Topic1|サービスとグリップの関係|堀内昌一先生×鈴木貴男プロ×高田充コーチ_特集「本気でサービス2010」

本誌最強サービス指導陣の堀内昌一先生、鈴木貴男プロ、高田充コーチの3人がお届けするサービスレッスン。サービスにおいてもっとも多いと考えられる欠点弱点を7つのトピックとしてピックアップし、その問題点を話し合い、解決策を導いていただいた。まずは「TOPIC1|サービスとグリップの関係」だ。【2010年10月号掲載】

解説◎堀内昌一、鈴木貴男、高田充 写真◎毛受亮介 イラスト◎サキ大地

“サービスの目的”を考えると、なぜ薄いグリップでなければいけないかがわかる!

厚いグリップのサービスは×

厚いグリップのサービスは、レシーバーにとってコースが読みやすく、ボールが曲がらないから返球しやすいサービスになる

Q 3人は声を揃えて「サービスを上達させるのに絶対に外せないのは薄いグリップ(コンチネンタルグリップ)」と言います。サービスとグリップの関係について、正しいアプローチを教えてください。

回答◎堀内昌一

「薄いグリップで打つナチュラルスピンサービスの効果を知ると、誰もが“これだ!”と思うはずです」

ービスの目的は、相手のレシーブ力を下げて、主導権を握ることにあります。レシーバー目線で考えるとよくわかります。

 サーバーが厚いグリップでサービスエリアを狙うと、動作方向と打球方向が近いか同じになります(前方向/運動としてそれが自然)。

 サーバーの体が打球方向を向くため、レシーバーはその向きを見て、およそコースを見分けることができます。しかも、ラケット面がボールの真後ろをとらえ、回転がほとんどかかりません。ボール軌道が直線系で、球種が一つですから、レシーバーは守る範囲が限られるのです(イラスト参照)。

 また、厚いグリップには、スイング速度が上げられないという特徴もあります。速度を上げれば回転がかからない分、ボールがよく飛ぶので、サービスエリアに入りません。裏を返せば、エリアに入れるためには、速度を落とさなければ入らないということになります。つまり、レシーバーにとって厚いグリップのサービスは返球しやすく、特にセカンドサービスは、速度が落ちることを初めから予測できるサービスなのです。

 一方の薄いグリップのサービスは、サービスエリアを狙うとき、動作方向と打球方向が違うのが運動として自然で、体の向きは横向きです(動作方向は右斜め上で、打球方向は左斜め下)。その運動の中では、ラケット面がボールに対して斜めに当たり、回転がかかります。ボールは放物線を描いて曲がるのが特徴です。

 このスイングの中で、ボールに対するラケット面の当たり方がわずかに変わると球種が変わり、例えばバウンド後に滑る、弾む、切れるなど、イレギュラーします。これをレシーバーが予測するのは難しく、特にタイミングが計れません。

 その上、薄いグリップのサービスは、スイングスピードの調節ができる運動なので、サービスエリアという狭い場所に対しても、回転と速度の組み合わせでコントロールできます。回転量を増減し、遅くも速くも打てるのです。そうなるとレシーバーはこの薄いグリップのサービスが悩ましいもの。私はこの、薄いグリップで打つサービスを推奨しています。

回答◎鈴木貴男

「厚いグリップで“入れる”ことから始めたら、その後も、そのサービスで“入れる”ことしかできなくなります」

 僕もテニスを始めた小1の頃は厚いグリップでサービスを打っていました。小2、小3になると、コーチに言われたのか、テレビのプロに影響されたのか、サービスは薄いグリップで打たなければいけないと意識していました。

 薄いグリップに変えた日のことはよく憶えていて、何度打ってもボールが左に曲がって、隣接のクラブハウスにぶつかるんです。「なんでだ?」と思いました。でも、あっちに曲がるなら、体の向きはこっちと、1時間くらいで修正できました。

 うまくいかないからやめるということは僕の中にはなく、なぜなら、厚いグリップは間違いで薄いグリップが正しいという、その情報のみだったからです。だから、その最初の情報が厚いグリップでもOK、ポーンと打っても「入ればOK!」であれば、その後は、そのサービスを何百、何千、何万回と打ち続けるはめになるんだと思います。

 こんな間違いを起こさないためには最初に正しい情報を持ち、上達を目指すことが重要だと思います。

Q「グリップが厚い」「グリップを薄くできない」原因は何だと思いますか。

回答◎高田充

“最初”を間違えるから悪いクセがつくのです。最初は多少難しくても、“薄い”を目指せば必ず身につきます」

 子供に薄いグリップのサービスをアプローチすると、体が小さい分、まだパワーもスイングスピードもないですから、最初は難しい面も出てきます。初心者も運動を覚える前は難しいと思うものです。しかし、練習を続けていけば体もできてきて、スイングスピードも上がり、パワーを出せるようになります。そこに続けていく価値があるのです。

 ところが、最初の「難しい」のところで、「簡単」な厚いグリップを選んでしまうと、鈴木プロが言うように、その後、そのサービスを繰り返し打っていくうち、悪いクセが付くのだと思います。最初に選ぶグリップで、運動の方向が決まります。薄いグリップのサービスの有効性をプレーヤーは最初に理解して、正しい方向を目指してほしいと思います。

薄いグリップの感覚を養う

レッスンは鈴木貴男プロが担当します!

薄いグリップの感覚を養うアプローチ

 最近、子供たちを指導していて驚くのが、自分のストロークのグリップ名称を知らない、「厚い」「薄い」の感覚がわからないということです。フォアハンドの強打が「厚い当たり」ということは説明するとわかるのですが、問題は「薄い当たり」。それがわからないから、サービスの薄いグリップが身につけられないのではないかと思います。ここで紹介する練習はちょっとした遊びですが、これをやると子供たちが薄いグリップを理解できます。

1|フォアハンドの裏面を使って薄い当たりを知る

厚いグリップに対して薄いグリップを理解するために、フォアハンドの厚いグリップのまま、フォアハンドを打つ面の「裏面」を使って、ボールを打つ。ボールはシュッとこすれ、それが「薄い当たり」で「薄いグリップ」

打点を右斜め上方向へ上げていき、横振りを縦振りに変えて、体、肩、腕を回す運動を加えるとサービスに近づけることができる(無理に縦振りのサービスまで行なう必要はなく、あくまで薄いグリップの感覚を知るまでにとどめよう)

2|1で練習したグリップを次のように微調整しコンチネンタルグリップへ

 次のグリップはどちらもコンチネンタルグリップです。最初に出てくる黄色いウェアが堀内先生で、一般的なコンチネンタルグリップです。次に出てくる黒いウェアが鈴木プロで、堀内先生より薄めです。これらの感じをベースにしましょう。コンチネンタルグリップは、曲がったり伸びたりせず、手首に安定した角度が生まれます。

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