USTAはUSオープンを無観客で開催の意向「州当局からの連絡を待っている」

州政府の支持が得られれば、全米テニス協会(USTA)はUSオープンを予定通り8月末からニューヨークにおいて無観客で開催することを意図していることが分かった。公式発表については、今週中に行われる可能性がある。

 多くのスポーツ同様、プロテニスツアーは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのために3月途中から休止となっている。フレンチ・オープンは5月から9月に延期され、ウインブルドンは75年ぶりに中止(戦争以外では史上初)となった。もし開催されることになれば、USオープンは1月のオーストラリアン・オープンに続く今年2つ目のグランドスラム大会ということになる。

「必要としている賛同を得られる限り、我々には前進する準備ができています」とUSTAのスポークスマンであるクリス・ウィドマイアー氏は電話インタビューに答えて言った。

「結局のところ、決断を下すに当たって重要となる3つの要素があります。ひとつ目は“健康と安全性が最優先となるプランを生み出す”ということ、ふたつ目に“USオープンを実施することがテニスというスポーツのために正しいことか否か”ということ、3つ目の要素は“財政的に成功し得る方法で行ない得るか”ということです。我々はこの3つの目標のすべてを達成できると信じています」とウィドマイアー氏は述べた。

「しかし我々は、段階を追ったやり方でこのプランにアプローチする必要があります。そしてすべてのステップが完了したとき、我々は公式発表することができるようになります」

 コロナウイルスに関わる懸念の中で大会を開催するための運営上のプランの中には、無観客、プレーヤーの側近の人数制限、宿泊施設を会場周辺に集めること、フラッシングメドウの大会会場における清掃や消毒の強化、ウイルス検査などがある。

 またプランの一部にはシングルスの予選をなくすこともあり、ダブルスの規模が縮小される可能性もある。予選出場圏内のランキングを持つプレーヤーは、USTAがATPおよびWTAツアーに提供する基金から損害賠償金を受け取ることになるという。USTAが過半数の所有権を持つシンシナティの大会は8月12~23日に予定されているが、USオープン予選の代わりにニューヨークに場所を移して行われる。

「我々はこの提案を、ニューヨーク州に提出しました。大会のすべての運営や作業上の要素、何よりも大会開催に関わるすべての人々の健康と安全のための詳細にわたる対策を記述した非常に包括的なプランです」とウィドマイアー氏は説明した。

「その計画実現の可能性について、我々は州当局からの連絡を待っていているところです。USオープンはニューヨーク州内に実在する多くのプロスポーツ(大会)のひとつであり、州はすべてのスポーツを総合的に検討する必要があるのだと我々は認識しています」

 もし州がGOサインを出したなら、残る大きな疑問は“どのプレーヤーが参加するか?”ということだ。

 世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)とアシュリー・バーティ(オーストラリア)はニューヨークに赴くことに懸念を示しており、前年度覇者のラファエル・ナダル(スペイン)も同様だ。グランドスラムの獲得タイトル数「20」のうち5つをUSオープンで獲ったロジャー・フェデラー(スイス)は、右膝に2度目の関節鏡による手術を受けたことで今年の残り期間プレーできないと発表していた。

 ジョコビッチは先週、COVID-19対策としてニューヨークとUSオープンで課される条件は「極端過ぎる」と発言した。

 セルビアの国営テレビ「RTS」のインタビューに答えたジョコビッチは、「僕が話した選手のほとんどは、USオープン出場についてかなりネガティブな考えを持っている」と語っていた。

 彼は先週末に、観客席を満杯にしてのエキシビションマッチを母国セルビアで開催した。セルビア政府は先月、ロックダウンのほとんどの規制を解除していた。

「私も懸念している」とバーティはAP通信への電子メールの中で打ち明けた。「大会側が開催を熱望しているのは分かっているけれど、皆の安全を保つのが優先事項であるべきよ」。

 ニューヨークでのパンデミックの最中に多くのベッドを入れて仮設病棟と化していたインドアコートの施設も含め、ロッカールームを新設して既存のスペースの換気を改善したいとUSTAは考えている。それ以外にも、試合前以外にはロッカールームに誰もアクセスできないようにするという案も考慮されている。

 従って練習のためだけにフラッシングメドウに行ったなら、「選手は来て、練習して、ホテルに帰ることになります」と新しく大会ディレクターに就任したステイシー・アラスター氏は先月のインタビューの際に話していた。

 USTAはこれらの舞台設定について、ATP(男子プロテニス協会)およびWTA(女子テニス協会)の意見を仰いできたとウィドマイアー氏は明かした。

「我々が定めたゴールは、大会開催に向けて前進していきたいというものでした。それはもちろん、医療およびセキュリティの専門家と協力してCOVID-19のリスクを軽減し、USオープン参加者の健康と福祉を保証するプランを築くことができるということが前提となります」と彼はコメントした。

「専門家たちやふたつのプロツアーと協力して作業することで、我々はそのようなプランを作れたと信じています」(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

写真◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU

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