2年生の藤原智也(慶大)が大学テニスの頂点に、羽澤慎治とのペアで複も制して2冠達成 [インカレ]

藤原智也(慶應義塾大学2年)写真◎川口洋邦


 全日本学生テニス連盟が主催する学生テニス日本一を決める“インカレ”ーー「2021年度全日本学生テニス選手権大会(男子89回/女子65回)」(三重県四日市市・四日市テニスセンター/予選8月12日〜、本戦16~24日/ハードコート)は、本戦9日目の24日、男女シングルス決勝(各2試合)、男女ダブルス決勝(各2試合)が行われた。

 予選2日目の8月13日から23日まで、雨が降り続くという過去に例のない事態となった今年のインカレ。試合全体の9割程が屋根付きコートで行われたことから、最終日を迎える前日、もしも最終日が晴天となった場合にもこれまでと同じ試合環境で進めることが得策であると判断し、アウトドアコートを使用せず、屋根付きコートで決勝を行うことを決めた。


使用されるはずだった四日市テニスセンターのセンターコート(写真◎BBM)

 そして迎えた最終日は、雲の隙間に青空が見え、気温は上昇していった。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため無観客で、関係者の人数も最小限に抑えて慎重に進められてきた今大会は、最終日は人の数がいっそう減って静まりかえっていた。打球音とプレーする選手が発する声、審判のスコアコール、数少ない拍手が、そこにいる全員の耳に届くような場内だった。

 男子シングルスは第9〜12シードの藤原智也(慶應義塾大2年)が第5〜8シードの丹下将太(早稲田大3年)を6-3 6-2のストレートで下し、2年生チャンピオンの誕生となった。


丹下将太(早稲田大3年)

 丹下のサービスで試合は始まった。40-15からデュースに追いつかれてのサービスキープ。藤原が丹下にじわじわと詰め寄っていく。

 藤原はやることを決めていた。「相手はサーブとフォアで攻めてくるので、バックで展開しようと考えていた。バックのラリーをしてペースを変えながら、カウンターを入れていく」作戦。藤原を知る選手たちはみな口を揃えて、「何でもできる」「弱みがない」「カウンターがうまい」「バックがいい」と言う。いつ入れてくるかわからないカウンターは特にいい。丹下もそれはわかっていたが、藤原の作戦に見事にはまってしまった。


藤原智也(慶應義塾大2年)

 丹下の武器は、サーブとフォアの組み合わせによる攻撃。ところがこの日はサーブの確率が低く、そこに藤原のボールコントロールがあって、フォアをなかなか打たせもらえない状況になった。必然的に藤原が想定したバックのラリーの展開が多くなる。

「自分がしたいプレーをやらせてもらえず、ずっとストレスを感じていた。試合中はイライラしないほうなのに、今日は珍しくフラストレーションがたまって」と丹下。「フォアで打てる回数が少なくて、打つときは決めきろうと無理をした。バックのラリーはカウンターを警戒しすぎてサイドを狙いすぎた」。

 試合が終わって思うことは、「バックはもっと真ん中やストレートに打ったり、自分のフィーリングがよくなるまで球数を多くしたり、強引にでもフォアで回り込んでネットに出たりすべきだった。冷静に考えればわかることだった」と、やりようはあったと悔しさをにじませた。


試合を終えたあとは、握手の代わりにラケットを触れて挨拶をする

 第1セットは2-1、4-2、5-3、第2セットも4-0、5-2と、すべて藤原がリード。最初から最後まで丹下は追いかける立場で、下を向くことが多かった。

 優勝を決めた瞬間、藤原はチームのほうを向いて両手でガッツポーズを作った。笑顔だった。


「優勝できて自信になります」と藤原。ジュニア時代からインターハイ、全日本ジュニア、JOCカップ(全国選抜ジュニア室内)2連覇のあとの、全国大会は5度目の優勝。特に、これからの自身のテニスの世界が大きく広がることは間違いないビッグタイトル獲得だが、「僕は2年生で失うものはないので」勝てたと言い、「負けないだろう、はないです」と、控えめに自分を評価する。周りは全国タイトルをいくつも持つ、経験豊富な上位選手と見ているが、本人は自分を過小評価する言葉を並べる。

 実際は、バランスのとれたバラエティのあるテニスに可能性しか感じない。戦う舞台が大きくなっていくことを期待している。

「優勝してよかったで終わらせるのではなく、自分を見つめ直して、見つかった課題に挑戦します。それから、もっと上の選手に挑戦していきたいです」(藤原)

 準優勝の丹下は、この試合が初めての全国大会の決勝だった。決勝では発揮できなかったが、サービスとフォアの組み合わせは大きな武器であり、準決勝までの5試合はすべてストレート勝利だった。

「ここまでこられてうれしいです。評価できるとも思います。ただ反面で大舞台の戦い方、経験の差が出たと感じました。彼は落ち着いていて、勝ちへの執着心、一本が欲しいという気持ちの入れ方は僕にはないものでした」(丹下)


羽澤慎治/藤原智也(慶應義塾大4年/2年)

 シングルスに続いて行われた男子ダブルス決勝では、藤原が寮生活で同部屋という気心の知れた先輩・羽澤慎治(4年)とのペアで、第5〜8シードの河野甲斐/田口涼太郎(近畿大3年/3年)を6-4 6-2で下し、この種目も優勝して2冠を達成した。ふたりは前年度のインカレ・インドアも制しており、全国2連覇のペアにもなった。

 ダブルスは初戦から決勝まで、ベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)、ノーアドバンテージ方式(40-40になったらレシーバーがリターンサイドをチョイスし、1ポイント勝負)で行われた。


河野甲斐/田口涼太郎(近畿大3年/3年)

 羽澤/藤原は2セットを戦う中でノーアドとなった4ゲームをすべて奪取する勝負強さを見せ、攻め寄る河野/田口を突き放した。初戦から決勝まで一つもセットを落とさず完勝し、インカレを終えた。4年生の羽澤にとっては最後のインカレで、シングルス・タイトルが獲れなかった悔しさを込めて戦ったダブルスだった。

 羽澤のチャンピオンズ・スピーチ「シングルスで悔しい思いをした分、ダブルスを優勝したいと思っていました。藤原の勝負強さに助けられ、優勝してほっとしています。来年以降プロ選手として競技を続けていきます。成長した姿を見せられるように頑張ります」

編集部◎青木和子 写真◎川口洋邦

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