日本がファイナルズ出場権を獲得、中国との死闘を制す [デ杯日本対中国]

男子テニスの国別対抗戦、デビスカップ(デ杯)ファイナルズ予選「日本対中国」(2月1、2日/中国・広州:広州オリンピックテニスセンター/ハードコート)は最終試合で決着し、日本が11月のファイナルズ出場権を獲得した。

 ダニエル太郎(エイブル)は「この対戦は精神的に難しい」と話していた。

 アウェーの環境に加え、フラット系グラウンドストロークの中国選手にあつらえたような、球足の速いコートサーフェス。中国選手がランキングの数字以上の力を出してくることは容易に予想できた。個々のランキングでは日本が大きく上回ったが、勝って当たり前というプレッシャーも大きかったはずだ。

 初日は1勝1敗となった。岩渕聡監督は「ある程度、想定していた」と話したが、さすがにダブルスを落としての1勝2敗は、想定の中で最悪に近い状況ではなかったか。

 ダブルスは3セットともタイトな展開だった。やや押され気味の日本が、内山靖崇(北日本物産)のスーパープレーで第1セットを奪ったときは、これで勢いづくと思われた。しかし、その見立ては甘かった。

 リターン時、デュースサイドを受け持つジャン・ザ(中国)はフラットのストロークと勢いに任せたネットプレーで重圧をかけてくる。さらにアドサイドのゴン・マオシン(中国)がくせ者だった。

 日本ペアはゴンについて「クロスのリターンがうまい」と分析していたが、この試合ではダウン・ザ・ラインに積極的に持ってこられた。序盤はミスが多かったが、好リターンが決まりだすと、日本ペアのサービスに重圧がかかった。

 緊迫したゲームが続き、硬さの見える内山はサービスキープに苦しんだ。マクラクラン勉(日本)のプレーも徐々に精度が下がった。それでも第2セット5-4からの相手サービスゲームでマッチポイントを2度握ったが、これを生かせず、結果的に相手チームを勢いづけた。

 逆転負けにマクラクランは「あと1ポイントだったので、取っていたらよいフィーリングになると思ったが、それがテニス」と自分たちを励ますように話した。内山は「少しのところで、こっちが上回るか向こうが上回るかだった」と紙一重の勝負だったことを強調した。

 土俵際に追い込まれた日本は、第4試合のシングルスに前日の雪辱を期す西岡良仁(ミキハウス)を送り出し、中国はダブルスで奮闘したジャンに代えて期待の19歳、ウー・イービン(中国)を起用してきた。17年USオープン・ジュニアで単複優勝、ITFジュニア世界ランク1位にも輝いた逸材だ。昨年の上海マスターズ2回戦で錦織圭(日清食品)から1セットを奪った選手と言えば、思い出す向きもあろう。ただでさえ重圧のかかる西岡には、嫌な相手だった。

 しかし、西岡のマインドセットが素晴らしかった。

「今日は負けてはいけないと思い、自分にプレッシャーをかけた。普段は緊張しながらプレーすることは少ないが、自分で考え、自分に緊張を与えた。緊張しながらでもベストのプレーができるように自分で作っていった」

 恐るべき自己コントロール。緊張から逃れようとせず、その渦に飛び込んでいった。退路を断って一切隙を作らず、最後に笑おうと考えたのだ。

 19歳の新星は、この勝負師の敵ではなかった。所要時間わずか52分。

「いい形で太郎君に渡せた」

 快勝の意味を、西岡のこの言葉が端的に表す。

 それでも、簡単に決着はつかなかった。最後のシングルスは今回の日本チームの苦闘を象徴するような内容になった。リー・ジェ(中国)のショットが最後まで崩れず、逆に勝者となったダニエルの苦しむ姿が目立った。

 序盤はダニエルが崩しかけた。トップスピンのよく効いたボールを深く送り、リーを押し込んだ。高めの弾道から高く弾むショットに、リーはラケットコントロールに苦しんだ。

 第1セットをダニエルが奪ったが、リーもそこから持ち直す。ダニエルがショットの質を保てなかったことが一つの原因だった。第2セット以降はリーの流れになり、タイブレークで落とした。

 ダニエルが「ボールが効かなくなっている」と相談すると、岩渕監督は「深さと高さが落ちている。そこを上げていこう」と助言した。

 それでも、ダニエルには情勢を五分に戻すのが精一杯だった。

「ぎりぎりのところでなんとか勝った」

 本人の言葉が第3セットの内容を表している。チームメイトの勝利の輪になかなか加われなかったのは、その瞬間、両足をケイレンが襲っていたからだ。

「ガッツだけで頑張った。僕の打ちたいボールはそこまで打てなかったが、限られたところで頑張った。僕のほうが年下だが、テニスの経験はあるので、そこで押し切った」

 デ杯ワールドグループやグランドスラム大会など、世界を知るダニエルの底力だった。

 岩渕監督は「シングルスにレベルの高い2人がいる。太郎がナンバー2にいるのは相手にはタフだろう。2人が軸になったのは大きかった。ダブルスもいい試合をして、よい雰囲気ができていた」と選手を称えた。

 日本のエース錦織は、死闘の続いたオーストラリアン・オープンの直後ということもあって、個人戦を優先するとしてチームに加わらなかった。それでも西岡、ダニエルを中心に選手層の厚さを見せた。

 11月に行われるファイナルズは最初に3チームで総当たり戦を行うため、まさに戦力の厚みが問われる。

「5人をフルに使う総力戦になる。層の厚さでは強豪国に負けない」

 岩渕監督が自信を見せた。

(ライター◎秋山英宏)

※写真は勝利を決めたダニエル太郎(エイブル)を中心に勝利を祝う日本代表チーム
GUANGZHOU, CHINA - FEBRUARY 02: Japan team celebrate the victory during day two of the 2019 Davis Cup Qualifiers at Guangdong Olympic Sports Center Tennis Center on February 2, 2019 in Guangzhou, China. (Photo by Shi Tang/Getty Images)

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