【全日本2019プレーバック男子決勝】プロ3年目の野口莉央がV

3年前の初出場はワイルドカードから1回戦負け。2度目の出場で頂点に立った野口

開幕が間近に迫った2020年の全日本テニス選手権。ここでは2019年の全日本シングルスの男女決勝を振り返っていこう。まずは男子決勝をプレーバックする。(テニスマガジン2020年1月号掲載)

20歳の決勝対決を制した野口莉央

 男子シングルス決勝の舞台に立ったのは、ともに20歳の若者だった。学年は野口莉央がひとつ上になるが、野口は20歳10ヵ月、清水悠太は20歳4ヵ月で、ふたりの合計年齢は大会決勝では最年少記録となった。

 ふたりは年齢だけでなく、世界ランキング(2019年10月28日付)も近く、清水が367位、野口が398位と、これは日本選手の上から12番目と14番目にあたる。ちなみに身長は清水が163センチ、野口が169センチと、小柄な選手同士の決勝だった。

 そうなれば当然、両者の持ち味はスピードであり、俊敏なフットワークがポイントとなるが、清水の左膝から下は厳重にテーピングが施されていた。それは3種目に出場し、すべて決勝に進出した代償だった。決勝当日の朝も痛みは消えることなく、「できるところまでやろう」と覚悟を決めてコートに立ったのだった。

 決勝は、その清水が先にブレークして3-1とリードしたものの、第5ゲームから野口が一気の5ゲーム連取で第1セットを先取した。

 「第5ゲームでブレークバックできたのが大きかった。あそこで1-4となっていたら、テンションが落ちていたと思うから」と野口が言う。

 野口のストロークは的確だった。清水の低く、角度のあるバックを警戒しながら配球し、チャンスと見るやフォアハンドの逆クロスを軸に攻め込んでいった。「攻めるときは攻め、守るときは守ることができた」と野口が胸を張る。

 プロ1年目から積極的にクレーの欧州遠征に出掛けている。なかなか勝つことはできないが、プレーの幅が大きく広がっている実感がある。清水の動きは確かに鈍かったが、それでも野口のストロークは力強く、冷静な試合運びが光った。

 第2セットは3-3から野口が第7ゲームをラブゲームでキープし、続く第8ゲームも清水がブレークポイントから痛恨のダブルフォールト。野口が5-3と優勝に近づいたが、清水も最後の力を振り絞る。第9ゲームをブレークして4-5と追い上げ、第10ゲームも白熱のストローク戦となれば、まだ勝負の行方はわからなかった。5-5に追いつけば、清水の逆襲も十分に考えられる……だが、そうはならなかった。野口が3度目のマッチポイントを手に入れ、初優勝の喜びをかみしめた。

 「素直にうれしいです。プロ3年目の優勝としては、いいんじゃないかと思います」と野口が笑った。

 越智真との3回戦はマッチポイントを逃れての逆転勝利。「あきらめないでよかった」と安堵の表情を見せた。中学2年生から指導する小島弘之コーチも「技術的にはそれほど大きく変わったわけではありませんが、いろんな面でとにかくタフになりました」と話す。目標はグランドスラム出場。「課題は挙げたらきりがない」と言うが、自分らしく「コツコツと」目標に向かって戦っていく覚悟だ。


準優勝の清水はいつもの動きではなかったが、それでも随所に”らしさ”を見せた

清水悠太は3種目すべてに決勝進出も涙


 清水の涙は止まらなかった。これまで戦ってきた相手、応援してくれた仲間や関係者、そして観戦に訪れた観客のことを思うと、自分のプレーができなかったことが悔しくてならなかった。

「相手のミスがなくて、長いラリーをしないといけなかったので、しんどかったですね…。こんなケガで試合をしたことはなかったので、少し怖さもあって動けなかった。でも相手がいいプレーをしたので仕方がないです」と自らに言い聞かせるように口にした。

 最後のダブルス決勝も準優勝に終わり、清水の挑戦が終わった。もっともほしかったシングルスのタイトルはつかめなかったが、3種目で決勝に進んだ。その挑戦、そして最後まで戦い抜いた清水の姿が忘れられない。

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取材◎牧野 正 写真◎菅原 淳

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