「観客がくれた声援、エネルギー、愛は一生忘れない」思わず涙を見せた準優勝のジョコビッチ [USオープン]

涙ぐみながら、準優勝スピーチで語るノバク・ジョコビッチ(セルビア)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の男子シングルス決勝で第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)に4-6 4-6 4-6で敗れた第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が試合後の記者会見で決勝、世代交代、テニス界について語った。

「最初から質問で始めよう」

 質問をまず受けたい?

「ああ、試合についても聞いてくるだろうから」
 
 試合直後はどんな気持ちだったのか? 着替えているときに涙が見えた。

「いろんな感情が沸き上がった。セレモニーのスピーチで話したことがすべてだ。もちろん、自分の一部は悲しみに暮れている。もう少しで達成できそうだったことを考えると、この敗戦は飲み込むのがなかなか大変だ。それと同時にここニューヨークで今まで生きてきて一度も感じたことのない感情が芽生えた。観客が僕に特別な気持ちにさせてくれた。いい意味で驚かせてくれた。僕は何も期待していなかったのに、観客からもらった応援やエネルギーと愛の量が凄かった。これは一生忘れられない。それが、着替えているときに涙が出てしまった原因だった。感情とエネルギーが物凄かった。グランドスラムで21回優勝するのと同じくらいだった。それが正直な気持ちだ。凄く特別なものを感じている。彼らは僕のハートを掴んだ。もちろん、最後は試合に勝ちたいものだ。プロのアスリートなのだから。このような瞬間が大切なんだ。このような人々との関係性はこれから長い間続くものだ。本当に素晴らしかった」

 今日のメドベージェフのサービスがよかった点。

「狙ったところにしっかりコントロールされていた。彼は凄く気合いを入れてコートに登場した。彼の持っている最高のショットばかりだった。そして戦術的に何をすべきなのか、物凄くクリアだった。それを完璧に遂行した。自分のほうは、普通よりちょっと劣る状態だった。足がいつものように動かなかった。何とかベストを尽くしたんだが。アンフォーストエラーが多かった。サービスもよくなかった。今日のように正確無比なサービスでエースを連発して多くのフリーポイントを手にしているメドベージェフが相手だと、自分のサービスゲームでもずっとプレッシャーを感じてしまうものだ。正直、すべてのプレーが平均以下だった。このように残念な日もあるものだ」


第2セットでフラストレーションがたまり、ラケットを破壊して警告を受けたノバク・ジョコビッチ(セルビア)

 フレンチ・オープンの決勝でステファノス・チチパス(ギリシャ)に2セットダウンとなったとき、ブレークをひとつ奪えれば勝てると思っていたと話していた。今日はどう感じていた?

「今日、自分がコート上で感じていたのは、パリでの自分のコート上での感触ほどいいものではなかった。エネルギーが足りず、スローだった。でも第2セットの初めにターニングポイントがあった。メドベージェフのサービスゲームでいくつかブレークポイントがあった。0-40も何度かあった。あと1ショットでいい場面がいくつかあったのに…。あと一歩だった。もし第2セットの初めにブレークできていら、どんな試合展開になっていただろうか。この観客、応援があるから、また違った風に感じたと思う。でも、彼はよくやった。凄かったよ。彼のメンタリティ、姿勢、プレー、すべてに敬意を表し、称えたい。彼が明らかに勝利に値した。それは間違いない。今日のゲーム全体には失望している。もっといいプレーができたと思うし、すべきだった。でもこれがスポーツだ。勝つこともあれば、負けることもある。物凄く厳しい敗戦だけどね。でも、それと同時に彼の勝利を喜んでもいる。彼はナイスガイだし、勝利に値した。本当にね」

 アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)がオリンピックを制し、今ダニールが初めてのグランドスラムを獲った。来年は上位陣の入れ替わりが進むのだろうか?

「昨年ここでドミニク・ティーム(オーストリア)が優勝した時点ですでに始まっていると思う。ダニールが現在ナンバーワンなのか、これからなるのかわからない。でも当たり前のことだ。時代の変化は避けられない。ベテラン勢はまだ何とか食らいついている。僕らは今もテニス界にできるかぎり光を当てようとしている。自分のためにも言っている。僕はまだまだグランドスラム大会で優勝したいし、国のために戦いたい。今僕のモティベーションになっているのはそういう気持ちなんだ。でも、新世代、こう呼べばいいのかな。彼らの中に新しい選手はいない。すでに登場して定着している。当然、彼らが追い抜いていく。彼らは皆いい奴だし、とても質の高い選手だから、テニス界の未来は明るいと思う。彼らはコートの内外で何かを提供してくれる。僕らは、時代の変化はテニス人気と注目度の面でスムーズに進めばいいと思っている。僕らはコートの上で勝ちたいけど、それと同時にテニス界の代表としてトップにいるんだ。それをしっかり意識して、この責任を背負い、テニス界にもっと多くのファンを惹きつけないといけない。それが最後には重要になってくるし、テニスが今後も生き残っていくために必要だ。それが若手やランキングの低い選手に、テニスで生きていくためのチャンスを与えるものだ。僕らはもっともっと頑張らないといけない。現在、男子テニスのトップは凄くいい状況に見える。でもグラスルーツではもっともっといい仕事が必要になっている。環境が改善されることを願っている」

 ズベレフとの5セット、その他の4セットにもつれた試合が今日のプレーに影響したと思う?

「その可能性はある。ダニールに比べ、決勝までにコート上で戦っていた時間は明らかに長かった。でも、この5~6ヵ月は感情面でとても充実した期間だった。グランドスラム、オリンピック、地元ベオグラードでの大会。自分にとってすべてがうまく噛み合っていて、自分が経験してきた感情がすべて積み上げられていった感じだ。残念ながら最後の一歩で躓いた。でも、今年1年を振り返ると、とても満足できる年だった。3度のグランドスラム優勝と決勝戦。この数年間、自分の目標はとても明確で、実際それを口にしてきた。グランドスラム大会で自分の最高のテニスを見せるとね。それはうまくやれていると思う。もちろん、今日はもうひとつのグランドスラムに手が届かなかった。でも、僕やチームが成し遂げたことは誇りに思っている。テニスでは、次のページをめくって次に切り替えて進むのがかなり早い。近いうちに次のチャレンジ、次の目標がやってくるだろう。僕はグランドスラム決勝での敗戦という、もっとも辛いことを乗り越える術を学んできた。そこからいくつか学ぶべきことを吸収して、また強くなって前に進み続ける。僕はまだテニスが大好きだし、コートでも気持ちよくプレーできている。モティベーションとその能力がある限り、僕はまだ戦い続けるよ」

 今日、試合後にベンチでどんな考えや感情が沸いていたのか。

「解放だ。終わってうれしい気持ちがあった。この大会のためにメンタル、感情面で準備して、この数週間に感じてきたものは対処するのがあまりにもきつかった。すべて上手くこなすのは大変過ぎた。この大きな険しい道程がひと段落してうれしい気持ちがあった。同時に悲しみ、残念な気持ち、そして観衆への感謝も感じていた。このコートで僕のために作り上げてくれた特別な時間は格別だった」(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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