食の‟安全”は何より大切「梅雨時のテニス食」

主食・主菜・副菜・牛乳/乳製品・果物を揃えるテニス食は大切だけど、まず安全な状態で食事をすることが、何よりも大切です。梅雨時に限らず、「食中毒対策」は常に心がけてください。(原文まま、以下同)【2015年7月号掲載】

指導◎高橋文子 イラスト◎もりおゆう

PROFILE
たかはし・あやこ◎エームサービス株式会社。管理栄養士・公認スポーツ栄養士。青山学院大学硬式テニス部出身。現在は、日本テニス協会テクニカルサポート部会員として、テニス選手に対する栄養サポートを実施している

梅雨は〝食中毒が多い季節〞というのはウソ? 本当?

めじめした梅雨の季節がやってきました。梅雨と言えば、何を思い浮かべますか? ジューンブライド、あじさい、かたつむり……食中毒!? じめじめ、ムシムシした季節は、食べ物もいたみやすく、注意が必要です。主食・主菜・副菜・牛乳/乳製品・果物を揃えるテニス食は、バランスよく食べるだけではなく、安全な状態で食べることも、大事なポイントになります。

 まず、食中毒の原因を知っていますか? 主な原因は「細菌」と「ウイルス」です。細菌は、温度や湿度などの条件が揃うと食べ物の中で増えていきます。その食べ物を食べることで、お腹が痛くなったり、吐き気をもよおしたりと、健康被害が出ます。

 一方、「ウイルス」は食べ物の中で増えていくことはありません。しかし、食べ物に付着したウイルスがカラダの中に入ると、腸管内で増殖し、食中毒を引き起こします。代表的なウイルスにノロウイルスがあります。細菌の食中毒は温度や湿度が高くなってくる夏場に多く発生しますが、ノロウイルスは寒くて空気が乾燥した冬場に多く発生します。

 グラフは平成26年度の原因物質別(細菌・ウイルス・その他)の食中毒患者数です。こうしてみると、梅雨(6、7月)は食中毒が多いという認識は誤りで、食中毒は一年中発生していて、年によって患者数はむしろ冬場に多いことがわかります。

 今回は梅雨ということもあり、細菌性の食中毒が増えてくる時期ですので、その予防策を中心にお伝えします。

細菌はどこにいる?

年中、食中毒の危険にさらされている、と言っても過言ではない私たちですが、「食中毒にならないためにはどうしたらよいか?」を考えてみましょう。細菌やウイルスは目に見えません。

 今回は梅雨ということもあり、細菌性の食中毒が増えてくる時期ですので、その予防策を中心にお伝えします。敵(細菌・ウイルス)はどこに隠れているのかを考えてみましょう。

 例えば、台所。敵はどこに潜んでいるでしょうか? 敵には好む場所があります。温度、湿度が適度で、水分と栄養があり、増殖のための時間がたっぷりとれるところ。それは台所のどのあたりでしょう?

ふきんや食器洗い用のスポンジは、温度・湿度・水分と栄養がほどよく整う細菌の巣窟です。食器洗い用のスポンジの細菌数を調べた実験では、多量の細菌が検出され、中には食中毒を引き起こす大腸菌や黄色ブドウ球菌も見られたというデータがあります。

 食器洗い用洗剤を染み込ませているから衛生的だと過信している方も多いようですが、スポンジは内部が乾燥しにくく、細菌の繁殖条件がほどよく揃った要注意アイテムです。

 対策として、一日に1回、煮沸消毒をしてください。スポンジの内部まで熱がいきわたり、殺菌効果が期待できます。鍋で煮沸するほうが確実ですが、ヤカンで熱湯をかけることでも十分殺菌できます。

 台ふきんも同様に、洗浄剤を使ってよく揉み洗いして、繊維にしみ込んだ汚れをきれいに落としてから、煮沸消毒することをオススメします。

「つけない」「増やさない」「やっつける」

食中毒予防の3原則
「つけない」「増やさない」「やっつける」

「つけない」とは?

ず、何よりも自分の手に付着している雑菌を退治しましょう。いつでも、どこでも、誰でもできる対策、それが「手洗い」です。皆さんは、どれくらいの時間をかけて手を洗いますか? 指の先を湿らせて終わり、濡らして終わり、洗ったものの乾かさないで終わり、ズボンのすそで拭いて終わり……そんな手洗いをしている人はいませんか?

