ティーム、メドベージェフらの“新世代”が『ビッグ3』の牙城を崩すのか?

写真はダニール・メドベージェフ(ロシア)(Getty Images)

ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やラファエル・ナダル(スペイン)は――ロジャー・フェデラー(スイス)さえ――もうそろそろ潮時だなどとと、誰も考えてはいない。まだ時期尚早であるし、実際そうではないはずだ。

 それでも急激に力をつけてきているダニール・メドベージェフ(ロシア)と継続的に結果を残しているドミニク・ティーム(オーストリア)という20代の選手たちの活躍により、シーズン末の男子トップ8によるエリート大会「Nitto ATPファイナルズ」(イギリス・ロンドン/室内ハードコート)は興味をそそる2021年のための舞台をお膳立てした。このふたりには、テニスの頂点に向けて登り続ける準備ができているように見える。

 彼らは新進気鋭の男たちの一団に属しており、そこにはステファノス・チチパス(ギリシャ)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)も含まれている。そして彼らの皆が、本当に次の段階に至る準備ができている兆しを見せているのだ。その事実は新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの状況が許すなら1月にオーストラリアで新シーズンが開始するまでの間、皆にあれこれ考えるための素材を提供してくれる。

「僕らはレジェンドたちと競い合い、彼らを倒すこともできるのだということ、最大レベルの大会で優勝することもできるのだということを証明して見せた」とティームは胸を張った。彼が9月にUSオープンで勝ち獲ったタイトルは、彼にとって初のグランドスラム優勝杯だった。

「今後数年間、“ビッグ3”は変わらずすべてのビッグタイトルをかけてプレーしているだろうが、それでも彼らが引退するときはいつかくる。分からないけど、たぶん3~5年のうちに。それから僕ら(新世代)は、すべての大きな大会の優勝候補になるだろう。テニス界にとって、エキサイティングな時代がやってくるんだ」

 日曜日に行われた今年最後のツアー大会であるロンドンでのATPファイナルズ決勝で、メドベージェフに6-4 6-7(2) 4-6で敗れたあとにティームはこう語った。

 彼らは少しばかり前兆を感じさせる準決勝でのフルセット勝利を経て、この決勝に至っていた。世界3位のティームが1位のジョコビッチに競り勝ち、4位のメドベージェフは2位のナダルを初めて倒していたのだ。

「新世代にとって、素晴らしい成果だ」とメドベージェフはそれを表現した。

「テニス界にとって素晴らしいことだ。僕たちは結果を出し、自分たちの跡を刻み始めているんだ」とメドベージェフは発言した。彼もまたラウンドロビン(グループ内総当たり戦)でジョコビッチを倒し、ATPファイナルズの50年の歴史上で世界トップ3の全員を破った初のプレーヤーとなった。

 27歳のティームはグランドスラム大会で4度決勝に進出し――フレンチ・オープン決勝で2度ナダルに、オーストラリアン・オープン決勝で1度ジョコビッチに敗れた――、今年のUSオープンで初優勝を飾った。そして彼はチチパスに敗れた2019年に続き、2年連続でATPファイナルズ準優勝となった。ティームのパワフルなベースラインプレーは目を見張るものだが、彼はもう少し多彩さと試合中の適応力を身に付ける必要がある。

 2019年USオープン決勝でナダルに競り負けて準優勝した24歳のメドベージェフは、今年のUSオープンでは準決勝でティームに敗れていた。試合中に考え、勝利への道を見出す彼の能力は比類ないものだ。ロンドンでの彼は状況に応じて戦略を変え、ナダルとティームに対する試合の流れを逆転させて見せた。彼のハードコートでの成功は否定しがたいものだが、トップに君臨するためにはクレーコート(フレンチ・オープンで0勝4敗)とグラスコート(ウインブルドンでは1度も3回戦を超えたことがない)での戦績を向上させなければならないだろう。

 ギリシャのチチパスとドイツのズベレフ、そしてロシアのルブレフは皆24歳以下の若い世代で、それぞれトップ10に入っている。この中でグランドスラム大会に勝った者はまだいないが、ズベレフがUSオープン決勝でティームにカムバックを許してしまったとはいえ最初の2セットを先取してタイトルのかなり近くまで迫っていた。

 33歳のジョコビッチと34歳のナダルがこの先、グランドスラムのタイトル数を増やせないと考えるのは愚かな考えだ。2度に渡る右膝の手術でほぼ1年を棒に振った39歳のフェデラーでさえ、度外視するべきではないだろう。

 彼らは過去62回のグランドスラム大会で53タイトルを獲っており、3人合わせて合計57回の優勝を誇っている。フェデラーとナダルが20勝ずつで、ジョコビッチは17勝を挙げている。そして2020年、彼らは3つのグランドスラム大会(ウインブルドンはパンデミックのため中止となった)のうちふたつを獲っている。

 しかし長年に渡る覇権のあと、彼らはついに価値ある『別の』競争相手を得ることになったのかもしれない。

「ロジャー、ラファ、ノバク、そしてアンディ(マレー)。彼らはこのスポーツのために多くのことをやってのけた。彼らは本当に多くの人々をテニスに引き寄せた。本当に多くの新しいファンをテニスにもたらしてくれたんだ。…でも彼らがいなくなるときというのは、間違いなくいつかくるんだ」とティームはコメントした。

「それらすべてのテニスファンたちをこの素晴らしいスポーツに惹きつけ、維持し続けるというのは非常に重要なことだ。そしてそれが、僕たち新世代の挑戦なのだと思う」(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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