男子プロテニス選手会が学生参加型の団体戦『+POWER CUP』を実施

8月1日(土)、全日本男子プロテニス選手会はプロ選手6人とプロ志望の学生6選手による団体戦『+POWER CUP(プラスパワーカップ)』を初めて開催した。コロナウイルス感染症対策として無観客での大会実施となった。

 コロナ禍の影響で実戦の場を失った学生プレーヤーを救おうと現役のプロ選手たちが立ち上がった。男子プロテニス選手会で会長を務める添田豪(GODAI)を中心に、学生プレーヤーが出場できる大会を計画。選手各々が意見を持ち寄りながら、大会実施にこぎつけた。

 当然ながら、大会を一から作り上げることは容易ではない。選手会自体に十分な資金がある訳ではなく、資金集めの難しさや感染症対策への対応など課題は山積み。それでも、選手会主導で動いたことで「自由にできた部分もある。だからこそ、こういう(大会の)発想になった」と添田。国内外含めほとんどのジュニア大会が中止となっている今、プロを目指す子供たちが減ってしまう――その危機感が、彼らを突き動かした。

プロといっしょに団体戦をすることで「僕たちもプレッシャーを感じて緊張するし、ジュニアもプロに観られることでプレッシャーを感じると思う。そのプレッシャーを受けてほしいし、慣れていってほしい」と添田

 参加する学生プレーヤーは公募。募集の際に22歳以下であることと同時に「将来、プロ選手を目指す学生プレーヤー」も要項に加えた。それでも想像を超える応募数が集まり、最終的に6人まで絞った。内山靖崇(積水化学工業)は「出られない選手も出てきてしまい、そこが一番心苦しかった」と胸の内を明かした。

 だが、落選した学生たちにもチャンスを与えた。大会当日、来場できる学生選手に声をかけ、プロ選手たちと練習コートで打ち合える機会を設けた。会場でしか体験できない独特の雰囲気を肌で感じるとともに、試合に出場できない悔しさも味わったはず。それもまた、今後のモティベーションにつながることは言うまでもない。

 試合は出場選手の出身地に合わせて東西にチーム分けを行った。チームEAST(東)は添田、内山、松井俊英(ASIA PARTNER SHIP FUND)のプロ選手3人、白石光、高畑里玖(ともに早稲田大学)、三好健太(桜田倶楽部)の学生3名が名を連ねた。一方、伊藤竜馬(北日本物産)、西岡良仁(ミキハウス)、上杉海斗(江崎グリコ)のプロ3人に加え、池田朋弥(早稲田大学)、三井駿介(相生学院高校)、原崎朝陽(神戸神村学園高校)の学生3人がチームWEST(西)として出場した。

 大会は全6試合。第1試合はU18シングルスとして三好vs原崎、第2試合はプロシングルスに添田vs伊藤、第3試合はプロと学生によるミックスダブルスで松井/高畑vs上杉/池田、第4試合はともに世界ランク100位内の対決となったプロシングルスの内山vs西岡、第5試合はU22シングルスで白石vs三井、最終試合はプロダブルスで内山/松井vs伊藤/上杉という対戦カードが組まれた。

 学生にとって久しぶりの実戦の場。団体戦ならではの緊張感も相まって、どの試合も白熱した“真剣勝負”へ。試合はチームWESTが第1試合から3連勝し、西岡が内山に敗れたものの、続く第5試合で三井が白石にストレート勝ち。三井はジュニア大会で過去全敗と相性が悪い白石から初勝利を収め、チームの勝ち越しを決める4勝目を挙げた。第6試合のプロダブルスは、チームEASTの松井/内山が意地を見せて勝利を収めたが、チームWESTが4勝2敗で勝利。第1回大会は‟西軍”に軍配が上がった。

 大会を終えた学生プレーヤーたちの表情は、勝敗に関係なく充実感に満ちていた。第1試合に敗れた三好は思うようなプレーこそできなかったものの、課題がより明確になったという。「試合後にアドバイスもいただき、その内容もすごく的確で納得できるものばかり」と声を弾ませた。

ベースライン後方に下がったまま劣勢を強いられた三好。「もっと前でプレーしていかないと」と反省の多い試合となった

 三好と対峙した原崎は「これまでの人生で一番緊張した」ようだが、憧れのプロ選手たちの応援に奮起。試合中盤から得意のフォアハンドも冴えわたり、今大会の“学生プレーヤーMVP”にも選ばれた。

 久しぶりの実戦にしては「すごくいいプレーができた」と笑顔を見せた原崎だが、プロ選手への質問も積極的だった。その中でもプロ選手の“メンタルの強さ”を痛感したという。「どんな状況でも堂々としている。メンタルは場数を踏まないと強くならないし、経験値がまったく違う」と目を丸くした。

原崎は目標とする西岡から声がかかると、いっしょにポイント練習もできた。「実際に打ち合うことで学べることがすごくあった」と目を輝かせた

 参加した学生プレーヤーを主役とする今大会だが、プロ選手にとっても「見られる」ことは大きな刺激となった。思い描いていた光景が現実のものとなった添田は「開催できて本当によかった」と目を細めた。今後は年に1、2回、このような機会をつくっていければ、と新たな構想も明かした。今年3月から止まっていた学生たち、プロ選手たちの時間が再び動き始めた。

写真◎井出秀人

テニスマガジン編集部◎中野恵太

※トップ写真は、プラスパワーカップに出場したプロと学生選手たち。左上段から内山靖崇、松井俊英、添田豪、上杉海斗、伊藤竜馬、西岡良仁、左下段から白石光、三井駿介、池田朋弥、原崎朝陽、三好健太、高畑里玖(写真◎井出秀人)

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