なぜ「テニス」選手に「ゴルフ」上級者が多いのか?

テニスの現役を退き、趣味で始めたゴルフで、あっという間にシングルプレーヤー(ハンディ9以下)になる。そんな元テニス選手は数多い。スコット・ドレイパーに至っては、テニスとゴルフで二足の草鞋を履いていた。なぜ、テニス選手はゴルフがうまいのか。自らもハンディ3というゴルフの凄腕である丸山淳一コーチが、その疑問を解き明かす。【2016年5月号掲載】

ゴルフとテニスは相似形

なぜ?“テニス”選手に“ゴルフ”上級者が多いのか?

ゴルフを楽しむラファエル・ナダルとアナ・イバノビッチ

講師◎丸山淳一

まるやま・じゅんいち◎1965年4月8日、東京生まれ。森田あゆみプロの専属コーチとしてツアーを転戦する。ゴルフ歴20年、ベストスコア68、ハンディキャップ3。2015年には川越カントリークラブのクラブチャンピオンに輝く。森田プロもゴルフの腕前は一級品 ※プロフィールは当時のまま

写真◎井出秀人、Getty Images

Reason1

テニスもゴルフも
同じスイングスポーツ
体の動き・使い方が
共通している

ニス界で最高のゴルフ上級者と言えば、まずはスコット・ドレイパー(写真)でしょう。オーストラリアン・オープンのミックスダブルスで優勝したことがあるオーストラリアの選手です。彼はテニスで現役のときにプロのゴルファーになり、後にゴルフでも下部ツアー優勝の経験があります。

 元世界4位のティム・ヘンマンもゴルフのハンディキャップ(ゴルフで技量の異なるプレーヤー同士が公平な基準で競い合えるようにするための調整値。転じてプレーヤーの技量を示す尺度となっており、低いほど上級者)は1で、イギリスのあるクラブではコースレコードを持っている、と聞いたことがあります。

 現役を退いたプレーヤーだけでなく、現役でも趣味でゴルフをプレーする選手は多いですし、皆、腕前もかなりのものです。私は錦織圭選手といっしょにゴルフをプレーしたことがありますが、彼もかなりの腕前でした。杉山愛さんもゴルフ仲間ですが、ついに70台のスコアを出しましたし、今も年々上達しています。私自身、ゴルフを始めて20年になりますが、今はハンディキャップ3です。

◆ ◇ ◆

 では、元選手も含め、なぜテニス選手にはゴルフの上級者が多いのでしょうか。まず言えるのは、テニスもゴルフも“同じスイングスポーツ”だということです。股関節・体幹・肩甲骨を連動させることが重要になる、という基本が共通しています。そのため、テニス選手はテニスで培った運動連鎖を、そのままゴルフに持ち込むことができるのです。

 より正確には、“現代の”テニス選手にはゴルフの上級者が多い、と言ったほうがいいかもしれません。数十年前のテニスは、体重移動・後ろから前へスライドするような動きが主流でした。そのため、テニス選手は回転運動がメインのゴルフをプレーすると、テニスの調子が悪くなると言われたものです。

 それが今は、テニスも軸を固定し、体幹を中心にしてギュッと回る回転運動が主になってきました。体重移動は見えない範囲で、股関節の中で行う、という感覚も含め、動きがよりゴルフに近づいていったのです。今ではテニス選手がゴルフをプレーすると、動きの感覚をつかむことができるので、昔とは逆にテニスの調子がよくなるくらいだと思います。

 テニス選手がゴルフをプレーするときに微調整が必要になるのは、タイミングのとり方でしょう。テニスは相手が打ったボールが飛んでくるので、自分が打つタイミングというのは自然につくられます。一方、ゴルフは止まっているボールを打つので、打つタイミングを自分でつくらなければなりません。

 そのため、テニス選手の感覚からすれば、ゴルフは動き出しが難しく感じるところがあるかもしれません。自分なりのルーティンをしっかりとつくり、自分なりのタイミングをつかむ必要があるでしょう。

ドレイパーはテニスとゴルフ、二足の草鞋を履いていた

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