「エマの優勝は映画の題材になる」男女のUSオープン優勝を振り返るメドベージェフ

USオープン優勝を決め、驚きの死んだ魚パフォーマンスのあとは笑顔を見せたダニール・メドベージェフ(ロシア)(Getty Images)


 自身3度目のグランドスラム決勝となるUSオープンで見事に初優勝を果たしたダニール・メドベージェフ(ロシア)。優勝後はインタビューなどで引っ張りだこになっている。冷静になってから、ふたたび優勝の瞬間やセレモニーのことなどを振り返った。

 決勝の夜は寝られたのか?

「3時間は寝れた。試合には足りないが、インタビューに答えるには100%の状態だ」

 勝利の瞬間を振り返ってもらえるか。

「物凄くタフだった。5-2で最初のマッチポイントを取れていればもっと楽だったはず。でも、2つのマッチポイントで2つのダブルフォールトをしてしまった。そして様々なプレッシャーがあった影響も重なり、脚をつっていた。もし、最後のマッチポイントで取れなかったら、大変なことになっていただろう。でも、何とかそこでサービスを決められたから、まずはほっとした。そして喜びも沸いてきた。過去に2度決勝で敗れていたからね。テニスは残酷なスポーツだから、また準優勝になる可能性もあった。大きな歴史を作ろうとしているノバク・ジョコビッチ(セルビア)が相手だと知って、試合前から凄く難しかった。誰もが彼の勝利を期待していた。そんな中で彼を止めて勝てたのはうれしい。でも逆に彼の気持ちがわかるし、それについて悪いと思う気持ちもある」

 喜びをどう表現する?

「純粋にうれしいよ。過去にグランドスラム決勝ではラファエル・ナダル(スペイン)とノバクに敗れている。信じられないほど強い2人だ。今回のUSオープン決勝に臨むとき頭を過ぎったのは“年間グランドスラムを狙うノバクを倒せるだけの強さが自分にはあるのか?”ということ。2021年2月はオーストラリアでノバクに打ちのめされた。そのあとはテニスの調子も落ち、自信も失った。今回はUSオープン決勝で自分のベストを出せたことがうれしい。GOAT(グレーテスト・オブ・オール・タイム)のひとりをストレートで下したんだ。この試合は彼にとってすべてだった。そこで彼に勝ったことは特別なことだ」

 ファンはノバクが歴史を塗り替える瞬間を見たいと思って、物凄いエネルギーを送っていた。

「凄く特別な雰囲気に驚いた。コートに立った瞬間、これまでここでプレーした試合とは別物だとわかった。2年前のラファとの決勝のときも凄い雰囲気だった。今回は観客の皆がノバクに勝って欲しいと思っているのがわかった。彼の調子を上げようと、凄く声援を送っていた。僕の邪魔をしようという意図はなかったと信じている。でも、セカンドサーブを打つ瞬間に叫び声があってダブルフォールトになると、観客がとんでもない盛り上がりだった。物凄く対応するのが難しい雰囲気だった。自分のことに集中しなければならなかった。そしてどうやってこの試合に勝とうか考えた。何とかそれをやり遂げた」

 試合後、ノバクとどんなことを話したのか?

「彼に謝ったのは本当だ。テニスはとても残酷なスポーツだから、選手が2人いたらどちらかは必ず負ける。それは1回戦でも決勝でも同じ。僕はいつもロジャー・フェデラー(スイス)、ラファ、ノバクが決勝を戦う姿を観てきた。いつも優勝者はスピーチの中で、敗者に謝っていた。相手の気持ちがよくわかるのだろう。僕はノバクがテニスの歴史に深く刻まれるような、信じられないような偉業を達成する目前で止めた。勝ったことはうれしいけど、彼の気持ちを考えると申し訳ないと思う。だから、その気持ちを伝えた。ノバクが素晴らしいのは、そのとき“君は今日勝ち獲ったことすべてを手にするのに値する”と言ってくれたことだ。心を込めてハグしてくれた。信じられないよ」

 プレッシャーが大きかったのではないか?

「正直、ノバクのほうがプレッシャーは断然大きかっただろう。僕にとっては勝てばグランドスラム初優勝。誰が相手だろうとね。でもプレッシャーは助けにはならなかった。ノバクはプレッシャーが大きければ大きいほど燃える選手だからね。だからこそ、彼はグレーテストの中のひとり。彼はすべてを懸けて新たな歴史を作ることに全力だったから、一瞬たりとも油断できなかった。それが自分のモティベーションにもなった。全力を尽くし、初のグランドスラム優勝を手に入れようとした。彼が何を達成しようとしていたのかは誰もが知っていた。僕にとっては自分の初のグランドスラム優勝が唯一目指すところ。彼の年間グランドスラムは、自分にとってはいい意味で関係なかった。本当にうれしいよ」

 結婚記念日とグランドスラム決勝が同じ日だった。

「結婚記念日がグランドスラム決勝と被ったから、ほかにプレゼントを用意する暇がなかったんだよ。メンタル面、フィジカル面で100%の準備をしてエネルギーを温存するには、ショッピングに行く訳にはいかなかった。準優勝ではプレゼントにならないからね。それを理解してくれるからこそ、妻を愛している。彼女はグランドスラムの優勝が、自分ができる最高の結婚記念日のプレゼントだとわかってくれていた。彼女も18歳までテニス選手だったから、選手がどんなものかをよく理解している。選手生活がどんなものか理解しているし、だからこそ僕らは一緒にいるんだ」

 女子ではエマ・ラドゥカヌ(イギリス)が驚きの優勝を果たした。

「100%皆が驚いていた。エマが予選から勝ち上がって、一つもセットを落とさずに優勝するなんて誰も予想してなかった。間違いなくサプライズだ。大会前から予想していたなんて、誰も言えないはず。でも、テニス界にとってはとても素晴らしいこと。エマはまだWTAツアーでタイトルをひとつも獲っていないのに、突然USオープンチャンピオンになった。信じられないような夢物語だ。間違いなく、この優勝を題材にした本や映画ができるよ」(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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