 そうした洗い方はすべてNGです。いわゆる細菌を「入れない」ための手洗いは、最低でも20秒はかかります。食事の前の手洗いは、自分の口に細菌を「つけない」ための最善策です。また、食品自体を「洗う」ことも大切です。野菜などの食材も手と同様、流水できれいに洗ってください。また、おにぎりはラップで包んでから握るのが、菌をつけないよい調理方法です。

「増やさない」とは?

菌の多くは、高温多湿な環境で増えます。スーパーで買い物をするとき、家に帰り、冷蔵庫にしまうときを想定した左枠のチェックポイントを見てみましょう。

「やっつける」とは?

とんどの細菌は、加熱すれば「やっつける」ことができます。スポンジの煮沸や熱湯消毒を紹介しましたが、同じことです。

 海外遠征に行くテニス選手には、この「やっつける」ことができない生野菜・水・飲用氷などを口にするときに注意するよう話をしています。

 肉や魚、野菜などは加熱して食べれば安全と言えます。目安として、中心部を75℃で1分以上加熱することをオススメします。冬場に流行するノロウイルスの場合は、85℃以上で90秒以上の加熱が効果的です。

回お伝えしたことは、どれも決して初めて聞くような内容ではなかったと思います。むしろ、皆さんにとって当たり前の内容だったかもしれません。

 それでも、安全な状態で食事をすることが重要であることに変わりはありません。主食・主菜・副菜・牛乳/乳製品・果物を揃えてバランス良く食べるテニス食よりも、安全に気をつけることのほうが簡単に行えることだと思いますので、必ず実践するように心がけてください。

1.手のひらと手のひらを こすり合わせて

2.指の間も しっかりと

3.左右交互に 手のひらと手の甲を こすり合わせて

4.指を揃えて 指先と手のひらを こすり合わせる

5.手首も しっかり洗う

正しい手洗いを学ぼう!

指と人差し指の間や手首は洗い残しが多い箇所ですので、 気をつけましょう(上図②⑤)。ちなみに手を洗うタイミングですが、調 理を始める前、食事をする前、トイレに行ったあとだけではありません。 赤ちゃんのおむつを交換したり、ペットに触れたりしたあとも手洗い は必要ですし、調理途中に生の肉や魚などを取り扱ったり、髪の 毛や顔を触ったりした場合にも必ず手を洗いましょう。

スーパーでチェック!

消費期限を確認する

 大前提として、「安全」が約束されている食品を購入しましょう。「賞味期限」はおいしく食べられる期限、「消費期限」は食べられる期限です。消費期限と賞味期限の両方に言えることですが、『開封していない状態で、表示されている保存方法に従って保存したとき』ということも忘れずに。

寄り道せず、すぐに帰る

 細菌の増殖に適した温度帯は、一般に15℃から40℃と言われています。人間の体温と同じで、35℃前後が細菌の増殖に最適な温度帯と言われています。スーパーから家までの道のりは、そうした温度帯に食材をさらす時間になります。スーパーで保冷用の氷をくれるところもありますので、帰宅まで時間がかかるようであれば活用しましょう。

家でチェック!

すぐに冷蔵庫に保管!

 細菌は一般的に10℃以下では増殖がゆっくりになると言われています。お肉やお魚、お惣菜などは、買ったらできる限り早く冷蔵庫に入れましょう。保管の際、肉や魚はビニール袋や容器にしっかりと入れ、冷蔵庫内の他の食品に肉汁などがかからないようにしておきましょう。

 また、冷蔵庫に入れても、細菌の増殖が止まるわけではありません。早めに食べることが大切です。ドレッシングなどは開封した日を容器にメモしておくと目安になります。お弁当やサンドイッチなどもできれば冷蔵で、日の当たるところを避けて涼しいところに保管しましょう。

冷蔵庫の温度は大丈夫?

 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下が目安です。冷蔵庫や冷凍庫に詰め込みすぎていませんか? 詰め込みすぎる(収納率70%程度)と冷気の循環が悪くなり、庫内温度が高くなります。扉の開けっ放しにも注意してくださいね。

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