パンデミック渦中のテニス界で非公式戦が続々誕生のトレンド
観客はおらず、線審もボールボーイもいない。そして選手たちは試合が終わったあと、ネット際で握手も交わさない。ドイツでプロテニス選手が参加したエキシビションマッチが行われたが、こんな様子だった。それは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの最中、スポーツがライブでテレビ放映された珍しい瞬間でもあった。
ヘール グレンツハウゼンという小さな町の近くにあるアカデミーで4日間の大会となるこのエキシビションマッチに関与していたのは、3人の人物だけだ。その室内クレーコートで対峙したふたりの選手、そして主審である。
「僕は観客たちを前にプレーするのが好きだ。コート上でエネルギーを感じたい。観ている人々がいて、彼らが興奮して熱くなる。それが僕に多くのエネルギーを与えてくれ、試合がもっと楽しいものになっていくんだ。それが完全になくなってしまうというのは、辛いことだよ」とミシシッピ州立大学でプレーしているフロリアン・ブロスカ(ドイツ)は金曜日の最初の試合後にAP通信に語った。
「だから僕は何とか自分自身でエネルギーを引き出そうしたけど、当然ながら同じようにはいかないよね」
男女のプロテニスツアーがパンデミックにより少なくとも7月半ばまで活動停止となっているとき、選手がスポーツをプレーしたりファンがそれを観たりする機会はほとんどない。しかし8人の男子選手によるラウンドロビン形式のこのミニ大会は、――2015年ウインブルドンでラファエル・ナダル(スペイン)に対して番狂わせを演じたダスティン・ブラウン(ドイツ)がもっとも有名な出場者だ――テニスカレンダーの中で現在増えつつある非公式大会のひとつだ。
今月の終わりには、ドイツの同じ会場でさらにふたつのイベントが予定されている。
金曜日の試合は、アメリカではテニスチャンネルで放映された。テニスチャンネルは5月8日から10日に、フロリダ州ウェストパームビーチで開催されるラウンドロビンの大会を放映することになっている。
その大会では4人の男子選手が賞金をかけて競い合う。参加メンバーは2019年USオープン準決勝進出者のマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)、ライリー・オペルカ(アメリカ)、テニス・サングレン(アメリカ)、そしてトミー・ポール(アメリカ)だ。
5月22日から24日には類似したイベントが同じ会場で予定されており、そこではトップ60の4人の女子選手たちがぶつかり合う。この大会の出場者はアリソン・リスク(アメリカ)、アマンダ・アニシモワ(アメリカ)、ダニエル・コリンズ(アメリカ)、アイラ・トムヤノビッチ(オーストラリア)となっている。
セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)のコーチとして知られるパトリック・ムラトグルー氏は、フランスのニース近郊にある彼のテニスアカデミーでプロ選手が無観客でプレーする独立テニスリーグをスタートさせる計画を明かしている。5月16日に予定している開幕試合として、世界ランク10位のダビド・ゴファン(ベルギー)と若手で有望視されている103位のアレクセイ・ポプリン(オーストラリア)が対戦することになっている。
何らかの形でテニスに戻ろうとするこの試みは、より大きなスケールで大会が再開したときにテニスがどんなふうになるかについての洞察を提供するものだった。
ドイツは慎重さを維持しながらも、ロックダウンを緩和し始めた。大きなイベント開催はすぐには許されないだろうが、無観客でのサッカーを5月末に再開することが検討されている。
テニスのエキシビションマッチでは、プレーヤーはコートでプレーしているとき以外はマスクを着用し、他の人々との接触を最低限に留めている。ブロスカも指摘していたが、手を消毒する薬品がいたるところに設置してある。
プレーを待っている間に選手たちは会場のバーエリアの窓を通して試合を観ることができ、無人のテレビカメラが特定のポジションに備え付けられている。選手が試合を待っているときに待機する場所は、ブロスカが「ボックス」と名付けた個別に仕切られたスペースとなっている。
「コート上では大した変わりはない。少なくとも、それが僕が自分自身に言いきかせるべきことだ。最初、コート上に立ってカメラを見たとき、『ああ、やれやれ、何かが起きようとしている』という感じだったね」と会場近くに住んでいるブロスカは説明した。
アメリカの大学テニスは世界ランクのポイントを与えないため、学生プレーヤーが国際的に名を上げるのは難しい。ブロスカは大学プレーヤーとしての資格を保つため、対戦相手と違って大会出場により金銭的報酬は受け取らないのだと明かした。
「これはあくまで、自分がそのレベルでテニスをプレーすることができるのだということを見せるための機会だ」とブロスカはコメントした。「例え彼らのようなプロの選手たちが持つランキングや実績を持っていなくても、僕が対抗できるところを見せたいと思っているよ」(APライター◎ジェームズ・エリングワース/構成◎テニスマガジン)
※写真はドイツ・ヘール グレンツハウゼンで行われたエキシビションマッチ(大会2日目)の様子
HOHR-GRENZHAUSEN, GERMANY - MAY 02: A general view during day 2 of the Tennis Point Exhibition Series on May 02, 2020 in Hohr-Grenzhausen, Germany. It's the first tournament since the suspension of all matches at the beginning of March and one of the first non-virtual sporting events in the Corona crisis. (Photo by Alex Grimm/Getty Images)
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