ジョコビッチが錦織との3回戦で感情を放出「彼はここ2試合の相手よりずっと速くてアグレッシブだった」 [USオープン]

写真はノバク・ジョコビッチ(セルビア)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の大会6日目は、トップハーフ(ドローの上半分)の男女シングルス3回戦などが行われた。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は土曜日、最初の2試合の大部分でそうしていたようにコート上で思考を隠そうとしなかった。反対に彼は胸を叩いたり拳を挙げたり、自分の耳を指さして観客に声援を求めたりして感情を吐き出した。

 これはこのマジカルなシーズンを通してずっとやってきたように、皆が見慣れていたジョコビッチだった。グランドスラムの舞台で勝つだけでなく、多くのジェスチャーで盛り上げてテニスの歴史を築こうとする彼の進撃に参加することをファンたちに促した。

 日本の錦織圭(日清食品)を6-7(4) 6-3 6-3 6-2で破った第1シードのジョコビッチは同大会で14回連続の4回戦進出を決め、男子では半世紀ぶりの『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』達成に向けてまた一歩前進した。

「良くも悪くも、コート上でこんなふうに感情を見せることを予定してはいなかった。それは自然に起きるものだ」とジョコビッチは語った。

「激しいバトルの中でその瞬間が重要だと感じたとき、自分の中からそういったものを出そうとするんだ。自分が出したそのエネルギーに乗っかろうとする感じかな。それは自分ひとりだけでも、観客と一緒になってでも構わないよ」

 この結果でジョコビッチは、今季の四大大会での戦績を24勝0敗とした。今シーズンのジョコビッチはグランドスラム3大会連続優勝を飾っており、今大会で勝つと男子では1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)以来となる年間グランドスラムを成し遂げると同時に、男子の最多記録を分かち合っているロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)を追い抜く21回目のグランドスラム制覇を果たすことができる。

「もし僕が出場するすべてのグランドスラム大会で優勝できないと思うと言ったら、それは嘘になる。それは常に僕のゴールだから、驚くことはない。自分がグランドスラムのトロフィーを掲げるシーンをいつも頭の中にはっきりと思い浮かべているんだ」とジョコビッチはコメントした。

 昨年のUSオープンでジョコビッチが負けたのは、4回戦においてだった。彼は第1セットでサービスゲームを落としたあとにカッとなって無造作にボールを後方に打ち、それを線審の喉元に当ててしまったために失格処分を受けたのである。

 過去2年連続で敗れている次の4回戦で、ジョコビッチはワイルドカード(主催者推薦枠)で出場したジェンソン・ブルックスビー(アメリカ)と対戦する。20歳のブルックスビーは第21シードのアスラン・カラツェフ(ロシア)を6-2 3-6 2-6 6-3 6-3で倒し、2002年のアンディ・ロディック(アメリカ)以降でもっとも若いアメリカ人男子4回戦進出者となった。

 世界ランク121位と145位という経験の浅い選手を片付けたあと、この日のジョコビッチは錦織というより強い相手と顔を合わせた。錦織は2014年USオープンで準優勝し、世界4位になったこともある選手だ。

 しかしこの対決に先立つ錦織の問題は、ここ16対戦でジョコビッチに敗れているということだった。そして錦織が第1セットをタイブレークの末に取って観客を大いに沸かせたとはいえ、試合はすぐに17試合連続の敗戦に向けて進み始めることになった。

「あまりいいスタートを切れたとは思わない。僕はかなり受け身だった。コートの後方に下がりすぎていた。彼がプレーの主導権を握っていたよ。彼はここ2試合の相手よりずっと速く、ずっとアグレッシブにプレーしていた」とジョコビッチは振り返った。

 カギとなる統計は第1セットでのジョコビッチが20本のアンフォーストエラーを犯していたことで、彼はその数を続く3セットでは平均1セット10.5本に減らすことに成功した。またジョコビッチは試合を通し、彼にしては多い15本のサービスエースを決めた。

「壁を破ることができなかった。彼は最後まで非常にタフだった」と錦織は手応えを感じながらも相手の強さを認めた。

 そしてジョコビッチは極めて重要な場面に喜びの感情を露わにし、観客たちが同じような反応をするように導いた。

「観客たちは入れ込んでいた。歓声は非常に大きかったよ。凄くよかった。僕はそれをバネにしたんだ」とジョコビッチは話した。

 第2セット第3ゲームで双方の選手がネット近くで終わった素晴らしいポイントをジョコビッチが奪ってブレークしたとき彼は360度回りながら雄叫びを上げ、彼のゲストボックスでは妻のエレナさんが立ち上がって「カモン!」と叫んだ。

 第3セットでジョコビッチがブレークポイントをセーブしたとき、彼は右の耳を指してより大きな声援を要求した。ブレークに成功して5-3とリードしたときに彼は唇をすぼめ、次のゲームではドロップショットがネットにかかると自分の頭をラケットで3度叩いた。そしてそのセットを取ったときにはまず片方のスタンドへ、それから片方を向いて叫び声を上げた。

 3時間半を要した試合が進むにつれてプレーが向上したことについて、ジョコビッチは「流れを取り戻してリズムをつかんだ」と表現した。言い換えれば、彼はただ本調子を出したのだ。

「もしかしたら、彼は心の中で大きなプレッシャーを感じていたのかもしれないけど、試合中はそれが見えなかった」と錦織は悔しさを滲ませた。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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