必要としている。6ヵ月以上プレーしなくても経済的に問題ない選手も何人かいるが、ほとんどはそうではないんだ。ランキング150~300位や500位くらいの選手にとっては、非常に大きな懸念だ。プレーしなければ、ほかに金を稼ぐ方法がないんだからね。非常に難しいが、我々は何ができるか検討しているところだ。これは、これまで一度もお目にかかったことがなかった議題だよ」

 確かに多額の賞金やスポンサー契約による貯えにより、プレーせずとも生活に困らないテニス選手はプロテニス界全体を見れば少数派だ。ソアレスはまた、「委員長はジョコビッチだが、彼は真剣に仕事に取り組んでいる。僕はダブルス部門を見ているが、多くのダブルスプレーヤーは稼げないことで苦しい状況に置かれている」と明かした。

 彼はまた同じナシオン紙のインタビューの中でツアー再開の見通しについて、「見通しはつかない。ただ、今の時点で10月の大会をキャンセルする必要はないだろう。今年いっぱいプレーできない可能性はあると考えている一方で、この読めない状況だからこそ直ちに決断を下す意味はない。いずれにせよ、今は協力し合わなければいけないときだ」と話した。

 またフレンチ・オープンが他の団体に相談なく延期を決めたことについては、「彼らは間違っていたことに気付いた。それぞれの大会が勝手に予定を変え始めたら、まったく意味をなさないのは分かるだろう? 選手たちはフレンチ・オープンのやったことに不満を抱いているし、ATPは皆が合意していなければ何も可決しはしないよ」と言い添えた。

※写真は昨年の上海マスターズでのブルーノ・ソアレス(ブラジル)(Getty Images)

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