ジョコビッチは挫折を乗り越え、変わらずグランドスラム大会でのタイトルを目指す

写真はUSオープン男子シングルス表彰式でのノバク・ジョコビッチ(セルビア/左)とダニール・メドベージェフ(ロシア)(Getty Images)


 理解できることだが、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は空気が抜けたような状態になっていた。男子では半世紀以上に渡って誰もやってのけられなかったことに挑戦した探求の旅は、体力的にも感情的にも彼から多くのエネルギーを奪い取った。

 USオープン決勝でのダニール・メドベージェフ(ロシア)に対する4-6 4-6 4-6の敗戦のあと、最後のチェンジコートの間にベンチでタオルを被って涙を隠していた世界ランク1位のジョコビッチはそのことを認めた。同じ年に4つのグランドスラム大会すべてに勝とうとする挑戦で痛々しくもあと一歩足りずに屈したあと、34歳のジョコビッチが準備していなかったのは長期の展望を語ることだった。

 テニス界の頂点に向けて這い上がろうとしている新しい才能ある若者たちがいる中、ジョコビッチは変わらず前進していくことだろう。

 決勝の前にジョコビッチはメドベージェフ戦で持てるすべてを捧げ、それを「キャリア最後の試合であるかのように扱う」と話していた。そして彼は空気が抜けたようになり、打ち負かされた。これは彼にとって最良のコンビネーションではない。ジョコビッチが外れ日で、メドベージェフは当たり日だった。そのため当然ながら、ジョコビッチはすべての状況に途轍もなく失望している。

 それは当然であり、自然なことだ。強いスポットライトに照らされながら外からだけでなく自分の内部からのプレッシャーにも耐え、長い間いいプレーをして多くの力を尽くし続けるのは酷く消耗させられることだ。1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)以来、男子テニス界では誰も4つのグランドスラム大会すべてどころか最初の3つも獲れていなかったのである。

「対処に余ることだった」とジョコビッチは打ち明けた。彼は真のグランドスラム達成に必要な28勝のうち27勝を挙げたが、最後のひとつを手にすることができなかった。

「僕の一部は非常に悲しんでいる。かかっていたすべてを考えると、この敗戦は飲み込むことが非常に難しいよ」とジョコビッチはコメントした。

 しかし彼はふたたびプレーし、男子の最多記録を分かち合っているロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)を追い抜く21回目のグランドスラム制覇を目指す挑戦を再開するだろう。ジョコビッチの21勝目が数ヵ月後の2022年オーストラリアン・オープンで実現したとしても、誰も驚きはしないはずだ。彼はすでに、そこで9回も優勝しているのだから。

 2021年のグランドスラム大会決勝で彼が対戦した3人の選手たちが皆20代――オーストラリアン・オープンとUSオープンで対戦したメドベージェフが25歳、フレンチ・オープン決勝で彼を追い詰めた世界3位のステファノス・チチパス(ギリシャ)が25歳、ウインブルドン決勝の相手で同7位のマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)は25歳――で、ほかに階段を登りつつあるより若い選手たちがいたとしてもジョコビッチに退くつもりはない。

「世代交代は避けられないことだ」とジョコビッチは日曜日に言ったが、それから「でも年上の選手たちも変わらず頑張っているよ」と続けた。

 間違いなく、彼はそうだ。

 8月8日に40歳になったフェデラーや35歳のナダルはともにケガを理由にUSオープンを欠場し、同じ理由で今季はもうプレーしないと表明している。フェデラーが最後に受けた膝の手術とナダルが抱えている慢性的な足の痛みが、彼らの今後の歩みにどのような影響を与えるのかを見るのは非常に興味深い。

 そして2020年USオープン優勝者で28歳のドミニク・ティーム(オーストリア)やその決勝で彼がフルセットで倒した相手でもある東京オリンピック金メダリストで24歳のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を含む『ビッグ3』よりも10歳ほど若い集団が、グランドスラム大会で大きな結果を残すようになるのを観るのは非常に楽しみなことだ。さらには21歳のセバスチャン・コルダ(アメリカ)や20歳のジェンソン・ブルックスビー(アメリカ)など、より若い世代も力をつけつつある。

 メドベージェフは日曜日の夜に過去2度敗れていたグランドスラム決勝に初めて勝ったこと、そしてそれを何より今季のジョコビッチに対してやってのけたことから得られると彼が期待する『推進力』について話した。

「僕の将来のキャリアのために、自分が1年にグランドスラム大会で27連勝して歴史的な偉業を目指していた選手を止めたのだと知っているということは大きな力となるはずだ。それは間違いなくこの勝利をより素晴らしいものにし、未来に向けて多くの自信をもたらしてくれるよ」

 当然そうであるべきだ。

 ジョコビッチはすでに、そのような自分を信じる力を持っている。彼は自分が優勝杯を手にしているところをイメージしながら、すべてのグランドスラム大会に臨んでいる。それがひとつの挫折で変わるというのは、ありそうもないことだ。

「僕は変わらず進み続け、グランドスラム大会でより多くのタイトルを獲りたいし母国のためにプレーしたい。現時点では、僕にもっとも大きなモチベーションを与えてくれるのはそれなんだ」とジョコビッチは語った。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

写真◎Getty Images

Related